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第30回『入浴 不届き者 氷砂糖』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第30回『入浴 不届き者 氷砂糖』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間8分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=8WFUQjPeGcs
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「よーし、集まったな。そろそろ始めようか。」
昼間だというのにカーテンの閉め切った部屋に男数人が円陣を組んで小声で話し合っていた。
「日ごろ虐げられし我らの宿年の恨みを晴らすときのために。」
「そうだ。今日は始まりに過ぎない。」
「だがそれは大いなる祝宴のための一歩だ。」
男たちは互いの顔を見合わせると、そこには一切の躊躇や迷いはなく、瞳に宿っているのは覚悟の炎一条だけだった。
「いざ!」
気合とともに畳にたたきつけられたのはプラスチック製のフタが備えられた透明のガラス瓶だった。
「ほう、これはなかなかの大きさだな。」
一人の男が息を呑んだ。
「あ、ああ。これだけあれば。」
「ばか。喜ぶのはまだ早えぞ。」
そう言ってちらりと視線を送られた男は黙ってうなずいた。
「ほらよ、梅だぜ。」
男が新聞紙を開くと、ほどよく育った梅がいくつもごろんと転がった。
「ほう、これはいい梅を選んだなあ。」
「ああ、まるまるとしてて年頃のおなごみたいだぜ。」
女という言葉に反応したのかそれとも梅を見たからか、男はごくりとつばを呑みこんだ。
「だがこれだけじゃいけねえ。」
みんなが一人の男を睨むと、その男は左の口角を不敵に上げた。
「ふっ、あわてなさんなよっ。」
男がすっと差し出したのはまだ封を切られてない焼酎の瓶だった。
「おお、これこれ。」
「主役のお出ましだぜ。」
一人が小さく拍手をすると、隣りの男は人差し指を口に当ててしっとたしなめた。
「では、始めようか。」
男の声とともに、みんなは一斉に黙り背筋を伸ばして姿勢を正した。
男はガラス瓶を手前に持ってくると、新聞紙から梅を1個ずつ取ってはその中にそっと入れていった。
梅を入れ終わると、今度は氷砂糖を個数を数えながら入れていった。
こうしてガラス瓶は3分の1ほどの高さまで梅と氷砂糖で埋められた。
ぽんっ。
軽快な音を立てて焼酎の蓋を開けると、辺り一面に焼酎の香りが広がった。
男はそれに動じることなく焼酎を傾け、とっとっとっとリズミカルな音とともにガラス瓶の中へと流し込んでいった。
暗い部屋で行われているその作業を他の男たちは固唾を呑んで見守った。
焼酎を最後の一滴まで入れ終わると、男は静かに息をついて焼酎の瓶を畳に置いた。
それを見て他の男たちも肩から力が抜け自然と笑みがこぼれてきた。
「い、いよいよだな。これで……。」
「ああ。梅酒が完成する。」
この男たちは普段から酒を呑みすぎていて、とうとう妻から禁酒を言い渡された者たちだった。
ならばと思い焼酎を買ってきたのに、梅酒を作ってしまえという発想になった。
目に涙を浮かべている男もいればガラス瓶を仏様のように拝んでいる男もいた。
そのとき扉が勢いよく開いた。
「酒を密造している男たちというのはお前らか! 不届き者め!」
入ってきたのは警察官だった。
「ち、違うんです、私たちは世間話をしていただけでっ……。」
とっさにガラス瓶を隠したが無駄だった。
「世間話? ならこれはなんだね? 中には、ほうほう、梅が入ってる。ということは梅酒を作ろうとしていたんじゃないかねぇ?」
警察官は男たちをなめ回すように見た。
「違うんですっ。こ、これはその、梅に入浴させてたんですっ。」
あわてふためいた一人の男がとんでもないことを言い出した。
男たちはもうだめだと思った。
せっかく用意した梅酒も警察官に取り上げられてしまう。
「梅に入浴? 確かに梅は気持ちよさそうだ。これはそんなにいい湯なのかな?」
警察官は人差し指を入れ、指先についた焼酎をぺろりとなめた。
「ん! なるほどこれはいい湯だ。この梅の入浴が終わるのはいつ頃だ?」
「半年後です。」
「ならばその時にもう一度ここに来よう。二番風呂は私がいただく。」
~・~・~・~・~
~感想~
検索したら氷砂糖は梅酒を作るときに使うと書いてあったので、梅酒を作る話にしました。
話は落語の二番煎じのオマージュです。
二番煎じが好きなんです。
酒を呑む話が好きなんです。
