Can't Stop Fall in Love

桧垣森輪

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☆こーひーぶれいく☆番外編

殿と私の姫初め・後編 ※R18

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※R18表現あり

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 離れは屋敷の中でも奥まった場所にあるせいか、周囲の雑音は耳に届かない。輝翔さんの後ろに座り、お湯の沸く音や輝翔さんの所作が奏でる音を聞きながら、ゆっくりとした時間の流れを感じていた。
 輝翔さんは畳の上に揃えられた道具を使って、ひとつひとつの動作を流れるように行っている。お正月に一人で茶道を嗜むなんて、なんかもう、輝翔さんてばチート過ぎる。
「輝翔さん、茶道もできるんですね」
 お茶やお華といえば女性の花嫁修業のための習い事と思いがちだったけれど、さすが御曹司といいましょうか。日頃の立ち振舞いの優雅さはこういった芸事からきているのかもしれない。きっと、英才教育の一環として、幼い頃から習い事やお稽古事を数多くこなしてきたのだろう。
「亡くなった祖母が好きだったんだ。実家に帰ってもすることがないから、久しぶりに点ててみようと思って」
 輝翔さんは背中越しに穏やかな声で応えると、茶筅を振るう。しばらくすると、私の前にふんわりと泡立てられた薄茶の入った高そうなお茶碗が差し出される。
「ここには俺しかいないから、作法は気にしなくてもいいよ」
 私が不作法を気にしないように気遣って、輝翔さんが優しく声をかけてくれた。
「はい、では、お点前頂戴いたします」
 趣味狂いの母は、もちろん茶道もかじっている。といっても、うちには茶室なんてないから、ダイニングテーブルにポットのお湯で点てるのだけれど。
 お抹茶はダイエット効果もあるとかで、食事の後に母に点ててもらっていたから、飲み方くらいは教わっていた。
 一礼した後で茶碗を右手でとり、左手にのせ、茶碗の正面を避けるためにふところ回し(時計回り)に二度まわして向きを変える。お茶碗に口をつけると、とろりとした温かいお茶が流れ込み、同時に瑞々しい芳醇な香りが鼻から抜けた。
 お抹茶を頂くとリラックスもするけど、背筋も伸びる気がする。今日は輝翔さんの視線を感じているから、尚更なのかもしれない。 数口で飲みきり、飲み口を指先で軽く拭き取り、その指を懐紙で拭こうと思ったら……。
「あ……、懐紙が……」
 お茶を頂くなんて想定していなかったから、手を拭くものを準備していない。まさか着物で拭うわけにもいかずどうしたものかと考えていたら、ふいにその手を輝翔さんが掴んだ。
「──輝翔、さん?」
 いつの間にか目の前に座っていた輝翔さんを見上げて、心臓が跳ねた。
 輝翔さんは真っ直ぐ私を見つめながら、茶碗を取り上げて端に置くと掴んだ指先を口に含んで丁寧に舐め上げていく。指先を這う舌の感触に背筋がぞわぞわして、下腹部がきゅんと疼いた。
 目を逸らしたいのに、なぜだか動くことができない。輝翔さんの瞳には、確かに、情欲の炎が揺らいでいた。
 これは非常にマズイ展開です。輝翔さんは明らかに場の雰囲気に酔ってしまっている。着物姿といういつもと違ったシチュエーションがいけなかったのか、気分はまるでお殿さまに手籠めにされる町娘……。
 なんて呑気に考えている場合ではないのだけれど、ついつい考えている間に掴まれた手を引かれ、体勢を崩した私は輝翔さんの膝へと倒れ込んでしまった。抹茶の香りが吹き飛ぶくらい、輝翔さんの香りが一瞬で広がる。
 マズイ、非常にマズイ。あわあわと慌てていると指から離れた唇が耳元に近づき、低い声で囁いた。
「──俺も、お点前頂戴していい?」
 あーれー、ご無体な、なんてことを言う余裕もなく、覆いかぶさるように近づいた顔に唇を塞がれた。

