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第59回『紙風船 桃源郷 焼夷弾』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第59回『紙風船 桃源郷 焼夷弾』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約59分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=Cj1SeMsuz1o
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
夜中だというのにアパートの階段を乱暴にのぼってきた足音は丸井の部屋の前で止まり、ドアを激しくノックする音が続いた。
「丸井、丸井っ。いるんだろうっ。」
ドアはこのままでははずれてしまいそうだった。
丸井は明日また隣りに住む豆腐屋の男から文句を言われるのだろうなと思いながら、そっとドアを開けた。
部屋に通された赤城は中央にどかっと座っていらいらしている様子だった。
丸井は水道から水を出すと、コップを赤城に差し出した。
赤城はそれを一気に飲み干すと、一息ついた。
「臆したか、丸井。」
赤城の目は真剣そのものだったのに対して、丸井はそれから目をそらすようにたばこに火をつけた。
「丸井、お前はたばこが吸いたいという理由で戦いから離脱するわけではないんだろう?」
「そんなんじゃないよ。ただ、火炎瓶を作りたくないって言ってるのさ。」
「つまり戦いたくないということだろうっ?」
「だって火炎瓶なんて炎が燃え盛って、あんなの、焼夷弾と同じじゃないか。僕らが非難しているアメリカがベトナムでやってることと同じだ。矛盾してる。」
丸井の吐いた煙はゆっくりとオレンジ色の電燈に向ってのぼっていった。
「俺たちには理想がある!」
赤城が握りこぶしを掲げても、丸井は何も言わずたばこを吸い続けた。
貴様には失望したと言い残して赤城は部屋から去っていった。
次の日も赤城たちは大学で機動隊と衝突していた。
「おい、丸井は今日も来ないのかっ?」
「奴は、もうだめです。」
仲間からの問いに赤城は歯を食いしばりながら答えるほかなかった。
このままでは丸井は粛清されるかもしれないと思った。
だがこうしている間にもバリケードはどんどん押されていった。
くそっ、権力の犬めっ。
政府は大衆の声を聞けっ。
仲間たちは運動が始まってから何度も叫んだ言葉を繰り返したが、その声は悲壮感がただよっていた。
赤城は手元を見るもすでに火炎瓶は投げつくしたあとで、武器と呼べるようなものはもう何もなかった。
俺たちは負けるのか、赤城は覚悟した。
そのとき赤城たちと機動隊の間にぽすりと何かが落ちた。
赤や青や黄色とカラフルなそれは紙風船だった。
一つだけではない。
ぽすり、ぽすりと次々と落ちてきた。
赤城ははっと上を見た。
屋上にいたのは丸井であり、彼が紙風船を次々に投げ落としているのだった。
「平和への祈りを込めて……。僕にできることは紙風船を飛ばすことだけだ。」
丸井は段ボールいっぱいの紙風船を何箱分も作っていて、紙風船をつかんでは投げ、つかんでは投げ、赤や青が風に乗ってゆっくりと落ちてくるその様子に赤城達も機動隊も声をなくして見とれていた。
ところが丸井が口にくわえていたたばこから灰が手の甲に落ちてしまった。
「あちっ。」
丸井が叫ぶと、たばこは紙風船が入った段ボールに飛んでいった。
一瞬にして紙風船に火が燃え移った。
「やべえっ。」
丸井があわてて消そうとするも、火の勢いがすごすぎて丸井は段ボールをひっくり返してしまった。
驚いたのは下にいた機動隊だった。
天から火のついた紙風船が雨あられと落ちてくるのだ。
すぐに辺り一面燃え盛り、機動隊は我を忘れて逃げまどい、その様はまさに地獄絵図だった。
赤城は丸井に向って叫んだ。
「これがお前の夢見た桃源郷か! 機動隊に向って火のついた紙風船をばらまくとは、まったくクレイジーなやつだぜ!」
~・~・~・~・~
~感想~
紙風船と桃源郷でとても美しいイメージが連想されるのですが、それだけにもう一つのお題の焼夷弾がやっかいでした。
