離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?

椿蛍

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第3章

25 僕を愛していましたか? ※ルーカス視点

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 ――リアムが生きて帰ってくるのか。
 
 闇の中、青い蝶が一羽、手から逃れていった。
 もたらされた報せは、満足いくものではなかったが、目的は達成された。

「魔力が多いだけでなく、運もいいとは……。神は不平等だな」

 母親が違う年の離れた弟のリアムは、昔から、すべてにおいて自分より恵まれていた。
 父上の愛情、魔力の強さ、高い知力――どれも敵わなかった。
 その上、運までいいときたら、最強だろう。
 父上が住まう部屋へ続く廊下を一人歩く。
 竜の飛来に備え、王宮内の兵士たちはほとんど外へ出払い、とても静かだった。
 部屋へ向かう途中で黒い影が現れる。

「ルーカス様」

 それは、夜色のドレスを着たサンダール公爵だった。
 
 ――こんな時でも着飾るのか。

 公爵の性別は男性だが、女性と同じ格好をし、長い黒髪を結い、魔石がついた髪飾りをつけている。
 趣味なのか、それとも他人から本当の自分を欺くためなのか、その理由を誰も知らない。

「急がねば、近衛騎士団が戻りますよ」
「わかっている」

 近衛騎士団は全員で王都の守りを固めている。 
 騎士団だけでなく、宮廷魔導師たちも各町に配置され、もしもの時に備えてた。
 勘のいいテオドールはラーシュの護衛で不在である。
 
 ――計画は完璧だったはずだ。

 リアムは竜との戦いで命を落とす予定だった。
 フォルシアン公爵のたくらみを知り、これを利用できると考えた。
 怒り狂った竜をリアムが殺せば、和解の機会は失われ、竜族との戦いが始まるはずだった。
 リアムであっても、竜族を滅ぼすことは不可能。

 ――戦争の原因となったリアムを罰し、宮廷魔術師長の地位を奪う予定だったのだが。

 唯一の誤算はサーラだ。
 毎回、彼女の動きがまったく読めない。
 今回もそうだ。
 セアンの報告では、竜の背中に乗って現れたとか。
 誇り高い竜が人間を背にのせることなどあり得ない。

 ――そもそも、どこで竜と知り合った? 竜の卵をどうやって見つけたんだ?

 普通の令嬢では、考えられないことをする。
 氷の中から目覚めた彼女は、やはり前の彼女とは違う。

 ――サーラ。君はいったい何者だ。

 宮廷魔道具師になって日も浅く、ようやく王宮図書館に入れるようになったサーラが竜語を話せるはずがない。
 とにかく、サーラについては謎だらけだ。
 
「ルーカス様。迷われているのかしら?」

 サーラについて考えていたせいで、足を止めてしまったらしい。

「迷う? 今さらだ」

 くだらないことを言ったサンダール公爵をにらみつけた。
 僕を王に選ばず、リアムだけを特別扱いし、大切にした父上。
 恨み越えた憎悪が、この胸にはある。
 
「油断は禁物でしょう。国王陛下は弱っているとはいえ、魔力量は維持されているでしょう。念のため、セアンの魔道具をお渡ししましょうか?」

 サンダール公爵の養子であるセアン。
 あいつの魔道具は強力で効果が高い。
 平民に生まれたが、僅かな魔力を持っていたからか、幼い頃から自分なりの魔道具を作っていた。
 サンダール公爵に魔道具師としての才能を見いだされ、サンダール公爵家の養子となった。
 リアムとともに天才と呼ばれているが、本人は天才と呼ばれることを拒んでいる。

 ――リアムが優秀過ぎるのだ。

 リアムとともにいると、自分の凡庸さを思い知らされる。
 セアンもまた、僕と同じような劣等感に悩んでいるのかもしれない。
 だが、セアンはリアムと双璧と言われる宮廷魔道具師長だ。
 もちろん、サンダール公爵の狙いはセアンを宮廷魔道具師長にさせることだった。
 セアンが宮廷魔道具師長になったことで、サンダール公爵は宮廷で起こる情報のすべてを手に入れることができるのだから――
 サンダール公爵が身分や血筋に関係なく、優秀な子供を養子に迎えるのは、宮廷魔術師や宮廷魔道具師を多く輩出し、自分の息がかかった人間で宮廷を支配するためだった。
 その計画はうまくいき、今や宮廷でサンダール公爵家が関わっていない部署はないのではないだろうか。