「んん……っ…」
 口の中に入り込んだ舌が時間をかけて丁寧に歯列をなぞり内頬を撫で上げる。舌を絡み取られる頃には、頭の芯が溶けてぼうっとしてきた。
 ようやく解放された口の端からこぼれた唾液を丁寧に舐めとった輝翔さんは、帯を避けて後ろから抱きつくような体勢で耳を優しく愛撫し始める。上の唇と下の唇で軽く挟んで輪郭をなぞり、耳朶を食み、やがて耳の孔を舐め上げると、耳を擽るクチャリとした水音と熱い感触に肌が粟立ち、すっかり力の抜けた私は輝翔さんの腕の中にしなだれかかっていた。
 頭の中にお母様や父の言葉が浮かんでは消えていく。貢物とは、このことだったんだ。つまりはみんな、こうなることを想定していたということで。それを思うとものすごく恥ずかしい。
「輝翔さん……、ダメ、着物が崩れちゃう……」
 かろうじて残っていた理性で襟元へと潜り込もうとする手を抑えてはみたものの、我ながら情けないくらいに力のない腕はなんの抵抗にもならなかった。輝翔さんの手は着物の中でゆっくりと動き回り、手の平で形を確かめるように全体を包み込んではやわやわと胸を揉み上げ、はしたなく勃ち上がった乳首を指で転がす。
 背後から抱きしめられてから輝翔さんの表情はわからないのに、差し込まれた手が着物の胸元で蠢くのだけはよくわかる。身体をくねされせば着物が畳で擦れる音がして、かえって自分か感じている様子が耳からも伝わった。
「美月の着物、花嫁衣裳みたいだね……」
「……え?」
「柄や裾が見えなかったら、白無垢みたい。こんなに綺麗な格好をした美月が俺の家にいるなんて、嘘みたいだ」
 晴れ着と白無垢を一緒にするのはどうかと思うのですが。まあ、確かにうちの人間が須崎家に挨拶に来るのは毎年恒例なのだけれど、どういうわけか今まで私は一度も連れて来られることはなかった。だから、初めての御呼ばれに張り切ってしまって晴れ着なんぞで来たわけなのだけれど。
 連れて来られなかった理由は、十中八九、輝翔さんこのひとなんだろうなぁ……。
 ずっと昔から、私を想ってくれていた輝翔さん。それを知りつつ、父と兄は頑なに輝翔さんに恋をしまいとする私を見守ってくれていたんだ。
 だけど、結局は輝翔さんと恋に落ちて。なんの障害もなくなった輝翔さんを止める理由は……もう、ないな。うん。
「もう、誰にも見せたくないくらい……」
 胸を弄びながらも輝翔さんはうなじへと舌を這わせる。いつもは髪で隠れている場所に感じる息遣いが、心なしか大きくなった気がした。
 かくいう私も、普段とは違う体の昂りを隠せない。いつも以上に強く抱きしめられて、どうしようもないもどかしさから首を傾けると、輝翔さんの瞳とぶつかった。 
「──輝翔さん、好き……」
 いつもを違う雰囲気に酔っているのは輝翔さんだけじゃない。日頃は言えないことも、お正月の浮かれた気分に流されたと思えばすんなりと口にできた。
 輝翔さんは目を見開くと唇をきっと結んだ。やがて大きく息を吐くと、苦笑交じりに呟く。
「あんまり、煽るなよ。着崩れないように気を付けてるんだから」
 さっきとは違う激しいキスを繰り返しながら、輝翔さんは着物の端を捲り上げると太腿に触れた。  

「いや……、ああっ」
 唐突に下半身に冷たい空気が流れ込み、我に返った。軽く開いていた足の間を閉じるよりも早く、輝翔さんは付け根へと手を伸ばし花弁の中心に触れる。
「下着はつけてないんだね。着物は濡れてないけど、もうこんなに……」
 軽く触れられただけで、ぬるりと指に纏わりつく。腰まで捲り上げられて露わにされたそこは、もうすでに十分すぎるくらいに潤っていた。
「やだぁ……、言わな…いで…んん、はあ、ああっ」
 輝翔さんの膝の上で下半身を晒している状況に眩暈がする。下着の線が出ないように着物の時にはなにもつけないか、和装用のショーツやTバックを履きなさいと言われたのだけれど、たった一日のためにわざわざ買う必要もないと思ってしまった自分が馬鹿だった。いや、和装用ショーツはともかく、Tバックなんて履いていたら、それはそれで大変だったかもしれないけれど。
 恥ずかしさで顔を赤くする私に輝翔さんはクスリと笑うと、触れていた指で潤んだ茂みを掻き回す。
「ああっ、あっ、いやぁ……っ」
 ピチャピチャという音がやけに耳に響いて、さらに顔が熱くなる。輝翔さんは面白そうに指を動かしながら笑い交じりに囁いた。
「本当に……、美月は感じやすいね。だけど、今年も、これからも、こんなに乱れた美月を見せていいのは、俺だけだからね?」
「あ、はあ、輝翔さん、……輝翔さんだけ……だから……」
 割れ目にそってゆるゆると動く指はいとも簡単に中へと沈んでいく。差し込まれた指が一本、二本と増やされ、グジュグジュと音を立てて激しく出し入れされる。身体から溢れ出た蜜が陽の光を浴びて時折キラキラと光るのがなんともいえない劣情を抱かせて、妙に興奮した。
「あっ、あ、ん、ああ、あああんっ!!」
 親指の腹で隠れていた蕾を撫でられ、身体中を電流が突き抜けた。同時に中で折り曲げられた指が一際感じる場所に触れた途端、あっけなく達してしまった。

