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第163回『気心 人狼 打ち上げ花火』
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ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第163回『気心 人狼 打ち上げ花火』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間10分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=sFuK4BqNdps
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
今日私は村の友達と夏祭りに行くことになった。
友達の中には男友達もいるが、みんな気心の知れた子供のころからの友達だ。
せまい田舎だからこその濃く、強いつながりだ。
そして田舎の祭りは昔の習俗はまだ色濃く残っていて、村の人たちは男女問わず誰だって浴衣を着てくるほどなのだ。
私は去年高校生になった記念におばあちゃんからもらった大輪のツバキが描かれた、見るも鮮やかな浴衣を着てきた。
手にした小さな巾着袋は金魚が描かれていて、とても夏らしい。
田舎の祭りと言っても、やることは全国と大して変わらないのだろう。
みんなで夜店をまわり最後に打ち上げ花火を見るという、ごく普通の流れだ。
灯りが少なかったり、神社が人家から離れていたり、森が深いということ以外は。
わたがしを食べたり、りんご飴を食べたりと、私たちはお祭りを満喫した。
男の子は射的に夢中になったりもしたし、取れた景品を美衣子ちゃんにあげた男の子もいた。
それはもちろん100円程度のお菓子だが、美衣子ちゃんはたいしてお菓子好きというわけでもないのに目をキラキラさせて受け取っていた。
私はそれを横目にやっぱりこういう日にロマンスは生まれやすいのかなと思った。
もっとも食べ物を両手に持ち、巾着袋を大きく揺らしながら交互に食べている私には縁遠い話のようだが。
さてそろそろかき氷に行こうかと思っていると、そっと私の袖を引く人がいた。
増田くんだった。
「ねえ、二人で抜け出しちゃわない?」
増田くんは強引だった。
私たちは神社の森の中にいた。
増田くんとも子供のころからの付き合いだが、彼がこんなに積極的になったのは初めてだった。
増田くんにはまだまだ私の知らない部分があるな、と思った。
しかし増田くんは顔が真っ赤になり、少し落ち着きがなくなっている様子だった。
これは告白の流れなのか?
でも今まで増田くんには私のことが好きだというようなそぶりは全く見られなかった。
私もこういうことに鋭いわけではないが、まったく人の心というものは読めないな、と思った。
「こ、今夜は満月だよね。」
空を見上げると、木々にさえぎられているが確かに満月のようだった。
まさか増田くんは月がきれいと言って、告白するつもりなのか?
夏目漱石がI love youを月がきれいと訳したのは有名な話だ。
しかしあの増田くんがこんな臭い、いやロマンチックな告白を用意してくるとは、本当に人というのはわからないものだな、と思った。
「実は俺、人狼なんだ。」
打ち上げ花火が鳴った。
だから私は聞き間違いかと思った。
しかし増田くんの体から見る見るうちに銀色の毛が生えてきた。
目は鋭くなり瞳は金色に輝き、ウウウゥゥという人とは思えないうなり声とともに前かがみになっていった。
覆いかぶさった浴衣を振り払って現れたのは、まぎれもなく狼だった。
鋭い牙の間からもれる息は、森を温めるようだった。
「悪いな。今まで人を食べないようにしてきたが、俺はもう空腹で、がまんの限界なんだ。」
そう言いざま、狼の姿をした増田くんは口を大きく開いて私の首めがけて飛びかかってきた。
「!」
私は右手に持っていたフランクフルトを増田くんの口に突っ込んだ。
ムシャッ。
「?!」
ムシャムシャッ。
「うまい!」
増田くんは私のフランクフルトを貪り食い始めた。
その間に私は増田くんのゆかたの帯を拾い、そっと、しかし手早く増田くんの首に巻いた。
「あっ!」
「所詮は犬ね。」
私は増田くんを見下ろしながら言った。
「増田くん、わかってるの? あなた、このまま狼が解けて人間に戻ったら私の前で全裸になっちゃうのよ。」
「な、ならばその前にお前を食うまでだっ。」
増田くんは周りにトマトケチャップの付いた口を開いて飛びかかろうとしてきた。
「グエエーーッ。」
私は帯を引っ張り上げて増田くんの首を絞めた。
「私に逆らうんじゃないわよ。」
結局私と増田くんは付き合うことになった。
え?
人狼が怖くないかだって?
