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第4章
10 サーラのお兄様!?(1)
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「やあ! はじめまして!」
――『はじめまして』はわかるんですが……誰?
嵐のように突然やってきた謎の人物。
美しい刺繍の上着、趣味のいいアクセサリー、バニラのような甘い香りの香水をつけている。
とてもおしゃれな男性だ。
――ええっと……。さっき、侍従が私に言っていたのはなんだった?
つい先ほどまで、侍従と会話していたはずが、突然の訪問者によって中断されてしまった。
『国王代行命令でございます。さあ、サーラ妃。王宮へ参りましょう!』だったはず。
得意顔の侍従が、私にそう言った瞬間、店の扉がバーンと開いて訪問者がやってきたのだ。
その訪問者の顔を見るなり、侍従は『ひっ!』と悲鳴を上げ、横に飛び退いた。
カエルみたいに侍従が数センチ飛び上がったのを目にした。
「驚いちゃったかな? サーラ、君のお兄様だよ!」
「驚いたのは侍従です」
こんな面倒な時に現れたのは、サーラの兄を自称する男性だった。
――サーラの兄なら、はじめましてではないはずなんだけど。
目の前の『自称サーラの兄』は人懐っこい笑みを浮かべ、友好的に見える。
サーラに対して、刺々しい態度をとっていた両親とは、似ても似つかない雰囲気だ。
もしや、これは不届きにも私を騙し、からかおうしている貴族男性という可能性がある。
――結論。目の前の男性は詐欺師。
「兄を騙る詐欺師ですね。フラン、追い出してもらってもいいですか?」
「あ、うん」
フランがバタンと店の扉を閉めた。
両親を見たことがあるフランも私と同じ結論に至ったようだ。
あんなスナック菓子より軽そうな人が、サーラの兄なわけがない。
うんうんと私がうなずいていると、侍従が店の扉を指さして、酸欠の金魚みたいにパクパク口を動かしていた。
「おい、サーラ……」
「あ、あの……」
リアムとラーシュまでなにか言いたそうにしていた。
「サーラ様! 今のは正真正銘、アールグレーン公爵家嫡男ユディン様ですぞ!」
さっきまで『王宮へゴー』を繰り返していた侍従が、店のドアを指さした。
「はあ、ユディン……?」
「サーラ。お前の兄の名だ」
リアムが教えてくれなかったら、わからなかったと思う。
なぜなら、どこの人かわからないくらいサーラの兄について記憶がなかった。
固まっていた侍従がハッと我に返り、店の出入り口まで走っていって、サッと扉を開けた。
「ユディン様っ! お久しぶりでございます!」
「君はルーカスのところの侍従だね。さすが気が利くね。冷たい妹とは大違いだよ~」
「さようでございます。ユディン様の記憶にとどめていただき、恐縮でございます」
侍従は今にも平伏する勢いで、ユディンにペコペコしていた。
よく見ると、彼はサーラと同じ亜麻色の髪と青い目をしている。
どうやら、本当に兄らしい……?
「兄と妹、感動の対面だったのに追い出すなんて、ひどいなぁ」
「感動のご対面ですか? 【魔力なし】の妹を馬鹿にして、一度も顔も合わせたことのない兄と?」
私の反応が思っていたのと違っていたらしく、微妙な顔をされた。
「君、本当に妹のサーラ? そんなはっきり自分の思っていることを言えたっけ?」
「私は十年間、氷の中に閉じ込められていました。一度死んだようなもの……。そんな経験をして私は生まれ変わったんです」
最近の私は、自分に女優の才能がないと認め、サーラにキャラを寄せるのを諦めた。
氷の中に閉じ込められたせいにするほうが、相手に納得してもらえると気づいた。
「うーん……。そんなものなのかな?」
ユディンは納得していないようだったけれど、私の狙い通り、それ以上なにも追及されずに済んだ。
そもそも、両親や兄と関わることがなかったサーラは、いつも一人ぼっちだった記憶しかない。
家族とは屋敷も別で、王立魔術学院では寮に入っていたこともあり、生活をほとんど共にしていなかった両親と兄。
それこそ、ユディンが『はじめまして』と挨拶するくらい面識がなかった。
両親も兄も、サーラがルーカス様の妃に決まるまで、存在すら忘れていたんじゃないかと思うほどだ。
リアムは突然現れたサーラの兄、ユディンを警戒し、にらみつけた。
「ユディン。なんの用だ?」
「あっ! リアム様! いや~、やっぱり怖いな。ルーカスは……ルーカス様はまだ可愛いところがあるんだけどなぁ~」