酒を呑むのが好きなんです。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第30回『入浴 不届き者 氷砂糖』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間8分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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~・~・~・~・~
「よーし、集まったな。そろそろ始めようか。」
昼間だというのにカーテンの閉め切った部屋に男数人が円陣を組んで小声で話し合っていた。
「日ごろ虐げられし我らの宿年の恨みを晴らすときのために。」
「そうだ。今日は始まりに過ぎない。」
「だがそれは大いなる祝宴のための一歩だ。」
男たちは互いの顔を見合わせると、そこには一切の躊躇や迷いはなく、瞳に宿っているのは覚悟の炎一条だけだった。
「いざ!」
気合とともに畳にたたきつけられたのはプラスチック製のフタが備えられた透明のガラス瓶だった。
「ほう、これはなかなかの大きさだな。」
一人の男が息を呑んだ。
「あ、ああ。これだけあれば。」
「ばか。喜ぶのはまだ早えぞ。」
そう言ってちらりと視線を送られた男は黙ってうなずいた。
「ほらよ、梅だぜ。」
男が新聞紙を開くと、ほどよく育った梅がいくつもごろんと転がった。
「ほう、これはいい梅を選んだなあ。」
「ああ、まるまるとしてて年頃のおなごみたいだぜ。」
女という言葉に反応したのかそれとも梅を見たからか、男はごくりとつばを呑みこんだ。
「だがこれだけじゃいけねえ。」
みんなが一人の男を睨むと、その男は左の口角を不敵に上げた。
「ふっ、あわてなさんなよっ。」
男がすっと差し出したのはまだ封を切られてない焼酎の瓶だった。
「おお、これこれ。」
「主役のお出ましだぜ。」
一人が小さく拍手をすると、隣りの男は人差し指を口に当ててしっとたしなめた。
「では、始めようか。」
男の声とともに、みんなは一斉に黙り背筋を伸ばして姿勢を正した。
男はガラス瓶を手前に持ってくると、新聞紙から梅を1個ずつ取ってはその中にそっと入れていった。
梅を入れ終わると、今度は氷砂糖を個数を数えながら入れていった。
こうしてガラス瓶は3分の1ほどの高さまで梅と氷砂糖で埋められた。
ぽんっ。
軽快な音を立てて焼酎の蓋を開けると、辺り一面に焼酎の香りが広がった。
男はそれに動じることなく焼酎を傾け、とっとっとっとリズミカルな音とともにガラス瓶の中へと流し込んでいった。
暗い部屋で行われているその作業を他の男たちは固唾を呑んで見守った。
焼酎を最後の一滴まで入れ終わると、男は静かに息をついて焼酎の瓶を畳に置いた。
それを見て他の男たちも肩から力が抜け自然と笑みがこぼれてきた。
「い、いよいよだな。これで……。」
「ああ。梅酒が完成する。」
この男たちは普段から酒を呑みすぎていて、とうとう妻から禁酒を言い渡された者たちだった。
ならばと思い焼酎を買ってきたのに、梅酒を作ってしまえという発想になった。
目に涙を浮かべている男もいればガラス瓶を仏様のように拝んでいる男もいた。
そのとき扉が勢いよく開いた。
「酒を密造している男たちというのはお前らか! 不届き者め!」
入ってきたのは警察官だった。
「ち、違うんです、私たちは世間話をしていただけでっ……。」
とっさにガラス瓶を隠したが無駄だった。
「世間話? ならこれはなんだね? 中には、ほうほう、梅が入ってる。ということは梅酒を作ろうとしていたんじゃないかねぇ?」
警察官は男たちをなめ回すように見た。
「違うんですっ。こ、これはその、梅に入浴させてたんですっ。」
あわてふためいた一人の男がとんでもないことを言い出した。
男たちはもうだめだと思った。
せっかく用意した梅酒も警察官に取り上げられてしまう。
「梅に入浴? 確かに梅は気持ちよさそうだ。これはそんなにいい湯なのかな?」
警察官は人差し指を入れ、指先についた焼酎をぺろりとなめた。
「ん! なるほどこれはいい湯だ。この梅の入浴が終わるのはいつ頃だ?」
「半年後です。」
「ならばその時にもう一度ここに来よう。二番風呂は私がいただく。」
~・~・~・~・~
~感想~
検索したら氷砂糖は梅酒を作るときに使うと書いてあったので、梅酒を作る話にしました。
話は落語の二番煎じのオマージュです。
二番煎じが好きなんです。
酒を呑む話が好きなんです。
酒を呑むのが好きなんです。
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