大丈夫、彼はとってもおとなしいから。
今だってお部屋デートで私がスマホをいじっている間ずっと、足元でふせをしているから。
人間の姿のままだけど。
全裸だけど。
ずっと友達だと思っていた増田くんとの相性がこんなにいいだなんて、人というのは本当にわからないものだな、と思った。
~・~・~・~・~
~感想~
人狼が出てくる話で、気心をベースにして考えました。
オチも最初から決まったまま書いていったので文章も書きやすかったはずなのですが、時間がかかってしまいました。
口の周りにケチャップがついた狼はかわいいと思います。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第163回『気心 人狼 打ち上げ花火』
の完成テキストです。
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お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間10分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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今日私は村の友達と夏祭りに行くことになった。
友達の中には男友達もいるが、みんな気心の知れた子供のころからの友達だ。
せまい田舎だからこその濃く、強いつながりだ。
そして田舎の祭りは昔の習俗はまだ色濃く残っていて、村の人たちは男女問わず誰だって浴衣を着てくるほどなのだ。
私は去年高校生になった記念におばあちゃんからもらった大輪のツバキが描かれた、見るも鮮やかな浴衣を着てきた。
手にした小さな巾着袋は金魚が描かれていて、とても夏らしい。
田舎の祭りと言っても、やることは全国と大して変わらないのだろう。
みんなで夜店をまわり最後に打ち上げ花火を見るという、ごく普通の流れだ。
灯りが少なかったり、神社が人家から離れていたり、森が深いということ以外は。
わたがしを食べたり、りんご飴を食べたりと、私たちはお祭りを満喫した。
男の子は射的に夢中になったりもしたし、取れた景品を美衣子ちゃんにあげた男の子もいた。
それはもちろん100円程度のお菓子だが、美衣子ちゃんはたいしてお菓子好きというわけでもないのに目をキラキラさせて受け取っていた。
私はそれを横目にやっぱりこういう日にロマンスは生まれやすいのかなと思った。
もっとも食べ物を両手に持ち、巾着袋を大きく揺らしながら交互に食べている私には縁遠い話のようだが。
さてそろそろかき氷に行こうかと思っていると、そっと私の袖を引く人がいた。
増田くんだった。
「ねえ、二人で抜け出しちゃわない?」
増田くんは強引だった。
私たちは神社の森の中にいた。
増田くんとも子供のころからの付き合いだが、彼がこんなに積極的になったのは初めてだった。
増田くんにはまだまだ私の知らない部分があるな、と思った。
しかし増田くんは顔が真っ赤になり、少し落ち着きがなくなっている様子だった。
これは告白の流れなのか?
でも今まで増田くんには私のことが好きだというようなそぶりは全く見られなかった。
私もこういうことに鋭いわけではないが、まったく人の心というものは読めないな、と思った。
「こ、今夜は満月だよね。」
空を見上げると、木々にさえぎられているが確かに満月のようだった。
まさか増田くんは月がきれいと言って、告白するつもりなのか?
夏目漱石がI love youを月がきれいと訳したのは有名な話だ。
しかしあの増田くんがこんな臭い、いやロマンチックな告白を用意してくるとは、本当に人というのはわからないものだな、と思った。
「実は俺、人狼なんだ。」
打ち上げ花火が鳴った。
だから私は聞き間違いかと思った。
しかし増田くんの体から見る見るうちに銀色の毛が生えてきた。
目は鋭くなり瞳は金色に輝き、ウウウゥゥという人とは思えないうなり声とともに前かがみになっていった。
覆いかぶさった浴衣を振り払って現れたのは、まぎれもなく狼だった。
鋭い牙の間からもれる息は、森を温めるようだった。
「悪いな。今まで人を食べないようにしてきたが、俺はもう空腹で、がまんの限界なんだ。」
そう言いざま、狼の姿をした増田くんは口を大きく開いて私の首めがけて飛びかかってきた。
「!」
私は右手に持っていたフランクフルトを増田くんの口に突っ込んだ。
ムシャッ。
「?!」
ムシャムシャッ。
「うまい!」
増田くんは私のフランクフルトを貪り食い始めた。
その間に私は増田くんのゆかたの帯を拾い、そっと、しかし手早く増田くんの首に巻いた。
「あっ!」
「所詮は犬ね。」
私は増田くんを見下ろしながら言った。
「増田くん、わかってるの? あなた、このまま狼が解けて人間に戻ったら私の前で全裸になっちゃうのよ。」
「な、ならばその前にお前を食うまでだっ。」
増田くんは周りにトマトケチャップの付いた口を開いて飛びかかろうとしてきた。
「グエエーーッ。」
私は帯を引っ張り上げて増田くんの首を絞めた。
「私に逆らうんじゃないわよ。」
結局私と増田くんは付き合うことになった。
え?
人狼が怖くないかだって?
大丈夫、彼はとってもおとなしいから。
今だってお部屋デートで私がスマホをいじっている間ずっと、足元でふせをしているから。
人間の姿のままだけど。
全裸だけど。
ずっと友達だと思っていた増田くんとの相性がこんなにいいだなんて、人というのは本当にわからないものだな、と思った。
~・~・~・~・~
~感想~
人狼が出てくる話で、気心をベースにして考えました。
オチも最初から決まったまま書いていったので文章も書きやすかったはずなのですが、時間がかかってしまいました。
口の周りにケチャップがついた狼はかわいいと思います。
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