――えぇ? 今、さらっとルーカス様を呼び捨てにしましたよね。
でも、リアムは年上のユディンを呼び捨てにしたあげく、『下手に動けば、殺すぞ』くらいの殺伐としたオーラを放っている。
社交性が高そうなユディンすら、寄せつけないリアム。
ダイヤモンド級の心の壁は伊達じゃない。
そして、ユディンはリアムのことを尊敬しているらしく、私たちに対する態度に比べ、丁寧だ。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
戦略会議中だったテーブルには、お茶とお菓子が並べられている。
ユディンはそのテーブルを一瞥しただけで、その場から一歩も動かなかった。
思えば、サーラの両親が来た時は、椅子に座るのも嫌がった。
今は家も家具も【修復】して、とても綺麗だから、それほど抵抗がないはずだけど、ユディンが椅子に座る様子はない。
「紅茶です。よかったら……」
フランがテーブルにお茶を置くと、ユディンはあからさまに嫌そうな顔をした。
その顔を見て、フランがハッとして自分の耳を触った。
「あ、えっと……」
獣人が運んだお茶を飲みたくないのだとフランは思ったようだ。
私がなにか言う前に、先にリアムが言った。
「フラン。気にしなくていい。ユディンは誰であっても近づいてほしくない。変態的なまでの潔癖だ。腕一本分ほどの距離をとってやれば落ち着く」
「落ち着くって、狂犬か魔物の類ですか?」
「似たようなものだ」
よく見ると、ユディンは白い手袋をはめているし、肌を露出しないよう首元までボタンを留めている。
「う、うん。腕一本も?」
フランはユディンから距離をとった。
「リアム様。変態とはちょっと違いますよ? 俺はただ人に触られるのが嫌なだけで、極度の潔癖ってわけでは……」
フランが淹れたお茶をリアムが代わりに一口飲む。
それをユディンが信じられないという顔で見た。
「なっ……! 獣人が毒を盛っていたら、リアム様は死んでいますよ!?」
「フランが俺を殺したいと思う理由がない」
どうやらお茶を飲まなかったのは、獣人から毒殺されると思ったからで、潔癖性とは関係ないようだ。
「ユディンさんは獣人から、毒殺されるかもしれないようなことをしたんですね」
「ユディンさん? ユディンお兄ちゃん、ユディンお兄様って呼んでくれたら嬉しいな! 獣人国とアールグレーン公爵領は近いからね。いろいろあるよね?」
にこやかな口調で言われたけれど、その目はリアムを警戒し、フランとラーシュを蔑み、侍従を馬鹿にしていた。
同じような目と態度を何度も私は見てきたからわかる。
――人懐っこいフリで誤魔化しているけど、他の貴族たちと同じ。妹と呼んでいるけど、心から言ってるわけじゃない。
「ユディンさん。私の店へやってきた目的はなんですか?」
「お兄様だよ。サーラ?」
――うわ、めんどくさい。
急に身内ぶったユディンの目的――それは言われなくてもわかっている。
ルーカス様の侍従と同じで、『王宮へ戻れ』と言うためにここへ来た。
そして、『ルーカス様の妃になれ』と続けて命じるはずだ。
「ユディンお兄様。いったいなんのご用事ですか?」
「お兄様の響きがいいねぇ。俺はね~、妹に会いに来たんだ!」
「嘘ですね」
「嘘じゃないよ。その証拠にアールグレーン公爵領へ君を招待してあげようと思ってるんだ」
王都から東にあるアールグレーン公爵領。
ヴィフレア王国の東側にある土地は、肥沃な大地が広がり、気候も穏やかだという。
さらに南東へ進むと獣人国がある。
フランの話では、獣人国に入ると、険しい山道が続き、岩と石ころばかりの荒れ地なのだとか。
ユディンの話を聞いた侍従が、申し訳なさそうに言った。
「ユディン様。実はルーカス様からサーラ様を王宮へ戻すように命じられておりまして……」
「それなら大丈夫だよ。ルーカス様は俺にいいよって言ってたからね」
「へ!? ルーカス様がよろしいとおっしゃったのですか?」
ルーカス様は侍従に、私を戻せときつく命じたらしく、きょとんとした顔をしていた。
「兄上が理由もなく、サーラをアールグレーン公爵領へ向かわせるとは思えない。どんな手を使った?」
「誠心誠意を込めて、ルーカス様にお願いしただけだよ」
「なるほど。答える気がないか」
「いやいや!? 今、答えたよね? 誠心誠意って言ったよ!?」
リアムがブレスレットに触れると、魔石が一斉に輝きを放った。
問答無用のリアムに、ユディンはあわてふためいた。
「ま、待った! 待ってください! 俺が公爵になるためには、妹の承認が必要だからですよっ!」
――『はじめまして』はわかるんですが……誰?
