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第九十九話 英雄たちの凱旋
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メフィストが遺した謎の言葉は、俺の心に小さな影を落とした。だがその不安を仲間たちに話すことはなかった。ようやく掴んだ平和な日常を、俺自身のまだ確証のない不安で曇らせたくはなかったからだ。
月日は穏やかに流れた。
アステリアの街はパンデモニウムという重しが取れたことで、以前にも増して活気に満ち溢れていた。アビスもバルガンたちの尽力により、危険だが夢のある冒険者たちの街へと生まれ変わりつつあった。
俺たちの名はもはや伝説となっていた。
聖騎士カエデ、千里眼のリオ、そしてゴブリン・メイジを従えるモンスターメイカーのユー。俺たちのパーティ『フロンティア』は世界を救った英雄として、吟遊詩人たちの歌の主人公となっていた。
だが当の本人たちは、そんな名声には無頓着だった。
相変わらずリオは商売に精を出し、カエデは後進の指導に汗を流し、俺とゴブは工房で新たなモンスターの創造に没頭していた。
「ユーさん!大変だよ!」
ある晴れた日の午後、リオが一枚の公式通知を手に工房へと駆け込んできた。
「運営から、大型アップデートの正式な日程が発表された!」
その知らせに俺たちは作業の手を止めた。
通知によればアップデートは一週間後。新たな大陸が実装され、レベルキャップが解放。それに伴い新職業や新スキルも多数追加されるという。
そして、そのアップデートの前夜祭としてアステリアで大規模な祝賀祭が開催されることになったらしい。
「祝賀祭のメインイベントとして……」
リオはゴクリと喉を鳴らした。
「『英雄たちの凱旋パレード』が行われるんだって!もちろん、その主役は……私たちだよ!」
「パレード……!?」
俺は思わず声を上げた。
人前に出るのはあまり得意ではない。
「勘弁してくれ。私はそういうのは柄ではない」
カエデもげんなりとした顔をしている。
だがリオはキラキラとした瞳で俺たちに迫った。
「ダメだよ!これは運営からの正式な依頼なんだから!それに、これはパンデモニウムとの戦いで傷つき、倒れていった全てのプレイヤーのための、鎮魂と復興のお祭りでもあるんだよ!」
彼女のその言葉に、俺たちは反論することができなかった。
そうだ。この平和は俺たちだけで勝ち取ったものではない。多くの名も知らぬ仲間たちの犠牲の上に成り立っているのだ。
祝賀祭の当日。
アステリアの街は建国記念日のようなお祭り騒ぎに包まれていた。
中央広場には巨大なステージが組まれ、メインストリートにはパレードを一目見ようと世界中から集まったプレイヤーたちが黒山の人だかりを作っていた。
俺たちは運営が用意した豪華な衣装に身を包み、控え室でその出番を待っていた。
俺とゴブはそろいの白を基調とした金刺繍の入ったローブ。
リオは宝石をちりばめた華やかなドレス。
そしてカエデは純白の儀礼用のドレスアーマー。その姿はまるで本物の王女騎士のようだった。
「……落ち着かないな」
カエデがそわそわと自分のスカートの裾を気にしている。
「ははっ、カエデさん、すごく綺麗ですよ」
俺が言うと、彼女は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
やがて運営スタッフのNPCが俺たちを呼びに来た。
ステージの袖で俺は、これから向かう光の洪水と大歓声を前にして、少しだけ足がすくむのを感じていた。
その時、俺の小さな相棒が俺の手をきゅっと握った。
「マスター。一緒です。僕がついています」
ゴブのその温かい言葉。
それが俺に最後の勇気を与えてくれた。
俺は仲間たちの顔を見渡した。
カエデ、リオ、ゴブ。
そしてこの場にはいない、バルガン、ゼノン。
フロンティアの仲間たち。
俺たちは一人じゃなかった。
だからここまで来れたんだ。
俺は頷いた。
「行きましょうか。俺たちの凱旋へ」
俺たちがステージへと足を踏み入れた瞬間。
地鳴りのような大歓声が、アステリアの空を震わせた。
「ユー様ー!」
「カエデ様、美しい!」
「リオちゃん、こっち向いてー!」
「ゴブくーん!」
無数の光の粒子が紙吹雪のように俺たちに降り注ぐ。
それはプレイヤーたちが感謝と祝福の想いを込めて放つ魔法の光だった。
そのあまりにも温かく、そして美しい光景に、俺は思わず涙がこぼれそうになるのを必死で堪えた。
俺たちはステージの中央に立ち、集まってくれた全ての人々に向かって深く、深く頭を下げた。
俺のモンスターメイカーとしての孤独な冒険は、いつの間にかこんなにも多くの人々と繋がっていた。
壇上から俺は見た。
人混みの中でひときわ大きな体で豪快に笑っているバルガンの姿を。
そして遠く離れた建物の屋根の上。
赤い髪をなびかせ、ワイバーンと共に静かにこちらを見下ろしているゼノンの姿を。
俺の仲間たちが、そこにいた。
俺は胸に込み上げてくる熱い想いを抑えきれなかった。
「皆さん!」
俺はマイクの前に立ち、声を張り上げた。
「俺たちの戦いは終わりました!ですが、俺たちの冒険はまだ終わりません!」
俺は隣に立つ仲間たちの手を取った。
「この最高の仲間たちと!そしてこの世界を愛する全ての皆さんと!これからも俺たちはこの世界を冒険し続けます!」
俺の言葉に、観客たちの今日一番の大歓声が応えてくれた。
