M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ

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第百話 僕たちのオンライン

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凱旋パレードの熱狂から一夜明け、アステリアの街は大型アップデートへの期待感で新たな熱気に包まれていた。俺たちは久しぶりにパーティとしての休暇を取ることにした。

だが休暇といっても、やることはいつもとあまり変わらない。
俺たちはロックバードの背に乗り、あの思い出の場所へと向かっていた。
天空の浮遊島。

「やっぱり、ここは落ち着くなあ」
リオが光る苔の絨毯の上に大の字になって寝転がった。
「アステリアの喧騒が嘘みたい」

「ああ。ここは私たちにとって始まりの場所の一つだからな」
カエデも水晶の泉のほとりに腰を下ろし、穏やかな表情で水面を眺めている。

俺とゴブは二人で、島でしか採れない特殊な木の実を集めていた。これを配合すれば、ゴブの魔法の威力をさらに高めることができるのだ。
「マスター、あそこにたくさんあります!」
「ああ、本当だ。手伝ってくれ、ゴブ」

戦いも陰謀も何もない。
ただ気の置けない仲間たちと穏やかな時間を過ごす。
俺は、この何気ない日常こそが俺たちが命を懸けて守りたかったものなのだと改めて実感していた。

その日の夜。
俺たちは浮遊島の星空が一番よく見える崖の上で、焚き火を囲んでいた。
パチパチと薪がはぜる音。
眼下に広がる雲海。
そして頭上には、まるで宝石箱をひっくり返したかのような満天の星空。

「……綺麗だね」
リオがうっとりと呟いた。
「うん……」

俺たちは言葉もなく、ただその絶景に見入っていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
カエデが静かに口を開いた。

「……なあ、ユー。これからどうするのだ?」
その問いは俺たちの未来に向けられたものだった。

「どうするって……」
「パンデモニウムはいなくなった。お前の伝説級モンスターの創造も終わった。私たちの大きな目標は一度達成されたわけだ。だからこれから私たちはどこへ向かうのだろう、と」

彼女の言葉に俺は少しだけ考え込んだ。
そうだ。
俺たちはがむしゃらに走り続けてきた。
だがその旅は、一つの終着点にたどり着いたのだ。

俺は隣に座る仲間たちの顔を見渡した。
カエデ、リオ、ゴブ。
このかけがえのない仲間たち。

「……決まってませんよ」
俺は笑って答えた。
「どこへ行くかなんて、まだ何も。でも一つだけ決まっていることがあります」

「なんだ?」
「これからもこの四人で一緒に冒険を続ける。ただ、それだけです」

俺のそのあまりにも単純な答えに、カエデは一瞬きょとんとした顔をしたが、やがてふっと柔らかく微笑んだ。
「……そうか。そうだな。それで十分だ」

リオもゴブも嬉しそうに頷いている。
そうだ。
目的地なんてなくたっていい。
この仲間たちと一緒なら、どこへ行ったってそこが最高の冒険の舞台になるのだから。

俺たちがそんな話をしていると、俺の視界の隅にピロンと一通のメール受信通知が表示された。
こんな時間に誰からだろう。

俺は何気なくそのメールを開いた。
そしてその内容に息を呑んだ。

差出人は不明。『????』と表示されている。
件名もない。
ただ本文に短い一文だけが記されていた。

『世界の真実に、触れたくはないか?』

そしてその下には一つのファイルが添付されていた。
俺はごくりと喉を鳴らし、そのファイルを開いた。

表示されたのは一枚の地図データ。
それはM.M.O.の公式マップにはどこにも存在しない、未知の、そして広大な新大陸の座標データだった。
アップデートで実装される新大陸とは明らかに違う。
誰も知らない、誰も足を踏み入れたことのない禁断の領域。

そしてその地図データの最も奥。
大陸の中心に一つの禍々しい紋章が記されていた。
それは翼の生えた髑髏。
パンデモニウムの紋章。

だがそれはメフィストが使っていたものとは少しだけ違っていた。
より古く。
より邪悪な気配を放っていた。

『本当の敵は、私ではない』
『それは、この世界の……「外」に、いる』

俺の脳裏にメフィストが遺したあの謎の言葉が蘇る。
このメールは一体誰が。
そしてこの地図は一体何を意味するのか。

俺は何も言わずにその地図データを仲間たちに共有した。
三人はその不気味な地図を見て言葉を失った。

「……これって」
リオが震える声で言った。

「……新たな戦いの始まりか」
カエデがレイピアの柄を強く握りしめた。

ゴブは俺の隣で静かに杖を構えた。

俺は仲間たちの顔を見渡した。
その瞳には恐怖も絶望もない。
そこにあるのは未知への好奇心。
そしてまだ見ぬ強敵への揺るぎない闘志。

俺はふっと笑った。
そうだ。
やっぱり俺たちの旅はまだ終わらない。
いや、終わらせてはくれないらしい。

俺は立ち上がった。
そして夜明け前の東の空をまっすぐに見据えた。
地平線のその向こう側。
まだ誰も知らない新たな世界が、俺たちを待っている。

「……面白い」
俺は呟いた。
「やってやろうじゃないか」

俺は仲間たちと顔を見合わせ、そして共に強く頷いた。

「僕たちの冒険は、まだ始まったばかりだ」

その声は、この広大な世界に確かに響き渡っていた。
俺たちのオンラインはこれからも、どこまでも続いていく。
最高の仲間たちと共に。

(M.M.O. - Monster Maker Online 完)
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