「サンダール公爵。お前はリアムの味方だと思っていた」
「まさか。わたくしはルーカス様の味方ですよ」

 本心であるかどうかわからないが、王になるためにはサンダール公爵を味方にしておかねばならない。
 信じないが、必要な存在である。
 今はあえて、その言葉に騙されてやるが、サンダール公爵も味方とは限らない。
 王家に取って代わろうという野心が、四大公爵家から常に見え隠れしているからだ。
 父上の部屋の前で足を止めた。
 扉にはヴィフレア王家の紋章が彫られている。

 ――王の部屋。いずれ、自分のものになると疑っていなかった頃が懐かしい。

 父上はリアムを国王に指名するつもりで準備している。
 僕のことよりリアム――父上、あなたはいつもそうだった。
 急な訪れに警戒されて逃げられることを恐れ、部屋のドアをノックせずに開けた。

「父上」

 横たわる父上の姿は痩せて細くなり、髪は白い。
 人前に出る時は衣服を整え、体を大きく見せていたが、実際はこうだ。
 もうじき尽きる命をなんとか引き延ばし、生きている弱い王。
 しぶとく生にしがみつき、国の行く末を死ぬまで心配している。

「ルーカス? こんな夜更けにどうした?」

 最近は眠っていることが多いという父上だが、ちょうど目が覚めていたらしい。
 薬の用意をしていた母上は、なにか不穏な空気を察したのか、僕を見て顔色を変えた。

「ルーカス。サンダール公爵。誰の許しを得てここへ入って来たのですか? 謁見の約束はなかったはずですよ」

 いつもの優しげな声ではなく、厳しい声が響く。

「父上にうかがいたい件があり、ここへ参りました」
「なんだ?」

 父上は体を起こし、青い瞳をこちらへ向ける。

「王位をリアムに譲られるのですか?」

 第一王子の僕ではなくリアムに。
 今までの慣例であれば、第一王子の僕が王のはずだった。

「そうだ。王位をリアムに譲る。ルーカスから民を守る気持ちを感じられなかった。もし、お前が民に寄りそう心を持っていたのであれば、王に選んでいただろう」

 ――それが僕を王に選ばなかった理由か。くだらない。なにが民だ。

 素直に父上の言葉を受け入れられないのは、自分の中に憎悪しかないからだ。
 
「僕が聞きたかった言葉は、そんな言葉ではないのですよ」
 
 父上に王位を譲ってもらおうなどと、もう思っていない。

「父上。あなたは僕を愛していましたか?」

 ただそれだけを聞きたかった。 
 
「もちろんだ。リアムと同じくらい大切な息子だ」
「リアム。リアムと、父上は何度もその名を口にする。それに気づいていましたか?」

 ゆっくりと足を進める。
 父上がファルクの献上した王錫を手にした。

 ――身の危険に気づいたか。

 背後のサンダール公爵はあがく父上を見て、くすりと小さく笑った。
 青ざめた母上の顔が痛々しい。

「母上。しばらく父上から離れていただけませんか?」
「ルーカス。国王陛下に対し、なにをするつもりでいるのですか?」
「ヴィフレア王家存続のため、生まれた時から、王家に人生のすべてをを捧げた父上。その重責から、僕が解放してあげますよ」

 身につけた魔道具が輝き、高位魔術を使う準備が整う。
 母上が止めようと、詠唱を必要としない風魔法を向けたが、それはサンダール公爵の風魔法に相殺された。
 父上より先に詠唱が終わる。

 ――魔術が成った。

「【ヒュドラ恨みの水蛇】よ。命を奪え」

ヒュドラ水蛇】――『それは怨恨。復讐のために毒を手に入れた。復讐が終わろうとも毒の苦しみは終わらない』

 毒蛇が出現し、床を這う。
 不死身の蛇であり、殺しても闇から次々現れる闇属性の高位魔術。
 セアンの魔道具がなければ、呼び出せなかっただろう。
 迫る蛇に対し、一歩遅れ、父上の細い腕が振り下ろされる。
 ドンッと王錫が床を叩く。

「【ユースティティア正義の天秤】!」

ユースティティア正義の天秤】――『それは信念。正しさを守るゆえに、大地を屍で埋める』

 大きな魔術を使用する前提ではなかった父上は、急遽、サーラの魔道具に取りつけられていた光の魔石を利用し、魔術を完成させた。

 ――また君が僕の邪魔をするのか。

 星をちりばめた女神の姿をした【ユースティティア正義の天秤】の出現と同時に、サーラの魔道具が割れ、嫌な音をたてて散らばった。
 毒の矢のごとく、襲いかかる蛇を【ユースティティア正義の天秤】が光の盾で、蛇から身を守る。