嵐のように突然やってきた謎の人物。
美しい刺繍の上着、趣味のいいアクセサリー、バニラのような甘い香りの香水をつけている。
とてもおしゃれな男性だ。
――ええっと……。さっき、侍従が私に言っていたのはなんだった?
つい先ほどまで、侍従と会話していたはずが、突然の訪問者によって中断されてしまった。
『国王代行命令でございます。さあ、サーラ妃。王宮へ参りましょう!』だったはず。
得意顔の侍従が、私にそう言った瞬間、店の扉がバーンと開いて訪問者がやってきたのだ。
その訪問者の顔を見るなり、侍従は『ひっ!』と悲鳴を上げ、横に飛び退いた。
カエルみたいに侍従が数センチ飛び上がったのを目にした。
「驚いちゃったかな? サーラ、君のお兄様だよ!」
「驚いたのは侍従です」
こんな面倒な時に現れたのは、サーラの兄を自称する男性だった。
――サーラの兄なら、はじめましてではないはずなんだけど。
目の前の『自称サーラの兄』は人懐っこい笑みを浮かべ、友好的に見える。
サーラに対して、刺々しい態度をとっていた両親とは、似ても似つかない雰囲気だ。
もしや、これは不届きにも私を騙し、からかおうしている貴族男性という可能性がある。
――結論。目の前の男性は詐欺師。
「兄を騙る詐欺師ですね。フラン、追い出してもらってもいいですか?」
「あ、うん」
フランがバタンと店の扉を閉めた。
両親を見たことがあるフランも私と同じ結論に至ったようだ。
あんなスナック菓子より軽そうな人が、サーラの兄なわけがない。
うんうんと私がうなずいていると、侍従が店の扉を指さして、酸欠の金魚みたいにパクパク口を動かしていた。
「おい、サーラ……」
「あ、あの……」
リアムとラーシュまでなにか言いたそうにしていた。
「サーラ様! 今のは正真正銘、アールグレーン公爵家嫡男ユディン様ですぞ!」
さっきまで『王宮へゴー』を繰り返していた侍従が、店のドアを指さした。
「はあ、ユディン……?」
「サーラ。お前の兄の名だ」
リアムが教えてくれなかったら、わからなかったと思う。
なぜなら、どこの人かわからないくらいサーラの兄について記憶がなかった。
固まっていた侍従がハッと我に返り、店の出入り口まで走っていって、サッと扉を開けた。
「ユディン様っ! お久しぶりでございます!」
「君はルーカスのところの侍従だね。さすが気が利くね。冷たい妹とは大違いだよ~」
「さようでございます。ユディン様の記憶にとどめていただき、恐縮でございます」
侍従は今にも平伏する勢いで、ユディンにペコペコしていた。
よく見ると、彼はサーラと同じ亜麻色の髪と青い目をしている。
どうやら、本当に兄らしい……?
「兄と妹、感動の対面だったのに追い出すなんて、ひどいなぁ」
「感動のご対面ですか? 【魔力なし】の妹を馬鹿にして、一度も顔も合わせたことのない兄と?」
私の反応が思っていたのと違っていたらしく、微妙な顔をされた。
「君、本当に妹のサーラ? そんなはっきり自分の思っていることを言えたっけ?」
「私は十年間、氷の中に閉じ込められていました。一度死んだようなもの……。そんな経験をして私は生まれ変わったんです」
最近の私は、自分に女優の才能がないと認め、サーラにキャラを寄せるのを諦めた。
氷の中に閉じ込められたせいにするほうが、相手に納得してもらえると気づいた。
「うーん……。そんなものなのかな?」
ユディンは納得していないようだったけれど、私の狙い通り、それ以上なにも追及されずに済んだ。
そもそも、両親や兄と関わることがなかったサーラは、いつも一人ぼっちだった記憶しかない。
家族とは屋敷も別で、王立魔術学院では寮に入っていたこともあり、生活をほとんど共にしていなかった両親と兄。
それこそ、ユディンが『はじめまして』と挨拶するくらい面識がなかった。
両親も兄も、サーラがルーカス様の妃に決まるまで、存在すら忘れていたんじゃないかと思うほどだ。
リアムは突然現れたサーラの兄、ユディンを警戒し、にらみつけた。
「ユディン。なんの用だ?」
「あっ! リアム様! いや~、やっぱり怖いな。ルーカスは……ルーカス様はまだ可愛いところがあるんだけどなぁ~」
――えぇ? 今、さらっとルーカス様を呼び捨てにしましたよね。
でも、リアムは年上のユディンを呼び捨てにしたあげく、『下手に動けば、殺すぞ』くらいの殺伐としたオーラを放っている。
社交性が高そうなユディンすら、寄せつけないリアム。
