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第八十一話 要塞の門
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キメラ・ロードがこじ開けた巨大な風穴。そこから俺たちフロンティアのメンバーは、雪崩を打つように天空要塞の内部へと突入した。
要塞の内部は外観の黒鉄のイメージとは異なり、不気味なほど静かで荘厳だった。床も壁も磨き上げられた大理理石でできており、天井からは巨大なシャンデリアのような魔晶石の塊が禍々しい紫色の光を放っている。
「……まるで悪魔の神殿だな」
バルガンが、周囲を警戒しながら吐き捨てるように言った。
俺たちが突入したのは、巨大な格納庫のような場所だった。周囲には先ほど俺たちが破壊した飛行モンスターの残骸や、整備中と思わしき機械兵器がいくつも転がっている。
「全員、警戒を怠るな!いつ、どこから敵が来てもおかしくないぞ!」
カエデが、鋭く指示を飛ばす。
その、直後だった。
俺たちが立っている格納庫の奥にある巨大な扉が、ギギギ…と地響きのような音を立ててゆっくりと開き始めた。
扉の向こう側は、漆黒の闇。
だが、その闇の奥で二つの巨大な紅い光が、まるで溶岩のようにぎらりと輝いた。
「ゴゴゴゴゴ……」
地を揺るがす重々しい足音と共に、闇の中から『それ』は姿を現した。
それは、俺たちのちっぽけな想像力を遥かに超える、巨大な「門番」だった。
全長は二十メートルを超えるだろうか。全身が黒曜石と未知の黒い金属で構築された巨大な人型のゴーレム。そのデザインはまるで地獄の魔神を模したかのようで、頭部には禍々しい山羊のような角が生えている。
その両腕は巨大な城砕き用のハンマーになっており、胸の中央では巨大な魔力の炉心が不気味な脈動を繰り返していた。
【要塞防衛ゴーレム:タルタロス Lv.65】
「……冗談だろ」
誰かが絶望の声を漏らした。
エンシェントドラゴンですら生物としての限界があった。だがこいつは違う。痛みも恐怖も感じない、純粋な破壊のためだけに造られた鉄の悪魔。
ゼノンが、ワイバーンと共にその前に立ちはだかった。
「フン。ただのデカいだけの置物だ。イグニス、ブレスでスクラップにしてやれ!」
紅蓮の炎が、タルタロスの巨体に直撃する。
だがゴーレムは、びくともしない。その黒い装甲はワイバーンのブレスの熱を完全に吸収し、無力化していた。それどころか、胸の炉心がさらに輝きを増していく。
「なっ!?エネルギーを吸収しているのか!?」
ゼノンが、驚愕の声を上げる。
「ゴゴゴゴゴ……」
タルタロスが、その巨大なハンマーアームを振り上げた。ターゲットはゼノン。
「避けろ!」
イグニスは、辛うじてその直撃を回避する。だがハンマーが叩きつけられた床は蜘蛛の巣のように砕け散り、凄まじい衝撃波が格納庫全体を揺るがした。
「まずい!魔法攻撃は奴のエネルギーになる!」
リオが、千里眼で敵の特性を見抜き叫んだ。
「物理攻撃しかない!でも、あの装甲……!」
「やるしかあるまい!」
バルガンとカエデが、同時に駆け出した。
二人の渾身の一撃が、タルタロスの足に叩き込まれる。
だがガキン!という甲高い音が響くだけで、分厚い装甲には傷一つついていない。
「硬えええええ!」
バルガンが悪態をつく。
絶望的な戦力差。
攻撃は通じず、魔法は吸収される。
俺たちは、この最初の門番の前で早くも足止めを食らってしまった。
「……ユー」
カエデが、俺の方を振り返った。
その瞳には、最後の希望が宿っていた。
「お前のあの化け物の力、見せてみろ」
俺は頷いた。
「キメラ・ロード!」
俺の呼びかけに伝説の獣王が、咆哮を上げて前へ出る。
