元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ

文字の大きさ
10 / 36

#9 クラスで噂になってる関係と役立つ友人がいる件

しおりを挟む
 月曜日の朝。
 俺は、いつも通り早めに登校した。
 今日の授業の予習をしていると、周が賑やかに登校してくる。

「おー!類!見たぞー!」

 周がいつもより大きな声で呼びかけてきた。

「何を?」
「昨日、Re⭐︎LuMiNaのライブ、行ったんだろ?」
「なんで知ってる」
「SNSで見た。『Re⭐︎LuMiNaのライブに例の無表情イケメンがまたいた』って話題になってる」

 周がスマホを見せてくる。
 そこには――隠し撮りされた俺の姿が映っていた。

「……最悪だ」
「有名人じゃん。『謎のイケメン』って呼ばれてアンチスレが立ってる」
「……有名になりたくない」

 しかし、あの会場の主役はアイドル達だ。
 一観客のことなど、どうせすぐに飽きられるだろう。
 俺は気にするのを止めた。

「周。お前、俺の連絡先を強羅に教えただろ」
「えー?あー?うん。駄目だった?」
「いいわけないだろう。個人情報だ」
「だってさ、類は強羅さんに連絡先を教えたがってるかなーと思って」
「どういう言い訳だ」

 周は俺が言っているのも気にせず、椅子の上で反転して俺の机に顎を乗せる。

「で、どうだった? ライブ」
「……騒がしかった」
「感想は変わらないのかよ!」

 周が笑う。
 本当は色々あったが、ひまりの事を明かしていないのだから言うことができない。

「でもさ、お前が二回も行くって、よっぽどだよな」
「妹に連れてかれただけだ」
「本当に?もしかして、推しとかできたんじゃね?」
「……いない」
「嘘だー絶対いるって」

 周はスマホでRe⭐︎LuMiNaを検索した。
 公式サイトのメンバー紹介ページを眺めている。

「どのメンバーが推しなんだよ。俺も最近わかるようになったんだけど、センターのきらり?それとも、クールな麗奈?」
「知らん」
「じゃあ、もしかして、ひまり?」

 その名前を聞いて、もう一度「知らん」とは言えなかった。
 周はそれを見逃さない。

「あ、今ちょっと反応した」
「……してない」
「したって!絶対ひまりだろ?最近人気出てきたんだよな?土曜のライブでも話題になってたし」
「……そうらしいな」

 俺は適当に返事をした。
 だが、周は更に追及してくる。

「類はひまりのファンなんだー」
「……違う」
「じゃあ、なんで二回も行ったの?」
「だから、妹に連れてかれただけだ」

 俺は繰り返して、話は終わりと問題集を広げる。

「えー?つまんねーの……あれ?そのページって来週までだよな?」
「いや、今日までの宿題だ」
「うわっ!やっべ!!」

 周は慌てて体を前に戻して慌てて問題集を広げている。
 話がうやむやになってよかった。
 そのとき――

「おはようございます」

 教室のドアが開き、ひまりが入ってきた。
 眼鏡をかけた地味な姿。
 ライブでステージに立っていたとは思えない、いつも通りの真面目な女子高生。

 教室で話していた数人の女子生徒が、ひまりに気付いてちらりとドアの方を見る
 ひまりはその視線に気付いて、小さく声をかけた。

「おはようございます」

 だが――。

「……」

 女子たちは、冷たい視線を向けるだけで、返事をしなかった。
 一人は完全に無視して、別の方向を向いている。

「……」

 ひまりは少し戸惑った表情を見せたが、何も言わずに自分の席に向かった。
 俺は、その一部始終を見ていた。

 何だ、今の反応は。
 明らかにひまりを無視をしていた。

 ひまりは目立たない生徒で特別仲が良い生徒がいない。
 しかし、トラブルに巻き込まれてもいなかったはずだ。
 ひまりは気にしていない様子で俺の隣の自分の席に来て、小さく会釈した。

