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第72回『盆栽 入道雲 バイク』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第72回『盆栽 入道雲 バイク』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間3分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=AbFI24fiugk
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
学校から配られた進路調査のプリントを高野は眺めていた。
「なに真剣に見てんだよ。」
クラスメイトの武田が高野の机に体重を乗せてきた。
「どうせちょっとした意識調査みたいなもんだろ。んな真剣に考えることないって。」
ボタンをはずして大きく開いた武田のワイシャツから、柔道部で鍛えられた厚い胸板が少し見えた。
「武田はもう決まった?」
高野が無邪気に顔を上げると、武田は苦笑した。
「嫌味かよ。でも勉強なんてもうしたくねえから就職だろうな。」
就職か、と高野はすんとした。
昔から農業や手工業が盛んな地方に位置する高野の高校では本人の成績にかかわらず家業を継ぐために就職を選択する学生は毎年少なからずいた。
今回の進路調査も先生たちはそういうところを知っておきたかったのかもしれない。
「まあ俺なんかを雇ってくれそうな会社なんてあるかわかんねえけどな。」
高野は笑ったが、カバンを持つ武田の腕を見て彼ならきっとどこの会社に入っても猛烈に働いてくれるだろうなと思った。
「やっぱり高野は進学するのか?」
「わからない。」
「そうなの? 授業をまじめに聞いてるからてっきり大学に行きたいと思ってたんだが。」
放課後の高野と武田しかいない教室に風が入り、カーテンがそよそよと揺れた。
「そりゃ試験とか通知表とかもあるから。」
「それだけまじめならどこの大学だって受かりそうだな。」
武田は高野の前の席に座った。
さっき自分が考えたことと同じようなことを言われた高野は小声でそんなことないよとだけ返事をして、あとの間は窓の外のセミの鳴き声が埋めてくれた。
「そうか! お前んち、なにかやってたよな!」
突如、武田がひらめいたかのように言った。
目の前に広がる教室の風景が、以前高野が話したときのことを思い出すきっかけになったのかもしれない。
もっとも高野自身、家業のことなんていつ武田に話したかなんてよく覚えていない。
「うん。下駄とかの鼻緒を作る仕事をしている。」
「あー、そうだ。言ってたな。ちょっとした伝統産業なんだろ? すげえじゃん。跡取りじゃん。」
「そんないいもんじゃないよ。日本でも鼻緒を手作業で作ってるのはうちを含めて数軒だし。」
「なおさらすげえ気がするんだけど。」
「じいちゃんに聞いたら、決断力がないからやめ時を逃してきただけだって言ってた。」
高野はそう言って趣味の盆栽をしていた祖父の背中を思い出した。
ちゃき、ちゃき、ちゃき、と選定をする音がとても軽快だったことが高野にはなぜか印象的だった。
武田は立ち上がった。
「まあいっか。お互いまだ時間はあるんだ。じっくり考えようぜ。」
高野と武田の駐輪場に行った。
「俺、今日死ぬかも。」
武田は汗だくの顔でフルフェイスのヘルメットを見ながら言った。
「かっこつけるからだよ。通学用のにしとけって。」
高野は武田とのこんな会話も終わりに近づいているんだなということが実感として湧いてきた。
一刻も早く風に吹かれて涼しくなりたかったのか、武田は高野を待つでもなく走り出した。
高野もあわててエンジンをかけて彼を追いかけた。
高野のよりも排気量の大きい武田のバイクは学校を抜け、もう道の先にまでいた。
そしてそのさらに先には大きな入道雲が出ていた。
~・~・~・~・~
~感想~
盆栽から切り落とされる伝統産業を、大きい入道雲から二人の未来を、バイクから高校生の青春を連想して話を考えました。
特に意味はないけど、二人に少しだけ同性愛の匂いを出しました。