そこで紙風船が燃えれば焼夷弾みたいなものだなと思いつき、そのシチュエーションとして学生運動を選びました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第59回『紙風船 桃源郷 焼夷弾』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約59分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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夜中だというのにアパートの階段を乱暴にのぼってきた足音は丸井の部屋の前で止まり、ドアを激しくノックする音が続いた。
「丸井、丸井っ。いるんだろうっ。」
ドアはこのままでははずれてしまいそうだった。
丸井は明日また隣りに住む豆腐屋の男から文句を言われるのだろうなと思いながら、そっとドアを開けた。
部屋に通された赤城は中央にどかっと座っていらいらしている様子だった。
丸井は水道から水を出すと、コップを赤城に差し出した。
赤城はそれを一気に飲み干すと、一息ついた。
「臆したか、丸井。」
赤城の目は真剣そのものだったのに対して、丸井はそれから目をそらすようにたばこに火をつけた。
「丸井、お前はたばこが吸いたいという理由で戦いから離脱するわけではないんだろう?」
「そんなんじゃないよ。ただ、火炎瓶を作りたくないって言ってるのさ。」
「つまり戦いたくないということだろうっ?」
「だって火炎瓶なんて炎が燃え盛って、あんなの、焼夷弾と同じじゃないか。僕らが非難しているアメリカがベトナムでやってることと同じだ。矛盾してる。」
丸井の吐いた煙はゆっくりとオレンジ色の電燈に向ってのぼっていった。
「俺たちには理想がある!」
赤城が握りこぶしを掲げても、丸井は何も言わずたばこを吸い続けた。
貴様には失望したと言い残して赤城は部屋から去っていった。
次の日も赤城たちは大学で機動隊と衝突していた。
「おい、丸井は今日も来ないのかっ?」
「奴は、もうだめです。」
仲間からの問いに赤城は歯を食いしばりながら答えるほかなかった。
このままでは丸井は粛清されるかもしれないと思った。
だがこうしている間にもバリケードはどんどん押されていった。
くそっ、権力の犬めっ。
政府は大衆の声を聞けっ。
仲間たちは運動が始まってから何度も叫んだ言葉を繰り返したが、その声は悲壮感がただよっていた。
赤城は手元を見るもすでに火炎瓶は投げつくしたあとで、武器と呼べるようなものはもう何もなかった。
俺たちは負けるのか、赤城は覚悟した。
そのとき赤城たちと機動隊の間にぽすりと何かが落ちた。
赤や青や黄色とカラフルなそれは紙風船だった。
一つだけではない。
ぽすり、ぽすりと次々と落ちてきた。
赤城ははっと上を見た。
屋上にいたのは丸井であり、彼が紙風船を次々に投げ落としているのだった。
「平和への祈りを込めて……。僕にできることは紙風船を飛ばすことだけだ。」
丸井は段ボールいっぱいの紙風船を何箱分も作っていて、紙風船をつかんでは投げ、つかんでは投げ、赤や青が風に乗ってゆっくりと落ちてくるその様子に赤城達も機動隊も声をなくして見とれていた。
ところが丸井が口にくわえていたたばこから灰が手の甲に落ちてしまった。
「あちっ。」
丸井が叫ぶと、たばこは紙風船が入った段ボールに飛んでいった。
一瞬にして紙風船に火が燃え移った。
「やべえっ。」
丸井があわてて消そうとするも、火の勢いがすごすぎて丸井は段ボールをひっくり返してしまった。
驚いたのは下にいた機動隊だった。
天から火のついた紙風船が雨あられと落ちてくるのだ。
すぐに辺り一面燃え盛り、機動隊は我を忘れて逃げまどい、その様はまさに地獄絵図だった。
赤城は丸井に向って叫んだ。
「これがお前の夢見た桃源郷か! 機動隊に向って火のついた紙風船をばらまくとは、まったくクレイジーなやつだぜ!」
~・~・~・~・~
~感想~
紙風船と桃源郷でとても美しいイメージが連想されるのですが、それだけにもう一つのお題の焼夷弾がやっかいでした。
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