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第九十二話 混沌の竜王
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「……味見だと?」
俺のあまりにも不遜な言葉に、メフィストは初めて仮面の下の表情をわずかに歪ませた。
「面白いことを言う。君はまだ自分の立場を理解できていないと見える」
彼はゆっくりと杖を天に掲げた。
その杖の先端に漆黒の魔力が渦を巻いて収束していく。それは先ほどフロンティアの仲間たちを壊滅させた『黒き太陽』とは比較にならないほどの、絶望的なエネルギーの塊だった。
「ならば教えてあげよう。絶対的な力の前に、ちっぽけな知恵など何の役にも立たないということを。この要塞そのものを我が力として」
彼の言葉に呼応するかのように。
天空要塞パンデモニウムがギシギシと悲鳴を上げた。
壁も床も玉座も。この巨大な浮遊城を構成する全ての物質がその形を失い、黒い魔力の粒子となってメフィストの杖の先端へと吸い込まれていく。
「なっ……!?」
「要塞が消えていく……!」
生き残っていた仲間たちが、その世界の終末のような光景に絶句する。
俺たちが立っていた星空の玉座の間は、もはや存在しない。
俺たちはただ何もない虚空に浮かんでいた。
そして俺たちの目の前で、一つの巨大な混沌が生まれようとしていた。
メフィストは要塞そのものを素材としたのだ。
彼自身の歪んだ魂を核として。
この世界に存在するあらゆる負の感情を触媒として。
彼が今まで喰らってきた無数のプレイヤーたちの魂を生贄として。
彼が行っていたのは創造ではなかった。
それは世界の理を完全に無視した、強制的な魂の融合。
メフィストは彼自身が、一つの巨大なモンスターへと変貌しようとしていた。
「見よ!これこそが世界の真理!破壊の果てにある究極の混沌!」
メフィストの狂気に満ちた哄笑が響き渡る。
漆黒の魔力の奔流が、一つの形を成していく。
それは竜の姿をしていた。
だが俺たちが知るどんな竜とも違う。
その体は安定した形を持たず、無数の苦しむ顔が溶け込んだ黒い泥のようだった。
翼はボロボロに引き裂かれ、そこからは闇そのものが染み出している。
そのおよそ生命体とは呼べない混沌の塊の中心で、メフィストの仮面をつけた顔だけが不気味に浮かび上がっていた。
【カオス・バハムート Lv.???】
レベルは測定不能。
その存在はもはや、このゲームのシステムの範疇を完全に逸脱していた。
「さあ、最後の饗宴を始めよう」
混沌の竜王と化したメフィストが、その無数にある絶望の瞳を俺たちへと向けた。
「キメラ・アークロード!」
俺は叫んだ。
俺の相棒もまたその全身から虹色のオーラを放ち、最後の敵へと立ち向かう。
伝説と混沌。
二つの究極の存在が、虚空で激突した。
だが、その結果はあまりにも無情だった。
キメラ・アークロードが放った三位一体の破壊光線は、カオス・バハムートの泥のような体にいともたやすく吸収され、霧散してしまった。
逆にカオス・バハムートが、その不定形の腕を一閃させた。
ただそれだけの攻撃。
だがその一撃はキメラ・アークロードの虹色のオーラを紙のように引き裂き、その巨体をいともたやすく吹き飛ばした。
「グルオオオオッ!?」
俺の最強の相棒が、初めて苦痛の絶叫を上げた。
その体には深い傷が刻まれ、神々しかった光は見る影もなく弱々しく明滅している。
一撃。
たった一撃で、俺たちの最後の希望は戦闘不能寸前にまで追い込まれたのだ。
「……嘘だろ」
ゼノンが呆然と呟いた。
「あれは……もう俺たちがどうこうできるレベルの存在じゃない……」
絶対的な絶望。
その言葉だけが俺たちの心を支配した。
どんな奇策もどんな絆も、あの混沌の化身の前には意味をなさない。
カオス・バハムートは傷ついたキメラ・アークロードにゆっくりと近づいていく。
そして、その巨大な口を開いた。
俺の相棒を喰らい、自らの力に変えようとしているのだ。
「……やめろ」
俺はふらつきながら立ち上がった。
そして混沌の竜王と傷ついた相棒の間に立ちはだかった。
「……面白い」
カオス・バハムートの中からメフィストの声が響く。
「まだ抗うか。創造主として自らの創造物と共に死ぬことを選ぶと?」
そうだ。
このままでは終われない。
終わらせるわけにはいかない。
俺はまだ、最後の賭けを試していない。
俺は傷つき倒れているキメラ・アークロードの、その巨体にそっと手を触れた。
そして彼に語りかけた。
「……すまない、相棒。俺はお前に酷いことを頼んだ」
「でもこれが最後だ」
「俺と一つになってくれ」
俺は創造スキルを発動させた。
だがその対象はモンスターではない。
俺自身。
そして素材は。
俺の最高の相棒、キメラ・アークロード。
それは創造主が自らの創造物を喰らう、禁断の、そして最後の儀式。
俺の人間としての全てを捨てる覚悟。
俺は混沌の竜王をまっすぐに見据えた。
「……教えてやるよ、メフィスト」
「絆っていうのはな、喰らうもんじゃねえ。一つになるもんなんだよ」
俺の体が眩い光に包まれ始めた。
