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第6回『よくばり 愛くるしい 古い』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第6回『よくばり 愛くるしい 古い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間12分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=ljjOW42iOSc
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
私の父の趣味は古いおもちゃの収集だった。
その中でも特にゼンマイ仕掛けによるものを熱心に集めていた。
ゼンマイを回すと走り出す車、歩きだすロボット、はたまた少年がラッパを吹き始めるものなどいろいろなおもちゃがあった。
20年以上も続いてきたその趣味はとうとう部屋一つを占領してしまい、ただでさえ狭いうちをさらに狭くした。
休日になればそれらを眺めていたり、あるいは慎重にゼンマイを回して動く様をにんまりと眺めている父に私と母はあきれていた。
そんな私も結婚し男の子を出産した。
初めての孫だったので、父も母もとてもかわいいいらしく頻繁に顔を見にうちに来た。
私は母が家事などを手伝ってくれるのでけっこう助かっていたが、夫は義理の両親が来るので口にこそ出さないものの精神的には疲れることもあっただろう。
「今度の週末この子を連れて実家に帰るわ。」
夕食を終えてテレビを見ていた夫は少し考え事をした。
「うーん、でも大丈夫? お義父さんおもちゃをたくさん持ってるでしょ? もし目を離した隙に壊しちゃったら……。」
夫がこんなことまで心配していたことに私は驚いた。
今まで知らぬ間にこんなに気を遣わせていたのかと少し反省してしまった。
「大丈夫よ。むしろ壊してくれた方が私もお母さんも嬉しいし。」
夫は少し笑った。
予定通り週末に実家に帰ると両親は喜んだ。
二人が孫をあやしていると、ふと父が、
「そうだ、この子に俺のおもちゃを見せてやろう。」
と言って、おもちゃを並べている部屋に連れていった。
「まだ赤ちゃんなんだからそんなのわかんないよ。」
私の静止も聞かず、父は部屋の扉を開けた。
整然と並べられたおもちゃを前にしても当然子どもは無反応だった。
「うーん、まだこういうのに興味を持つには早いか。」
父は残念そうに言った。
「一生持たないよ。私たちだって興味ないんだから。」
私がにべもないことを言うと、「はいおしまいにしましょ」と言って今度は母が子どもを抱きかかえた。
手持無沙汰になった父は棚から玉に乗ったピエロの人形を取り、ゼンマイを巻いてテーブルに置いた。
キュイインという音ともにピエロの足が前後に動き、玉の四隅にある小さなタイヤが回り、ピエロが玉乗りをしながら進みだした。
父はこれで孫が興味を持ってくれるかもしれないと思ったのだろう。
だが母に抱きかかえられている私の子どもは見向きもしていなかった。
私と母はあははと笑った。
父は頭をかいていた。
夜このことを夫に話した。
すると夫は、
「お義父さんにとってはおもちゃは我が子同然だからね。孫にも好きになってほしいんでしょ。この子がもうちょっと大きくなれば興味を持ってくれるよ。」
と言って父をフォローした。
夫の我が子同然という言葉を聞いたとき、幼いころから何度も見てきた光景がフラッシュバックした。
父はゼンマイを回したときはいつも自分に向って移動するように置いていた。
今日のピエロもかたかたとぎこちない動きをしつつも私たちに向って来ていた。
私はやがてこの子が成長しハイハイをするようになったときのことを想像した。
私と夫が手を叩くと、この子は笑いながら音のする私たちに向って床をずりずりと這ってくるだろう。
こんなありがちな未来予想図をちょっと思い描いただけで私の胸はいっぱいになった。
父もおもちゃに対してこんな思いだったのかもしれない。
だとしたら古く汚いあのおもちゃ一つ一つが父にとっては愛くるしいものだったのだろう。
私の考えていることを察したのか夫は優しくほほえみかけた。
「でも君までお義父さんみたいによくばりになってたくさん欲しがらないでね。」