それはまさしく英雄たちの凱旋だった。
俺たちの長かった戦いが最高の形で報われた瞬間だった。
その温かい光景を、俺は決して忘れないだろう。
この絆と祝福の記憶こそが、これから先俺たちを襲うかもしれない未知の闇を照らし出す光となるのだから。
月日は穏やかに流れた。
アステリアの街はパンデモニウムという重しが取れたことで、以前にも増して活気に満ち溢れていた。アビスもバルガンたちの尽力により、危険だが夢のある冒険者たちの街へと生まれ変わりつつあった。
俺たちの名はもはや伝説となっていた。
聖騎士カエデ、千里眼のリオ、そしてゴブリン・メイジを従えるモンスターメイカーのユー。俺たちのパーティ『フロンティア』は世界を救った英雄として、吟遊詩人たちの歌の主人公となっていた。
だが当の本人たちは、そんな名声には無頓着だった。
相変わらずリオは商売に精を出し、カエデは後進の指導に汗を流し、俺とゴブは工房で新たなモンスターの創造に没頭していた。
「ユーさん!大変だよ!」
ある晴れた日の午後、リオが一枚の公式通知を手に工房へと駆け込んできた。
「運営から、大型アップデートの正式な日程が発表された!」
その知らせに俺たちは作業の手を止めた。
通知によればアップデートは一週間後。新たな大陸が実装され、レベルキャップが解放。それに伴い新職業や新スキルも多数追加されるという。
そして、そのアップデートの前夜祭としてアステリアで大規模な祝賀祭が開催されることになったらしい。
「祝賀祭のメインイベントとして……」
リオはゴクリと喉を鳴らした。
「『英雄たちの凱旋パレード』が行われるんだって!もちろん、その主役は……私たちだよ!」
「パレード……!?」
俺は思わず声を上げた。
人前に出るのはあまり得意ではない。
「勘弁してくれ。私はそういうのは柄ではない」
カエデもげんなりとした顔をしている。
だがリオはキラキラとした瞳で俺たちに迫った。
「ダメだよ!これは運営からの正式な依頼なんだから!それに、これはパンデモニウムとの戦いで傷つき、倒れていった全てのプレイヤーのための、鎮魂と復興のお祭りでもあるんだよ!」
彼女のその言葉に、俺たちは反論することができなかった。
そうだ。この平和は俺たちだけで勝ち取ったものではない。多くの名も知らぬ仲間たちの犠牲の上に成り立っているのだ。
祝賀祭の当日。
アステリアの街は建国記念日のようなお祭り騒ぎに包まれていた。
中央広場には巨大なステージが組まれ、メインストリートにはパレードを一目見ようと世界中から集まったプレイヤーたちが黒山の人だかりを作っていた。
俺たちは運営が用意した豪華な衣装に身を包み、控え室でその出番を待っていた。
俺とゴブはそろいの白を基調とした金刺繍の入ったローブ。
リオは宝石をちりばめた華やかなドレス。
そしてカエデは純白の儀礼用のドレスアーマー。その姿はまるで本物の王女騎士のようだった。
「……落ち着かないな」
カエデがそわそわと自分のスカートの裾を気にしている。
「ははっ、カエデさん、すごく綺麗ですよ」
俺が言うと、彼女は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
やがて運営スタッフのNPCが俺たちを呼びに来た。
ステージの袖で俺は、これから向かう光の洪水と大歓声を前にして、少しだけ足がすくむのを感じていた。
その時、俺の小さな相棒が俺の手をきゅっと握った。
「マスター。一緒です。僕がついています」
ゴブのその温かい言葉。
それが俺に最後の勇気を与えてくれた。
俺は仲間たちの顔を見渡した。
カエデ、リオ、ゴブ。
そしてこの場にはいない、バルガン、ゼノン。
フロンティアの仲間たち。
俺たちは一人じゃなかった。
だからここまで来れたんだ。
俺は頷いた。
「行きましょうか。俺たちの凱旋へ」
俺たちがステージへと足を踏み入れた瞬間。
地鳴りのような大歓声が、アステリアの空を震わせた。
「ユー様ー!」
「カエデ様、美しい!」
「リオちゃん、こっち向いてー!」
「ゴブくーん!」
無数の光の粒子が紙吹雪のように俺たちに降り注ぐ。
それはプレイヤーたちが感謝と祝福の想いを込めて放つ魔法の光だった。
そのあまりにも温かく、そして美しい光景に、俺は思わず涙がこぼれそうになるのを必死で堪えた。
俺たちはステージの中央に立ち、集まってくれた全ての人々に向かって深く、深く頭を下げた。
俺のモンスターメイカーとしての孤独な冒険は、いつの間にかこんなにも多くの人々と繋がっていた。
壇上から俺は見た。
人混みの中でひときわ大きな体で豪快に笑っているバルガンの姿を。
そして遠く離れた建物の屋根の上。
赤い髪をなびかせ、ワイバーンと共に静かにこちらを見下ろしているゼノンの姿を。
俺の仲間たちが、そこにいた。
俺は胸に込み上げてくる熱い想いを抑えきれなかった。
「皆さん!」
俺はマイクの前に立ち、声を張り上げた。
「俺たちの戦いは終わりました!ですが、俺たちの冒険はまだ終わりません!」
俺は隣に立つ仲間たちの手を取った。
「この最高の仲間たちと!そしてこの世界を愛する全ての皆さんと!これからも俺たちはこの世界を冒険し続けます!」
俺の言葉に、観客たちの今日一番の大歓声が応えてくれた。
それはまさしく英雄たちの凱旋だった。
俺たちの長かった戦いが最高の形で報われた瞬間だった。
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