 呆然としたまま腕の中で呆けていると、輝翔さんは額や頬に口づけを落とし、私をそっと畳の上に降ろした。捲られた裾は気になるけれど、起き上がって直す気力はない。帯があるせいで仰向けに寝そべることもできず、うつ伏せのままくたりと手を伸ばしていると、カチャカチャというベルトを外す音が聞こえた。
「美月、これ顔に敷いて」
 差し出されたのは紫色の袱紗だった。言われた通りに顔の下に敷くと、輝翔さんは膝立ちのままおもむろに私の腰を持ち上げた。
「やだっ、なに……!?」
 いくらなんでも、恥ずかしすぎるっ。
 着物の裾は腰まで思い切り捲り上げられて、まるでおせち料理の中の昆布巻きみたい。
「着物を汚すなって言われているからね」
 輝翔さんの声が背後から聞こえて、そのまま勢いよく貫かれた。
「いやっ、……あ、んんっ、ああ、あああっ」
 強すぎる刺激に目の前がチカチカする。悲鳴に近い声を上げながら大きく背中が仰け反った。だけど、輝翔さん自身を咥え込んだ私の中は袱紗を握りしめる手のようにきゅっと締まり、熱い塊をしっかりと受け入れていた。
 輝翔さんは私の腰を両手で掴むと、激しく腰を打ち付ける。ベッドと違って軋む音がしないから、お互いの肌がぶつかる音が生々しい。さっきまでの静寂を懐かしんでいる暇もなく、ただただ揺さぶられ喘がされる。
「やあ、あ、あきと…さん……っ、も、無理、ああっ、あああああっ」
 目をきつく閉じて必死で輝翔さんの名前を呼ぶと、後ろから伸びてきた手に頬を撫でられる。
「いいよ、美月……イッて?」
「あ、あんっ、ああっ、あああああ──────っ!!」
 これ以上ないほど激しく揺さぶられ、背中を大きく仰け反らせて絶頂に達した。

 ──なのに。
 輝翔さんは自分自身を一度私の中から抜き出すと、崩れ落ちた私の身体を横向きにする。
「美月。俺はまだだから……もう少し、頑張ってね?」
 そう言って笑った顔が、恐ろしいほど艶やかで……。
「あああっ!! んんっ、やあ、あ、はあ、あああんっ!!」
 達したばかりだと言うのに再び激しい注挿が始まる。
 こうなってくると、愛おしいとか通り越して、恐ろしい。
 もう、やだぁ!!新年早々、堪忍しておくんなましっ!!

 結局その後も、お殿様が満足するまで、私は散々甘い声で啼かされ続けた──。 

**********

「あら、着物は無事だったのね?」
 夕方、仕事を終えて帰宅したお母様は私を見るなり口の端を意地悪く上げてニヤリと笑った。
 いや、本当は気づいているのだろう。うちのお手伝いさんは優秀ね、なんて言って鼻歌を歌いながらお年玉を配り始めたんだもの。

 いくら気をつけたとはいえ、コトに及んだ後の晴れ着は明らかに着崩れていた。帯があるからと言って横からとか上に乗れとか散々恥ずかしい恰好をさせられて、極めつけは乱れた着物をお手伝いの女性に着付け直してもらうという羞恥プレイ……。その時の恥ずかしさったら、もう、穴があったら入りたいどころではなかった。
 やりたい放題だった満足気なお殿様と無表情のお手伝いさんに挟まれながら、来年は着物なんか着てくるものか、と新年の誓いをたてた私なのでした。
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