 ――高位魔術に耐えられる体ではない。気力だけで、父上は魔術を使っている。

「陛下っ……!」

 母上が魔術を使う前に、毒蛇が体に食らいつき、【ユースティティア正義の天秤】は消えた。
 手から離れた王錫を手にした母上が、必死に蛇を叩き、父上に覆い被さり、身をもって守る。

「ルーカス! 陛下を殺すというのであれば、先にわたくしを殺しなさい!」

 母上を殺すつもりはなく、【ヒュドラ水蛇】を還した。

「あらあら。ルーカス様。まだ息があるようですよ?」
「サンダール公爵。父上はもう虫の息だ。とどめをささずとも、ヒュドラの毒で長くは生きれまい」
「それもそうですね」

 サンダール公爵が納得するほど、父上の顔は白く、すでに死んでいるかのように見えた。

「陛下、陛下っ……! しっかりなさって……」

 痛ましいほどに母上は、父上にすがり、泣いていた。

「ルーカス! サンダール公爵! このような真似をしても王位は手に入りませんよ。宮廷魔術師が戻れば、お前たちを捕らえ、裁くでしょう!」
「王妃様。この真実を語るものがいれば、そうなるかもしれませんが、残念ながら、それは敵いませんわ」

 男性とは思えない妖艶な笑みを浮かべたサンダール公爵が、宝石箱を見せる。
 母上が誰か呼ぼうとした瞬間、宝石箱の蓋が開き、母上の声が消えた。

「……!」

 口だけが動き、言葉を発することができなかった。

「声を奪わせていただきました」

 サンダール公爵は宝石箱を閉じた。
 セアンの魔道具で魔術はサンダール公爵のもの。

「うちの子は優秀でしょう? 入ってこい」

 声が低くなり、男性の声に変わる。
 それと同時にサンダール公爵の息がかかった侍従と兵士、侍女が現れた。

「今後、王妃様の身の回りはサンダール家出身の者がお世話します。すべて、あなたの息子を国王にするためです。ご辛抱ください」

 母上は声が出なくなり、パニックになるかと思ったが、父上を守るようにして、そばを離れなかった。

「王妃様はお強い方。けれど、お一人で国王陛下を守るのは無理でしょう」

 サンダール公爵が微笑み、父上と母上に近づき、手を伸ばした瞬間――黒い霧が現れ、サンダール公爵を阻んだ。
 そして、サンダール公爵の手を黒い炎が焼く。

「ぐっ……!」

 魔術の黒い炎は皮膚を焼き、魔石を破壊した。
 水では消えない魔術の炎をサンダール公爵は、身につけていた魔石をすべて使って消した。
 身を守るため、強化していた魔石は一瞬ですべてが石に変わり、力を失う。
 
「公爵様! すぐに手当てを!」
「医師をお呼びして!」
 
 サンダール公爵を攻撃したのは人間ではなかった。
 長い黒髪、青い瞳、美しい女性――だが、それは死そのもの。
 現れたのは人ではないと、すぐにわかった。
 冷ややかな青い瞳がリアムに似ている。
 サンダール公爵の足を止め、近づけさせない。
 
「お前は……!」

 女性が誰なのか、サンダール公爵にはわかるらしい。
 彼女は痛みに耐える姿を嘲笑い、姿を消した。
 
 ――今のはリアムの母親か!

 一度見れば忘れられないほどの美女。
 生前の姿しか覚えていないが、強烈な性格の女性だった気がする。
 
「忌々しい魔女め。死んでもまだこの世に干渉するだけの力を残しているとは……!」
「サンダール公爵。あれは死んだリアムの母親か?」
「そうだ」

 男の口調と声に戻ったサンダール公爵は、さきほどまでの余裕を完全になくしていた。
 手が痛むらしく、額に汗を浮かべている。
 母上は女性が消えた場所を眺め、涙をぬぐい、強さを取り戻していた。
 険しい顔で僕を見つめ、口を動かす。

『お前は王にふさわしくありません』

 ――そんなことは、一番僕がわかってますよ。

 これは復讐だ。
 愛してくれなかった父上への復讐だった。
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