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第7回『散歩 春巻き 睡眠時間』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第7回『散歩 春巻き 睡眠時間』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約45分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=Q13tshdGZas
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
私は犬である。
名前はブナ。
雑種の私はごく平凡な4人家族の家に引き取られた。
この家で一番偉いのは父であり私に食事を与えてくれるのは主に母であるが、私を飼いたいと言ってくれたのは兄妹であった。
私と一番遊んでくれるのも兄妹だった。
その中でも私が一番なついているのは兄である。
なぜなら私は散歩が大好きであり、その散歩係は兄だからである。
兄と一緒に妹も頻繁に私と散歩に連れて行ってくれるが、妹はまだ就学年齢にもいってないため彼女が一人で私を散歩に出してくれることはなかった。
朝の6時30分に家を出て20分間近所をぐるりと回る。
これが日課である。
散歩のコースには木や電柱があり、走り回れる野もあった。
私は土や木の匂いを嗅ぐことによって今私の生活圏内に何が起きているかを把握し、全身には温かい血が、脳に新鮮な空気が送り込まれるのである。
しかし夏が過ぎ秋も終わりに近づくと私の楽しみに大きな壁が立ちふさがる。
冬の寒さである。
私を散歩に連れて行ってくれるはずの兄が寒さを理由に行きたがらないのである。
まだ太陽が昇りきってない暗い窓を背後に私は布団の中の兄に向って散歩をねだらねばならなくなる。
少しでも布団をめくって冷気を当てようものなら、兄はすぐにふとんをかぶってしまう。
私を飼うことを決めたときに約束事があったらしく、母がせかすと兄はしぶしぶ起きて私にリードを付け始める。
これが冬の散歩の前のもう一つの日課である。
失礼、言葉を誤った。
これは冬と春の日課なのである。
春ならば暖かくなり始めている、そう思うだろう。
だが春眠暁を覚えずという言葉がある通り、どうも人間にとって春は睡眠時間が長くなってしまう季節のようである。
私は芽を出し始めた草木たちの匂いを早く嗅ぎたいのに兄はすやすやと眠ってばかりである。
芽は日一日と成長する。
昨日の芽はもういない、それが春である。
ああ、小鳥まで鳴き始めた。
きっと虫たちも行動を始めたのだろう。
今外はどんな匂いに満ちているのだろう。
早く嗅ぎたい。
気持ちは募るばかりだが、まだまだ寝ていたい兄は一向に起きる気配がない。
時計を見た母が兄を呼び掛けてくれた。
だが母よ、とてもありがたいことではあるが私としてはもう少し兄をこのままにしてやってもいい。
だってこんなに幸せそうに眠ってるのだから。
春の陽気に包まれ、布団にくるまっている姿。
人間のこの姿を私は春巻きと呼んでいる。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第7回『散歩 春巻き 睡眠時間』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約45分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=Q13tshdGZas
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~・~・~・~・~
私は犬である。
名前はブナ。
雑種の私はごく平凡な4人家族の家に引き取られた。
この家で一番偉いのは父であり私に食事を与えてくれるのは主に母であるが、私を飼いたいと言ってくれたのは兄妹であった。
私と一番遊んでくれるのも兄妹だった。
その中でも私が一番なついているのは兄である。
なぜなら私は散歩が大好きであり、その散歩係は兄だからである。
兄と一緒に妹も頻繁に私と散歩に連れて行ってくれるが、妹はまだ就学年齢にもいってないため彼女が一人で私を散歩に出してくれることはなかった。
朝の6時30分に家を出て20分間近所をぐるりと回る。
これが日課である。
散歩のコースには木や電柱があり、走り回れる野もあった。
私は土や木の匂いを嗅ぐことによって今私の生活圏内に何が起きているかを把握し、全身には温かい血が、脳に新鮮な空気が送り込まれるのである。
しかし夏が過ぎ秋も終わりに近づくと私の楽しみに大きな壁が立ちふさがる。
冬の寒さである。
私を散歩に連れて行ってくれるはずの兄が寒さを理由に行きたがらないのである。
まだ太陽が昇りきってない暗い窓を背後に私は布団の中の兄に向って散歩をねだらねばならなくなる。
少しでも布団をめくって冷気を当てようものなら、兄はすぐにふとんをかぶってしまう。
私を飼うことを決めたときに約束事があったらしく、母がせかすと兄はしぶしぶ起きて私にリードを付け始める。
これが冬の散歩の前のもう一つの日課である。
失礼、言葉を誤った。
これは冬と春の日課なのである。
春ならば暖かくなり始めている、そう思うだろう。
だが春眠暁を覚えずという言葉がある通り、どうも人間にとって春は睡眠時間が長くなってしまう季節のようである。
私は芽を出し始めた草木たちの匂いを早く嗅ぎたいのに兄はすやすやと眠ってばかりである。
芽は日一日と成長する。
昨日の芽はもういない、それが春である。
ああ、小鳥まで鳴き始めた。
きっと虫たちも行動を始めたのだろう。
今外はどんな匂いに満ちているのだろう。
早く嗅ぎたい。
気持ちは募るばかりだが、まだまだ寝ていたい兄は一向に起きる気配がない。
時計を見た母が兄を呼び掛けてくれた。
だが母よ、とてもありがたいことではあるが私としてはもう少し兄をこのままにしてやってもいい。
だってこんなに幸せそうに眠ってるのだから。
春の陽気に包まれ、布団にくるまっている姿。
人間のこの姿を私は春巻きと呼んでいる。
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