巨大なゴーレムと万能の獣王。
二体の規格外の存在が、要塞の入り口で睨み合った。
「グルルルルル……」
キメラ・ロードの三つの頭が、それぞれ異なる視点で敵を分析していく。
狼の頭が、ゴーレムの動きのパターンを読み解く。
鷲の頭が、その巨体の中に存在するわずかな構造的弱点を探し出す。
そしてドラゴンの頭が、その弱点を破壊するための最適な力を練り上げていく。
タルタロスが、ハンマーを振り下ろす。
だがキメラ・ロードは、その攻撃をまるで未来予知でもしたかのように軽やかに回避した。
そして反撃に転じる。
狙うは、鷲の頭が見つけ出した弱点。
肩の関節部分、そして膝の裏の動力パイプが剥き出しになっている箇所。
キメラ・ロードの鷲の鉤爪が動力パイプを切り裂き、狼の牙が関節の装甲を噛み砕く。
「ゴ……!?」
タルタロスの動きが、初めてわずかに鈍った。
「効いている!」
「いけるぞ!」
フロンティアの仲間たちから歓声が上がる。
だがタルタロスは、ただのゴーレムではなかった。
胸の炉心が、最大級の輝きを放ち始める。
「まずい!何か来るぞ!」
タルタロスの全身の装甲が、パージされるように開いていった。
その内部から、無数の小型ミサイルのようなものが顔を出す。
「全方位攻撃か!」
これでは、キメラ・ロードといえども避けきれない。
だが俺には見えていた。
キメラ・ロードには三つの頭がある。三つの思考がある。
それは同時に三つの異なる行動を取れるということ。
俺は、キメラ・ロードに一つの命令を下した。
「――全てを、同時に、破壊しろ」
俺の意志に、獣王が応える。
ドラゴンの頭が口から絶対零度の冷気を吐き出した。それは発射されようとしていたミサイルを瞬時に凍りつかせる。
狼の頭が精神感応の咆哮を放った。それはゴーレムの制御システムに直接干渉し、その動きをコンマ数秒だけ麻痺させる。
そして鷲の頭がその間に、音速を超える速度で敵の懐へと飛び込んだ。
鷲の鋭い嘴が狙うは一点。
胸の剥き出しになった、魔力の炉心。
ズブリ、と。
生々しい音が響いた。
嘴は炉心の分厚い防護カバーを紙のように貫き、その中枢を完全に破壊した。
「ゴ……ゴ……ゴ……」
タルタロスの紅い瞳から光が消えていく。
その巨体は力なく傾き、やがて轟音と共に膝から崩れ落ち、完全にその機能を停止した。
静寂。
そして、割れんばかりの歓声。
「「「うおおおおおおおおっ!」」」
俺たちは、ついに要塞の最初の門を突破したのだ。
「……すげえな、あんたの相棒は」
ゼノンが感嘆と、そしてわずかな嫉妬を込めて呟いた。
俺はキメラ・ロードのたくましい体に、そっと触れた。
「ありがとう。お前がいなければ勝てなかった」
俺たちの最強の切り札。
その力は、俺たちの想像すら超えていた。
破壊されたゴーレムの向こう側。
要塞の第一層へと続く新たな扉が、ゆっくりとその口を開けていた。
俺たちは仲間たちの亡骸を乗り越えて、そして鉄の巨人の残骸を乗り越えて、さらにその奥深くへと足を踏み入れていく。
この先に何が待っていようとも。
俺たちには、もう迷いも恐れもなかった。
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「全員、警戒を怠るな!いつ、どこから敵が来てもおかしくないぞ!」
カエデが、鋭く指示を飛ばす。
その、直後だった。
俺たちが立っている格納庫の奥にある巨大な扉が、ギギギ…と地響きのような音を立ててゆっくりと開き始めた。
扉の向こう側は、漆黒の闇。
だが、その闇の奥で二つの巨大な紅い光が、まるで溶岩のようにぎらりと輝いた。
「ゴゴゴゴゴ……」
地を揺るがす重々しい足音と共に、闇の中から『それ』は姿を現した。
