11 / 171
第一部 祝福の儀編
マイチー州の我が家
しおりを挟むマイチー州に着いた。王都訪問は大変だった。祝福を授かれば前代未聞で大騒ぎになり、まさかの王様との謁見、二人の女の子と仲良くなり、火事騒ぎ、最後にゲオルグの陞爵と色々ありすぎてマジで疲れた。
馬車での移動も時間かかるし、揺れるし、ケツが痛くなるし。もう今日と明日はゆっくりするんだ。決めたんだ。
家に着いた。マイチー州では大きい家だが宮殿の門ほどもない。マジで宮殿デカすぎ。
「ネロ~、おかえり~‼︎」
エリスママンが出迎えてくれた。ハグしてくれる。おう、胸部装甲が半端ない。息が‥‥‥。
「エリスよ、ネロが苦しそうだぞ。」
「えっ?あ~‼︎ごめんなさい、ネロ。大丈夫⁉︎」
「祝福の儀はどうだったの?」
「うむ、その話だが夜に皆が揃ってからにしよう。長旅でネロも疲れただろうし少し休むが良かろう。」
ありがとう、ゲオルグ。早速ベッドへ。
昼寝出来たので体力も回復した。そろそろ夕ご飯か。手伝おうか。
「母様、お手伝いします。どうしたらいいですか?」
「あら、ネロ。ありがとう。体力は戻った?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあみんなのお皿と食器を並べてくれるかしら?」
「はーい」
夕ご飯だ。この国は日本ぽくもあり西洋っぽくもある和洋折衷した不思議な文化圏だ。
特に食事は米もある、小麦もある、肉は魔物がメインかな、野菜もある。
酒はまだ飲んで無いので詳しくは知らないが日本酒ぽいモノ、ビールみたいのとか種類は少なそうだが日本で飲めてたモノは大体ありそうだ。
と言ったところなのでママンのご飯は美味しいと思う。少なくとも前世で自炊していたモノよりは遥かに美味しい。
今日は鍋かな?オーク肉の薄切りがあるからオークしゃぶだろう。俺も家族もみんな大好きなメニューだ。
「さて、今回のネロの祝福についてだが‥‥‥。」
夕ご飯も半ばに差し掛かったところでゲオルグが切り出す。
「『神級の祝福』だった。」
食卓が静まり返る。鍋の沸騰するポコポコ音だけが聞こえる。
「何ですって⁉︎神級?キャー‼︎‼︎スゴイ‼︎ネロ‼︎」
エリスママン大騒ぎ。
「ホントか⁉︎スゴイな!ネロ!」
ポール兄さんもテンション上がる。
「神級って本当にあるんだ‥‥。」
ピーター兄さんは冷静だ。
「私も信じられなかったがな。それだけでは無い。実は‥‥子爵に陞爵した。」
エリスママンが倒れそうになり、俺が支える。
「スッゲー‼︎」
ポール兄さんは飛び上がる。
「ウチの財政状況が大きく変わるね。」
ピーター兄さんクール!微笑んでるから嬉しいのだろうけど。
その日のヴァッサー家の晩餐はお祭り騒ぎだった。
「ネロ、少し話をしてもいいか?」
ピーター兄さんが部屋に入って来た。
「何でしょう?」
神妙な顔だ。
「お前はこの家を継ぐつもりはあるか?」
「無いよ」
即答する。
「本当か?」
「王都に行く前にも言ったけど、僕は冒険者になりたいんだ。貴族の付き合いってのも嫌いだし。」
「そうか。もし継ぐつもりならこれからどうしようと思っていたところだが。安心したよ。」
貴族は世襲制だ。そして基本的には長男が継ぐ。それこそ長男が病気であるとか他の弟が超優秀だとか以外は。それこそ神級なんて引き当てたら下克上も成立するだろう。
ピーター兄さんとしては九割九分決まっていた後継と言う就職先を、俺に取られることを危惧したのだろう。普段から関係は良好にしていたのもあって、思うところを確認してくれたのだろう。人間関係ってやっぱ大切だ。
27
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる