離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?

椿蛍

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第3章

4 敵だらけのパーティー

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 フォルシアン公爵家主催のパーティーは王都に所有するお屋敷で行われる。
 四大公爵家だけあって、王都の大通り沿いにお屋敷を構えていた。
 私がパーティーに出席するのは、王宮の舞踏会以来のことで、もちろん緊張する。
 サーラの記憶では何度も見たことがある光景だけど、四大公爵家同士の交流は少なく、ましてや公爵の誕生パーティーに参加するのは初めてだ。
 絶縁状態とはいえ、アールグレーン公爵家の血筋である私が、フォルシアン公爵家のパーティーに入れたのは、リアムがいたから。

 ――と言っても、私にとってアウェーな場であることに変わりありませんが。

 貴族の社交の場が、私のホームになる可能性はゼロに近い。
 なぜなら、私は貴族たちにとって目の上のたんこぶ、お邪魔虫、ぷちっと潰せるものなら潰しておきたい存在である。
 我が娘を王子の妃にしたいと目論んでいる貴族がほとんどではないだろうか。

 ――宮廷魔道具師になって、少しは認められたと思ったのに、なんだか敵が増えてませんか?

「リアム……。本当に私がリアムの婚約者として振る舞うんですか?」
「そっちも兄上から逃げられるだろう? 有益な作戦だと思ったが?」
「それはそうなんですけど……」

 私たちはすでに共犯者。
 この世界にやってきた日から、秘密を共有している。
 さらに、秘密を重ね、みんなを欺こうとしていた。
 一歩踏み出したなら、もう後戻りできない。

「緊張しているのか? 安心しろ。誰も俺を敵に回そうとは思わない。兄上以外」
「その最後の人物が、一番問題なんですが!?」
「貴族全員を敵に回すよりマシだろう。敵の数が減ってよかったな」
「比較がおかしい!」

 涙目な私に対して、リアムのほうはまったく気にしていない。

「中へ入るぞ」
「わかりました……」

 覚悟を決めて、お屋敷の中へ足を進めた。
 お屋敷の中は華美さを最小限に抑えている。
 それだけではなく、敵の侵入を前提にした造りになっていることに気づいた。
 周囲を高い塀を張り巡らし、弓兵を配置した見張り台がある。
 侵入者を見つけやすいようにするためか、庭に観賞用の草木は一切なかった。

 ――う、うわぁ。すごい警戒ですね。どれだけ敵が多いんですか?

 フォルシアン公爵家と違って、アールグレーン公爵家は華やかで屋敷の装飾も多い。
 アールグレーン公爵家は時代を泳ぐ魚だ。
 その時々の強者に味方し、うまく生き抜いてきた。
 だから、今は高みの見物を決め込んで、ルーカス様とリアムのどちらが王になるのか待っている。
 一見、平和そうに見えるけど、『親族は全員、家のための手駒』として考えているアールグレーン公爵家。
 過去、アールグレーン公爵家に逆らった親族は、領地内で不慮の事故に見せかけ、残忍な方法で殺された――それを思い出し、ゾッとして、首を横に振った。
 サーラがおとなしい娘に育つのも当然だ。
 反抗しようものなら、命を奪われるのだから。
 どの公爵家もクセ者であることには変わらない。

「リアム様がいらっしゃったぞ」
「隣にいるのは、アールグレーン公爵令嬢か」
「婚約したというのは本当らしいな」
「元妃と婚約するのは、王宮の慣例を破ってのこと。これは一波乱あるぞ」

 リアムが次期王位継承者として、国王陛下から内々に指名を受けたけれど、それは正式なものではななく、公式の発表の場はまだだ。
 王宮が準備しているのを知っていても、まだまだルーカス様にも可能性があると思っている人も少なくない。
 どちらにつこうか悩んでいるのは、アールグレーン公爵家だけではないようだ。

「どうせ、なにをしても兄上とはもめる」
「兄弟の不仲をどうどうと開き直られても困るんですが……」

 リアムに兄弟の仲を改善する気はさらさらないようだ。
 そんなリアムは珍しく王子らしい服装をしている。
 銀糸の刺繍が見事な黒のウエストコートと揃いのフロックコート。
 コートの下は白のシャツとタイがのぞく。
 軍服じゃない分、いつもより王宮風だけど、威圧感も平常どおり。
 リアムが近寄りがたい空気を出していても、それをものともせずに、平気で駆け寄ってくる人物がいた。
 
「リアム様! お会いできて嬉しいですわ!」
 
 駆け寄ってきたへレーナは、赤い髪にオレンジ色のドレスを着て、真夏の太陽みたいに明るく華やかだった。
 そして、すごく目立っている。
 
「王宮でリアム様をお待ちしておりましたのに、会えなくて、とても残念ですわ」
「こら、へレーナ。まず、私が先に挨拶すると言っただろう」

 強引にリアムの腕に、自分の腕を絡めた愛娘をはしたないとたしなめるどころか、フォルシアン公爵は笑顔を浮かべた。

「フォルシアン公爵。注意するのは挨拶ではなく、俺との距離だ」

 リアムは腕を抜き、それでも近寄ろうとしたへレーナを手で制して止める。
 倍増したリアムの威圧感に、へレーナは動きを止めた。
 そこから先、近寄ることは許さないという目に見えないオーラを感じる。
 さすが、魔物も近寄らない男リアム。
 物理的にも精神的にも距離を取るのがうまい(褒めてないけど)。
 そう思っていると、またリアムからにらまれた。
 
 ――リアムは私の心が読めるんですかね?
 