ダイヤモンド級の心の壁は伊達じゃない。
そして、ユディンはリアムのことを尊敬しているらしく、私たちに対する態度に比べ、丁寧だ。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
戦略会議中だったテーブルには、お茶とお菓子が並べられている。
ユディンはそのテーブルを一瞥しただけで、その場から一歩も動かなかった。
思えば、サーラの両親が来た時は、椅子に座るのも嫌がった。
今は家も家具も【修復】して、とても綺麗だから、それほど抵抗がないはずだけど、ユディンが椅子に座る様子はない。
「紅茶です。よかったら……」
フランがテーブルにお茶を置くと、ユディンはあからさまに嫌そうな顔をした。
その顔を見て、フランがハッとして自分の耳を触った。
「あ、えっと……」
獣人が運んだお茶を飲みたくないのだとフランは思ったようだ。
私がなにか言う前に、先にリアムが言った。
「フラン。気にしなくていい。ユディンは誰であっても近づいてほしくない。変態的なまでの潔癖だ。腕一本分ほどの距離をとってやれば落ち着く」
「落ち着くって、狂犬か魔物の類ですか?」
「似たようなものだ」
よく見ると、ユディンは白い手袋をはめているし、肌を露出しないよう首元までボタンを留めている。
「う、うん。腕一本も?」
フランはユディンから距離をとった。
「リアム様。変態とはちょっと違いますよ? 俺はただ人に触られるのが嫌なだけで、極度の潔癖ってわけでは……」
フランが淹れたお茶をリアムが代わりに一口飲む。
それをユディンが信じられないという顔で見た。
「なっ……! 獣人が毒を盛っていたら、リアム様は死んでいますよ!?」
「フランが俺を殺したいと思う理由がない」
どうやらお茶を飲まなかったのは、獣人から毒殺されると思ったからで、潔癖性とは関係ないようだ。
「ユディンさんは獣人から、毒殺されるかもしれないようなことをしたんですね」
「ユディンさん? ユディンお兄ちゃん、ユディンお兄様って呼んでくれたら嬉しいな! 獣人国とアールグレーン公爵領は近いからね。いろいろあるよね?」
にこやかな口調で言われたけれど、その目はリアムを警戒し、フランとラーシュを蔑み、侍従を馬鹿にしていた。
同じような目と態度を何度も私は見てきたからわかる。
――人懐っこいフリで誤魔化しているけど、他の貴族たちと同じ。妹と呼んでいるけど、心から言ってるわけじゃない。
「ユディンさん。私の店へやってきた目的はなんですか?」
「お兄様だよ。サーラ?」
――うわ、めんどくさい。
急に身内ぶったユディンの目的――それは言われなくてもわかっている。
ルーカス様の侍従と同じで、『王宮へ戻れ』と言うためにここへ来た。
そして、『ルーカス様の妃になれ』と続けて命じるはずだ。
「ユディンお兄様。いったいなんのご用事ですか?」
「お兄様の響きがいいねぇ。俺はね~、妹に会いに来たんだ!」
「嘘ですね」
「嘘じゃないよ。その証拠にアールグレーン公爵領へ君を招待してあげようと思ってるんだ」
王都から東にあるアールグレーン公爵領。
ヴィフレア王国の東側にある土地は、肥沃な大地が広がり、気候も穏やかだという。
さらに南東へ進むと獣人国がある。
フランの話では、獣人国に入ると、険しい山道が続き、岩と石ころばかりの荒れ地なのだとか。
ユディンの話を聞いた侍従が、申し訳なさそうに言った。
「ユディン様。実はルーカス様からサーラ様を王宮へ戻すように命じられておりまして……」
「それなら大丈夫だよ。ルーカス様は俺にいいよって言ってたからね」
「へ!? ルーカス様がよろしいとおっしゃったのですか?」
ルーカス様は侍従に、私を戻せときつく命じたらしく、きょとんとした顔をしていた。
「兄上が理由もなく、サーラをアールグレーン公爵領へ向かわせるとは思えない。どんな手を使った?」
「誠心誠意を込めて、ルーカス様にお願いしただけだよ」
「なるほど。答える気がないか」
「いやいや!? 今、答えたよね? 誠心誠意って言ったよ!?」
リアムがブレスレットに触れると、魔石が一斉に輝きを放った。
問答無用のリアムに、ユディンはあわてふためいた。
「ま、待った! 待ってください! 俺が公爵になるためには、妹の承認が必要だからですよっ!」
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