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その後 二人の物語
51.英雄騎士 アランのお菓子&喫茶店【猫の舌】
しおりを挟む「俺の作ったお菓子をルカのお店に置く、だと?」
色々なことがひと段落したので、アランに作ったお菓子をお店に置く話をしてみた。
「アラン様の作るお菓子は栄養たっぷりなので、子供達に食べさせたいと言う人からお手紙をいただいたり……してます」
孤児院でかつてアラン様の差し入れで食べた子供が、大きくなってまた食べたいとお手紙を寄越してくれたみたいだ。
「そのほかもお屋敷で働く者からも、嘆願書があがっています」
僕からアラン様へお伝えくださいと言われている。
「もちろん負担にならないようにと、思っています」
「……」
アラン様は嫌というよりは、戸惑っている感じだ。
「そんなに……俺が作ったお菓子を?」
「はい。ぜひに、と」
アラン様はソファに座ったまま手のひらで顔を覆い、考え込んでしまった。
……え、そんなに難しく考えてしまった?
「あの……大変だったり、僕のお店に置くのが嫌ならば……」
「いや! ルカのお店に置くのは大賛成だ!」
え? そうなんだ。それならなぜ?
僕はアラン様の返事を待った。
「まさかそんなに、俺の作ったお菓子が好評なんて知らなかった。騎士団の者達は辛党ばかりで、見向きもしなかったのだ」
そうだったのですね……。あんなに美味しいのに気の毒です。
「えっ、では……」
お店に置くのは……。
「子供達が喜んでくれるならば」
キリリとした顔で言ったアラン様は、カッコよかった。怖がられているのが信じられない……。
「そうだ。アラン様、たまにお店に顔を出して ”私が作りました” と宣伝して下さいね」
そうすればアラン様の誤解も解ける。
「それは無理だ」
眉間に皺を寄せて怖い顔になった。ええ……? そんなぁ。
アラン様、好感度アップ作戦なのに!
「……一緒に、アラン様とお店をやりたいな」
そうすればもっと一緒に居られるのに。がっかりして、シュンと下を向いた。
「あっ、そ、そうだな。一緒にお店をやれるか! やろう、ルカ」
「はいっ!」
良かった。一緒にお店をやれる。
「あと……。ルカ」
「はい? 何でしょう?」
アラン様が少し困ったように話しかけてきた。
「まだ時々、アラン様と言っている」
「あっ……!」
なかなか直らないクセ。
「伴侶を様と呼ぶのは、いけない」
イチゴのマシュマロを口に入れられた。
「むぐっ! もぐもぐ。美味しい……。はい、ごめんなさい」
無意識にアラン様、と言ってしまう。なかなか直せないな。
「お店の事、ありがとう御座います。詳しくは後ほど説明しますね
「ああ」
お店を改装して、それから色々……。忙しくなるけど楽しみだ。
「お店の、改装などの手続きや手配は任せてくれ」
頼りがいがあっていいなあ、アラン様。……と、アラン。
「はい。お願いします」
それからしばらくして……。
隣の空き家を買い取って、中を繋げて行き来出来るように改築した。
「出来た!」
もとの加護付きのアクセサリー屋は、ほぼ前のまま。プライベートの場所だった壊れたキッチンやリビング、割れた窓ガラスや壁、その他の方を直した。
そして買い取った隣の空き家を改装して、アランの作ったお菓子屋さんと、お菓子とお茶を飲める喫茶店を作った!
成長して、孤児院から出なくてはいけない働き口がない子供達を引き取り働いてもらって、適性のある職業を紹介したり、まだまだ獣人に厳しい世界なので、獣人さんを雇ったりした。
従業員は六人。人間三人に、獣人も三人。
開店したら慣れるまで、持ち帰りのお菓子を中心に始めてから、喫茶店は少人数のお客さんでやって行くつもり。
「アラン。オープニングは店長として、お店に立ってね!」
「は? ルカ、今なんと?」
お店の名前は、僕のお店は【猫の目】。いつでも見守ってますよ……というもう一つの意味もあった。
アランのお菓子と喫茶店の名前は【猫の舌】。
英雄騎士 アランのお菓子&喫茶店【猫の舌】だ。
ただし、猫に人間のお菓子を食べさせてはいけません! と注意書きがある。
猫のワンポイントの刺繍がされたエプロン。
お菓子屋さんの、従業員のおそろいのエプロンだ。可愛い。
「……俺がこのエプロンをつけて、お店に立っていて大丈夫だろうか?」
珍しくアランが緊張した顔をしていた。
「大丈夫ですよ! 今日と明日、オープニングだけですから! そのあとは一週間に一日くらい、お店に来てもらうだけですから!」
僕はアランに言った。
「ああ。あと、リヴァイにたのんで屋敷のルカの部屋とお店の寝室に、移動の魔法陣を結んでもらったから」
移動の、魔法陣?
「それってもしかして、王族しか使えないはずの移動の魔法陣……ではないですか? アラン」
僕は指をギュッと握って、手のひらが冷たくなっていった。
「そうだが? だめだったか?」
いや、便利ですけれど。
「……よくリヴァイさんが許しましたよね」
「ああ。少しでも恩を返したいと言って、快く魔法陣を結んでくれたぞ」
僕は、すごい人達に囲まれているかもしれない。
「ありがとう御座います」
便利だから、いいか。あとでリヴァイさんにお礼をしよう。
「さあ! アラン、従業員の皆さん! オープニングです。笑顔でお客さんをむかえましょう!」
「はいっ!」
僕とアランは、新しいお店を始めた。
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