それは俺たちの最後の、そして究極の創造の光だった。
俺のあまりにも不遜な言葉に、メフィストは初めて仮面の下の表情をわずかに歪ませた。
「面白いことを言う。君はまだ自分の立場を理解できていないと見える」
彼はゆっくりと杖を天に掲げた。
その杖の先端に漆黒の魔力が渦を巻いて収束していく。それは先ほどフロンティアの仲間たちを壊滅させた『黒き太陽』とは比較にならないほどの、絶望的なエネルギーの塊だった。
「ならば教えてあげよう。絶対的な力の前に、ちっぽけな知恵など何の役にも立たないということを。この要塞そのものを我が力として」
彼の言葉に呼応するかのように。
天空要塞パンデモニウムがギシギシと悲鳴を上げた。
壁も床も玉座も。この巨大な浮遊城を構成する全ての物質がその形を失い、黒い魔力の粒子となってメフィストの杖の先端へと吸い込まれていく。
「なっ……!?」
「要塞が消えていく……!」
生き残っていた仲間たちが、その世界の終末のような光景に絶句する。
俺たちが立っていた星空の玉座の間は、もはや存在しない。
俺たちはただ何もない虚空に浮かんでいた。
そして俺たちの目の前で、一つの巨大な混沌が生まれようとしていた。
メフィストは要塞そのものを素材としたのだ。
彼自身の歪んだ魂を核として。
この世界に存在するあらゆる負の感情を触媒として。
彼が今まで喰らってきた無数のプレイヤーたちの魂を生贄として。
彼が行っていたのは創造ではなかった。
それは世界の理を完全に無視した、強制的な魂の融合。
メフィストは彼自身が、一つの巨大なモンスターへと変貌しようとしていた。
「見よ!これこそが世界の真理!破壊の果てにある究極の混沌!」
メフィストの狂気に満ちた哄笑が響き渡る。
漆黒の魔力の奔流が、一つの形を成していく。
それは竜の姿をしていた。
だが俺たちが知るどんな竜とも違う。
その体は安定した形を持たず、無数の苦しむ顔が溶け込んだ黒い泥のようだった。
翼はボロボロに引き裂かれ、そこからは闇そのものが染み出している。
そのおよそ生命体とは呼べない混沌の塊の中心で、メフィストの仮面をつけた顔だけが不気味に浮かび上がっていた。
【カオス・バハムート Lv.???】
レベルは測定不能。
その存在はもはや、このゲームのシステムの範疇を完全に逸脱していた。
「さあ、最後の饗宴を始めよう」
混沌の竜王と化したメフィストが、その無数にある絶望の瞳を俺たちへと向けた。
「キメラ・アークロード!」
俺は叫んだ。
俺の相棒もまたその全身から虹色のオーラを放ち、最後の敵へと立ち向かう。
伝説と混沌。
二つの究極の存在が、虚空で激突した。
だが、その結果はあまりにも無情だった。
キメラ・アークロードが放った三位一体の破壊光線は、カオス・バハムートの泥のような体にいともたやすく吸収され、霧散してしまった。
逆にカオス・バハムートが、その不定形の腕を一閃させた。
ただそれだけの攻撃。
だがその一撃はキメラ・アークロードの虹色のオーラを紙のように引き裂き、その巨体をいともたやすく吹き飛ばした。
「グルオオオオッ!?」
俺の最強の相棒が、初めて苦痛の絶叫を上げた。
その体には深い傷が刻まれ、神々しかった光は見る影もなく弱々しく明滅している。
一撃。
たった一撃で、俺たちの最後の希望は戦闘不能寸前にまで追い込まれたのだ。
「……嘘だろ」
ゼノンが呆然と呟いた。
「あれは……もう俺たちがどうこうできるレベルの存在じゃない……」
絶対的な絶望。
その言葉だけが俺たちの心を支配した。
どんな奇策もどんな絆も、あの混沌の化身の前には意味をなさない。
カオス・バハムートは傷ついたキメラ・アークロードにゆっくりと近づいていく。
そして、その巨大な口を開いた。
俺の相棒を喰らい、自らの力に変えようとしているのだ。
「……やめろ」
俺はふらつきながら立ち上がった。
そして混沌の竜王と傷ついた相棒の間に立ちはだかった。
「……面白い」
カオス・バハムートの中からメフィストの声が響く。
「まだ抗うか。創造主として自らの創造物と共に死ぬことを選ぶと?」
そうだ。
このままでは終われない。
終わらせるわけにはいかない。
俺はまだ、最後の賭けを試していない。
俺は傷つき倒れているキメラ・アークロードの、その巨体にそっと手を触れた。
そして彼に語りかけた。
「……すまない、相棒。俺はお前に酷いことを頼んだ」
「でもこれが最後だ」
「俺と一つになってくれ」
俺は創造スキルを発動させた。
だがその対象はモンスターではない。
俺自身。
そして素材は。
俺の最高の相棒、キメラ・アークロード。
それは創造主が自らの創造物を喰らう、禁断の、そして最後の儀式。
俺の人間としての全てを捨てる覚悟。
俺は混沌の竜王をまっすぐに見据えた。
「……教えてやるよ、メフィスト」
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俺の体が眩い光に包まれ始めた。
それは俺たちの最後の、そして究極の創造の光だった。
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