急に言われて何のことかわからなかった私を見て夫はベッドで寝ている子どもに顔を向けた。
「今はこの子を一生懸命育てようよ。」
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第6回『よくばり 愛くるしい 古い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間12分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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~・~・~・~・~
私の父の趣味は古いおもちゃの収集だった。
その中でも特にゼンマイ仕掛けによるものを熱心に集めていた。
ゼンマイを回すと走り出す車、歩きだすロボット、はたまた少年がラッパを吹き始めるものなどいろいろなおもちゃがあった。
20年以上も続いてきたその趣味はとうとう部屋一つを占領してしまい、ただでさえ狭いうちをさらに狭くした。
休日になればそれらを眺めていたり、あるいは慎重にゼンマイを回して動く様をにんまりと眺めている父に私と母はあきれていた。
そんな私も結婚し男の子を出産した。
初めての孫だったので、父も母もとてもかわいいいらしく頻繁に顔を見にうちに来た。
私は母が家事などを手伝ってくれるのでけっこう助かっていたが、夫は義理の両親が来るので口にこそ出さないものの精神的には疲れることもあっただろう。
「今度の週末この子を連れて実家に帰るわ。」
夕食を終えてテレビを見ていた夫は少し考え事をした。
「うーん、でも大丈夫? お義父さんおもちゃをたくさん持ってるでしょ? もし目を離した隙に壊しちゃったら……。」
夫がこんなことまで心配していたことに私は驚いた。
今まで知らぬ間にこんなに気を遣わせていたのかと少し反省してしまった。
「大丈夫よ。むしろ壊してくれた方が私もお母さんも嬉しいし。」
夫は少し笑った。
予定通り週末に実家に帰ると両親は喜んだ。
二人が孫をあやしていると、ふと父が、
「そうだ、この子に俺のおもちゃを見せてやろう。」
と言って、おもちゃを並べている部屋に連れていった。
「まだ赤ちゃんなんだからそんなのわかんないよ。」
私の静止も聞かず、父は部屋の扉を開けた。
整然と並べられたおもちゃを前にしても当然子どもは無反応だった。
「うーん、まだこういうのに興味を持つには早いか。」
父は残念そうに言った。
「一生持たないよ。私たちだって興味ないんだから。」
私がにべもないことを言うと、「はいおしまいにしましょ」と言って今度は母が子どもを抱きかかえた。
手持無沙汰になった父は棚から玉に乗ったピエロの人形を取り、ゼンマイを巻いてテーブルに置いた。
キュイインという音ともにピエロの足が前後に動き、玉の四隅にある小さなタイヤが回り、ピエロが玉乗りをしながら進みだした。
父はこれで孫が興味を持ってくれるかもしれないと思ったのだろう。
だが母に抱きかかえられている私の子どもは見向きもしていなかった。
私と母はあははと笑った。
父は頭をかいていた。
夜このことを夫に話した。
すると夫は、
「お義父さんにとってはおもちゃは我が子同然だからね。孫にも好きになってほしいんでしょ。この子がもうちょっと大きくなれば興味を持ってくれるよ。」
と言って父をフォローした。
夫の我が子同然という言葉を聞いたとき、幼いころから何度も見てきた光景がフラッシュバックした。
父はゼンマイを回したときはいつも自分に向って移動するように置いていた。
今日のピエロもかたかたとぎこちない動きをしつつも私たちに向って来ていた。
私はやがてこの子が成長しハイハイをするようになったときのことを想像した。
私と夫が手を叩くと、この子は笑いながら音のする私たちに向って床をずりずりと這ってくるだろう。
こんなありがちな未来予想図をちょっと思い描いただけで私の胸はいっぱいになった。
父もおもちゃに対してこんな思いだったのかもしれない。
だとしたら古く汚いあのおもちゃ一つ一つが父にとっては愛くるしいものだったのだろう。
私の考えていることを察したのか夫は優しくほほえみかけた。
「でも君までお義父さんみたいによくばりになってたくさん欲しがらないでね。」
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