それは、俺たちのちっぽけな想像力を遥かに超える、巨大な「門番」だった。
全長は二十メートルを超えるだろうか。全身が黒曜石と未知の黒い金属で構築された巨大な人型のゴーレム。そのデザインはまるで地獄の魔神を模したかのようで、頭部には禍々しい山羊のような角が生えている。
その両腕は巨大な城砕き用のハンマーになっており、胸の中央では巨大な魔力の炉心が不気味な脈動を繰り返していた。
【要塞防衛ゴーレム:タルタロス Lv.65】
「……冗談だろ」
誰かが絶望の声を漏らした。
エンシェントドラゴンですら生物としての限界があった。だがこいつは違う。痛みも恐怖も感じない、純粋な破壊のためだけに造られた鉄の悪魔。
ゼノンが、ワイバーンと共にその前に立ちはだかった。
「フン。ただのデカいだけの置物だ。イグニス、ブレスでスクラップにしてやれ!」
紅蓮の炎が、タルタロスの巨体に直撃する。
だがゴーレムは、びくともしない。その黒い装甲はワイバーンのブレスの熱を完全に吸収し、無力化していた。それどころか、胸の炉心がさらに輝きを増していく。
「なっ!?エネルギーを吸収しているのか!?」
ゼノンが、驚愕の声を上げる。
「ゴゴゴゴゴ……」
タルタロスが、その巨大なハンマーアームを振り上げた。ターゲットはゼノン。
「避けろ!」
イグニスは、辛うじてその直撃を回避する。だがハンマーが叩きつけられた床は蜘蛛の巣のように砕け散り、凄まじい衝撃波が格納庫全体を揺るがした。
「まずい!魔法攻撃は奴のエネルギーになる!」
リオが、千里眼で敵の特性を見抜き叫んだ。
「物理攻撃しかない!でも、あの装甲……!」
「やるしかあるまい!」
バルガンとカエデが、同時に駆け出した。
二人の渾身の一撃が、タルタロスの足に叩き込まれる。
だがガキン!という甲高い音が響くだけで、分厚い装甲には傷一つついていない。
「硬えええええ!」
バルガンが悪態をつく。
絶望的な戦力差。
攻撃は通じず、魔法は吸収される。
俺たちは、この最初の門番の前で早くも足止めを食らってしまった。
「……ユー」
カエデが、俺の方を振り返った。
その瞳には、最後の希望が宿っていた。
「お前のあの化け物の力、見せてみろ」
俺は頷いた。
「キメラ・ロード!」
俺の呼びかけに伝説の獣王が、咆哮を上げて前へ出る。
巨大なゴーレムと万能の獣王。
二体の規格外の存在が、要塞の入り口で睨み合った。
「グルルルルル……」
キメラ・ロードの三つの頭が、それぞれ異なる視点で敵を分析していく。
狼の頭が、ゴーレムの動きのパターンを読み解く。
鷲の頭が、その巨体の中に存在するわずかな構造的弱点を探し出す。
そしてドラゴンの頭が、その弱点を破壊するための最適な力を練り上げていく。
タルタロスが、ハンマーを振り下ろす。
だがキメラ・ロードは、その攻撃をまるで未来予知でもしたかのように軽やかに回避した。
そして反撃に転じる。
狙うは、鷲の頭が見つけ出した弱点。
肩の関節部分、そして膝の裏の動力パイプが剥き出しになっている箇所。
キメラ・ロードの鷲の鉤爪が動力パイプを切り裂き、狼の牙が関節の装甲を噛み砕く。
「ゴ……!?」
タルタロスの動きが、初めてわずかに鈍った。
「効いている!」
「いけるぞ!」
フロンティアの仲間たちから歓声が上がる。
だがタルタロスは、ただのゴーレムではなかった。
胸の炉心が、最大級の輝きを放ち始める。
「まずい!何か来るぞ!」
タルタロスの全身の装甲が、パージされるように開いていった。
その内部から、無数の小型ミサイルのようなものが顔を出す。
「全方位攻撃か!」
これでは、キメラ・ロードといえども避けきれない。
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