 ここまで、私は空気でフォルシアン公爵とへレーナから完全に無視されていた。

「そうですな。愛娘が失礼を。我が家のささやかなパーティーへようこそ。心ばかりのもてなしを楽しんでいただきたい」

 パーティーはささやかではなかった。
 大勢の楽隊を招待し、演奏が絶えず奏でられ、美味しそうなごちそうが山盛りになっている。
 私の心はへレーナより、テーブルの上のごちそうに向いてしまう私は食いしん坊。
 贅沢にも野生の魔獣肉をふんだんに使っている。

 ――くっ! これは……! テーブルの端から端まで順番に食べたいです!

 なんなら、往復したっていい。
 私が落ちつきなく、そわそわしていることに気づいたリアムが目で語りかける。

『この食い意地のかたまりが! よだれを垂らすな!』
『言葉にしなくても目と目で語り合える関係っていいですよね?』
『叩き潰すぞ』

 私とリアムの信頼関係で成り立つ高度なやりとりが交わされる中、フォルシアン公爵の長い挨拶が続いていた。
 
「リアム様。我が娘のへレーナと会うのは久しぶりでは? 美しく成長し、驚いたでしょう。妃にどうです?」
「そのことについて話がある」
「奇遇ですな。こちらもリアム様にお話したいことがありまして」

 リアムを恐れていないのか、フォルシアン公爵は余裕たっぷりだった。
 フォルシアン公爵はリアムより、ひとまわり以上年上の三十八歳。
 へレーナによく似た赤い髪と赤茶色の瞳とがっちりした体つき、公爵家の当主であるからか、多少のことでは動じない貫禄はさすがだ。
 銀の刺繍をした青の上着、ブレスレットやピアスはシンプルなデザインで、すべて銀製で統一している。
 着ているものより気になるのは、がっしりした体型だ。
 フォルシアン公爵家の血筋は長身で体が大きい人が多く、公爵の誕生祝いに集まった親族全員、身長が高くて鍛えられた体をしている。 

「まずは、私からリアム様にお礼を申し上げたい」
「お礼?」
「我が娘のへレーナを王宮へ迎えてくださり、心より感謝申し上げます」

 大広間のざわめきが大きくなった。
 獅子に似た風貌のフォルシアン公爵は、不敵な笑みを浮かべて、自分が優位であることを示す。
 
 ――挨拶と言っておきながら、リアムがまるでフォルシアン公爵令嬢の王宮滞在を許したような口ぶり。

 リアムが私を婚約者として紹介する前に、先手を打ったというわけである。

「お父様! 堅苦しい挨拶が必要かしら? 昔からお互いを知っている仲なんだし、もっと気楽に付き合いたいわ」
「へレーナはもっと親しくなりたいと言っております。我が娘がリアム様のそばにいることをお許しいただけませんか?」

 へレーナは私を見て、勝ち誇った笑みを浮かべている。
 有力者の後見もない私に勝ち目はない――そんな笑みだった。

「わかった。ならば、王宮に好きなだけ滞在するといい」
「それは嬉しいお言葉。リアム様に認めていただいたとなれば、へレーナも王宮で過ごしやすくなるでしょう」

 フォルシアン公爵はリアムが屈したと思い、満足げな顔をした。
 
「俺は自分の屋敷で暮らしているが、不在でもいいということだろう?」
「は? リアム様は王宮で暮らしているのでは!?」
「王宮へ行くのは仕事の時のみ。へレーナと顔を合わせる機会はないが、令嬢としての行儀見習いにはなるはずだ。よかったな」

 ――やっぱり、そうだったんですね。

 私はわかっていた。
 リアムはエリート中のエリートの宮廷魔術師であり、その長である。
 働いているだけでなく、魔物を小動物のように狩り、ギルドに素材は売り放題。
 税金で暮らす必要はなく、お金を自由に使えるだけの財産を築いている。
 そもそも王宮のパーティーで、私が着ていたドレス一着で一年分の食費が賄えるのだ。
 それを簡単に買えてしまうところで、『けた違いのお金持ちじゃ……』という疑惑が生まれた。
 
 ――そして、疑惑は確信へ。

 ちなみに今回のドレスもリアム持ちである。
 ちょっと商売をしている人間ならわかることなのに、物の相場を理解せずに成長したフォルシアン公爵には、それがわからなかったようだ。

 ――これだから、お坊ちゃま育ちは。

 思わず、私は冷たい視線を向けてしまった。
 リアムが王宮にいないと知ったへレーナが、悔しそうに私をにらんでいるのに気づいた。

「アールグレーン公爵令嬢にあたしが王宮へ行くと告げたのが悪かったんだわ。あたしに嫉妬して、リアム様をわざと王宮から遠ざけたのよ!」
「しっ、嫉妬……!? 違います。それは誤解です」

 すばやく否定したけれど、フォルシアン家の一族の話し声が聞こえてきた。

「北のノルデン公爵を追い詰めただけある」
「どれだけ評判がよくても我々は騙されんぞ。アールグレーン公爵家の血を引くだけあって腹黒い女だ」
「我々も気を付けなければ、ノルデン公爵家のように、潰されるのではないか?」
「ふん。美しいへレーナ様がリアム様を奪うだろう」

 本人がいるのに言いたい放題である。
 アールグレーン公爵家に向けた敵意と嫌悪感を感じた。

「それにしても、アールグレーン公爵令嬢は地味なドレスね」

 へレーナはここぞとばかりに、私の印象を悪くして追い詰めようとしていた。
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