この配信をする直前にBMWのサイトでアルピナB8のV8エンジンの音を聞いていたので、そのせいかバイクも大型になりました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第72回『盆栽 入道雲 バイク』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間3分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=AbFI24fiugk
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
学校から配られた進路調査のプリントを高野は眺めていた。
「なに真剣に見てんだよ。」
クラスメイトの武田が高野の机に体重を乗せてきた。
「どうせちょっとした意識調査みたいなもんだろ。んな真剣に考えることないって。」
ボタンをはずして大きく開いた武田のワイシャツから、柔道部で鍛えられた厚い胸板が少し見えた。
「武田はもう決まった?」
高野が無邪気に顔を上げると、武田は苦笑した。
「嫌味かよ。でも勉強なんてもうしたくねえから就職だろうな。」
就職か、と高野はすんとした。
昔から農業や手工業が盛んな地方に位置する高野の高校では本人の成績にかかわらず家業を継ぐために就職を選択する学生は毎年少なからずいた。
今回の進路調査も先生たちはそういうところを知っておきたかったのかもしれない。
「まあ俺なんかを雇ってくれそうな会社なんてあるかわかんねえけどな。」
高野は笑ったが、カバンを持つ武田の腕を見て彼ならきっとどこの会社に入っても猛烈に働いてくれるだろうなと思った。
「やっぱり高野は進学するのか?」
「わからない。」
「そうなの? 授業をまじめに聞いてるからてっきり大学に行きたいと思ってたんだが。」
放課後の高野と武田しかいない教室に風が入り、カーテンがそよそよと揺れた。
「そりゃ試験とか通知表とかもあるから。」
「それだけまじめならどこの大学だって受かりそうだな。」
武田は高野の前の席に座った。
さっき自分が考えたことと同じようなことを言われた高野は小声でそんなことないよとだけ返事をして、あとの間は窓の外のセミの鳴き声が埋めてくれた。
「そうか! お前んち、なにかやってたよな!」
突如、武田がひらめいたかのように言った。
目の前に広がる教室の風景が、以前高野が話したときのことを思い出すきっかけになったのかもしれない。
もっとも高野自身、家業のことなんていつ武田に話したかなんてよく覚えていない。
「うん。下駄とかの鼻緒を作る仕事をしている。」
「あー、そうだ。言ってたな。ちょっとした伝統産業なんだろ? すげえじゃん。跡取りじゃん。」
「そんないいもんじゃないよ。日本でも鼻緒を手作業で作ってるのはうちを含めて数軒だし。」
「なおさらすげえ気がするんだけど。」
「じいちゃんに聞いたら、決断力がないからやめ時を逃してきただけだって言ってた。」
高野はそう言って趣味の盆栽をしていた祖父の背中を思い出した。
ちゃき、ちゃき、ちゃき、と選定をする音がとても軽快だったことが高野にはなぜか印象的だった。
武田は立ち上がった。
「まあいっか。お互いまだ時間はあるんだ。じっくり考えようぜ。」
高野と武田の駐輪場に行った。
「俺、今日死ぬかも。」
武田は汗だくの顔でフルフェイスのヘルメットを見ながら言った。
「かっこつけるからだよ。通学用のにしとけって。」
高野は武田とのこんな会話も終わりに近づいているんだなということが実感として湧いてきた。
一刻も早く風に吹かれて涼しくなりたかったのか、武田は高野を待つでもなく走り出した。
高野もあわててエンジンをかけて彼を追いかけた。
高野のよりも排気量の大きい武田のバイクは学校を抜け、もう道の先にまでいた。
そしてそのさらに先には大きな入道雲が出ていた。
~・~・~・~・~
~感想~
盆栽から切り落とされる伝統産業を、大きい入道雲から二人の未来を、バイクから高校生の青春を連想して話を考えました。
特に意味はないけど、二人に少しだけ同性愛の匂いを出しました。
この配信をする直前にBMWのサイトでアルピナB8のV8エンジンの音を聞いていたので、そのせいかバイクも大型になりました。
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