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4章 二つの指輪
46.アラン様の不在とお城からの手紙
しおりを挟む「気をつけて行ってきて下さいね。アランさ……、アラン」
「ああ。できるだけ早く帰ってくる」
アラン様……、アランはそう言って僕の頬にキスをして出かけて行ってしまった。
僕は迎えにきた馬車に乗って、アランのお屋敷に帰った。……自分の家じゃないのに、帰るというのは変だけれど。
「寂しい」
馬車の中で呟いた。
昨日はあんなに近くに、アランさ……アランがいたのに。
そういえば、僕は昨日の夜。勇気を出してアラン様の部屋に行って一緒にいたいとお願いした。
アラン様は嫌な顔をせずに僕と一緒にいてくれたけれど……。
何か、したかもしれない。
『俺にあんな事を』ってどんなことをしたの!?
僕は頭を抱えて一人、真っ赤になっていた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま帰りました」
お屋敷で働く皆さんに『お帰りなさいませ』と言われて返事をした。
アラン様は隣国に行ってしまった。やっぱり寂しい。
「ルカ様、喉が乾いてませんか? お茶をお持ちしますね」
「ありがとう御座います」
ネネさんが、僕が寂しがっているのに気がついて話しかけてくれた。
「アラン様があのコテージに、人を連れて行くのは初めてでしたのよ」
ネネさんがアラン様の事を教えてくれてた。人を連れて行くのは初めて?
「いつも急に一人で行ってました。きっと何かあって一人になりたいときに、あのコテージに行っていたのでしょう」
アラン様が……。
「ルカ様と一緒に行かれたのは、よほどルカ様にお気を許していられるかと思います」
「そうかな? そうだと嬉しいな」
ネネさんはニコニコと笑っている。僕もネネさんに微笑んだ。
「ゆっくりなさって下さいね。ルカ様」
お菓子とお茶をテーブルに置いてくれた。お菓子はアラン様が作ったものかな?
猫の形のクッキー。僕の大好きなアラン様が作ったお菓子を食べる。
「美味しい……」
……やっぱりアラン様と一緒に食べたい。
ガヤガヤと話し声がして、メイドさんがパタパタと早足で動いている音が聞こえてきた。珍しい。
ゆっくりお菓子とお茶を堪能していたら、なんだか騒がしくなった。
「何だろ?」
コクンとお茶を飲んだ。
「ちょっと見てきますね」
ネネさんが様子を見に行った。
「ルカ様、失礼します。ニール様がいらっしゃいました。ルカ様に至急、お話があるそうです」
「え?」
ネネさんが戻ってきた。ニールさんが? 今日会う約束はしてなかったよね? 僕に至急のお話?
「……どうぞ」
……まさか、アラン様に何かあったことなんてないよね?
「失礼します。お帰りになられたばかりで、申し訳ない」
いつも髪をキチンとしている、ニールさんの前髪が乱れている。急いでこのお屋敷にきた?
扉を開けて、まっすぐ僕が座っているソファの横に来た。
「ニールさん。アラン様に何か……?」
僕は震えそうになりながら、ニールさんに話しかけた。
「あ、いえ! アラン様は予定通りに。あの方は強いですから、心配ありません」
ニールさんが、心配ないとはっきり言ってくれたのでホッと安心した。
「では何でしょうか? 僕に話があるとは」
アラン様ではなく、僕に。
「ですよね。単刀直入に言います」
ニールさんは持ってきたカバンから、大事そうに豪華な封筒を取り出した。
「えっ……? その封筒はまさか」
封蝋されたその封筒には、王家の紋章が押されていた。
「この場で読んで返事を聞いてくるように、と」
クールなニールさんが焦ったように言ったので、冗談ではないとさらに真っ青になった。
アラン様にお世話になっているとはいえ、僕は何も地位もないただの平民だ。
その平民がなぜ、王家から……。
「……」
封筒をあけて手紙を読む。ニールさんは内容を知っているようだ。
「アラン様が不在ですが、お返事はルカ様がなさって下さい」
内容を簡単に言うと、王様が僕に会って話をしたいからお城に来てくれ……という意味の手紙だった。
行かないなんて、そんな逆らう事なんて出来ない。これは王命だ。
「拝謁……光栄です。すぐに登城いたします」
カタカタ……と震えながら、ニールさんに伝えた。
「一緒に行きましょう。ルカ君、持っています」
僕はネネさんの方を見ると、力強く頷いてくれた。王様に拝謁するための支度は、ネネさんにまかせる。
「はい」
――正直、怖い。なぜ平民の僕に? 心当たりは全然ない。しいて言えばアラン様とのつながり、英雄騎士のアラン様との関係は、何かと問われること。
いつかアラン様とはどういう関係か? と聞かれる日が来るだろうと思っていた。
英雄騎士とただの平民。側にいれば、目立つ。
「ルカ様、こちらへ」
ネネさんに呼ばれてついていく。
ニールさんが頷いた。とにかく時間がないので、ネネさんに任せるしかない。
「ルカ様のお洋服や靴などそろえてましたので、お支度は大丈夫ですよ」と、言ってネネさんは僕の支度をしてくれた。
「ああ、いいね! そうやって正装すると、もともと品が良いから似合うよ」
ニールさんがそう言ってくれたので安心とした。
急いでニールさんとお城に向かった。
「失礼いたします」
重くて立派で大きな扉を、近衛兵さんが開く。
お城についてすぐに拝謁するなんて、よほど急ぎの用事なのだろうか?
アラン様がいないのが不安だ。
ズラリと並んだ臣下の人達と大勢の貴族達。
何が行われるか、皆も知らないらしい。僕とニールさんが中に入ってきたら、ヒソヒソと話しあっていて僕の見定めをしているようだ。
そんな中を進んでいく。
玉座に座っている王の前で、ひざまついた。
声をかけられるまで黙っている。
「頭を上げろ。急の呼び出し、驚いただろう」
王の声は威厳があり、誰もがひれ伏すような迫力があった。頭を下げたまま、隣のニールさんに目線を向けると頷いた。
僕はニールさんにならい、頭を上げた。
あっ……!
いけない。声を出すところだった。言葉を飲み込み失礼のないようにする。
玉座に座っている王の隣に、植物園で会ったトラの獣人さんが、座ってこちらを見ていた。
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