「おはようございます、兎山さん」

「……おはよう」

 俺は短く答えた。
 周が宿題をしながら聞いているだろうから、Re⭐︎LuMiNaの話はしたくない。

「あの……ありがとうございました」

 ひまりはそれだけ言って嬉しそうに笑った。
 そして、満足そうに席に着く。
 周に聞かれなくて良かった。
 そう思ったが、周が立ち上がって俺の腕を突いた。

「なぁ、類」

 周はいつもと違って真剣な表情をしている。

「なんだ」
「ちょっと、話」

 周に言われて、席を立って廊下に出る。
 人が少ない外階段まで出ると、周は人がいないことを確認して口を開いた。

「あのさ……お前、気づいてる?」
「何を」
「強羅さんのこと」
「……」

 俺は黙って周を見た。
 さっきの、ひまりの挨拶を無視するような女子の反応。
 俺はクラスメートのことをほとんど気にしていなかった。
 しかし、友人が多くて人間関係に詳しい周はもっと前から気付いていたはずだ。

「最近、クラスの女子の間で、ちょっと変な空気があるんだよ」
「……変な空気?」
「うん。お前のこと」

 周は少し言いづらそうに続けた。

「類、お前って……実は結構女子に人気あるんだよ」
「ふーん」
「ふーんじゃねーよ。もっと喜べよ!」

 周はつい大声を出したが、すぐに真剣な顔に戻る。

「いや、マジで。顔がよくて運動神経もいいし」
「そんなこと、どうでもいいのに」
「お前はそう思ってるかもしれないけど、周りはそうじゃないんだよ」

 周は呆れたようにため息をついた。
 
「お前、性格が冷たくて基本が機嫌悪そうだから、今まで女子は近づいてこなかったんだ。でも……」
「……でも?」
「最近、お前が強羅さんと話してるの見て、『あ、兎山ってまともに人と話せるんだ』『話しかけても人間として扱ってもらえそうだな』って思った女子が結構いるんだよ」
「俺は一体何だと思われてるんだ」
「日ごろの行いだろ。で、最近は女子たちがお前と話したがってる。でも――」

 周は少し深刻な表情になった。

「強羅さんが邪魔だと思ってる」
「邪魔?」
「強羅さんって、地味系だし、特別美人とか可愛いとかで目立つ子じゃないだろ?」
「まぁそうだな」
「だから、『あの強羅さんがいいのに何で自分はダメなの』って思ってる女子がいるんだ。それで、強羅さん、ちょっと最近、クラスの女子に敵視されてるんだよ」
「……」

 俺は、さっきの光景を思い出した。
 ひまりに対する、冷たい視線。
 無視。

「……そういうことか」
「俺も最近気づいたんだけど……強羅さん、結構辛い立場にいるんじゃないかって」

 周が申し訳なさそうに言った。
 俺のせいでひまりを、傷つけている。
 俺が彼女と話すことで、彼女が標的になっている。
 そして、俺は全然それに気付かなかったし、気付こうともしなかった。

「類は悪くないよ。でも……気をつけた方がいいかもしれない」

 周の言葉を俺は素直に受け止めた。
 俺一人だったら気付かずにひまりを更に追い詰めていたかもしれない。
 そこで、ふと思いつく。

「周、だから俺の連絡先をひまりに教えたのか?」

 他の女子生徒の目がある教室で話さなくても済むように、電話やLINEの連絡先をひまりに教えたのか、と。
 周は深く頷く。

「俺ってめっちゃ気が効く」
「自分で言うな」

 そう突っ込んだけれど、周のアドバイスが助かったのは確かだ。

「……分かった」

 俺は短く答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

君と暮らす事になる365日

家具付
恋愛
いつでもぎりぎりまで疲れている主人公、環依里(たまき より)は、自宅である築28年のアパートの扉の前に立っている、驚くべきスタイルの良さのイケメンを発見する。このイケメンには見覚えがあった。 何故ならば、大学卒業後音信不通になった、無駄に料理がうまい、変人の幼馴染だったのだから。 しかし環依里は、ヤツの職業を知っていた。 ヤツはメディアにすら顔を出すほどの、世間に知られた天才料理人だったのだ! 取扱説明書が必要な変人(世間では天才料理人!?)×どこにでもいる一般人OL(通訳)の、ボケとツッコミがぶつかりあうラブコメディ!(予定)

百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと
恋愛
 百合ゲー【Fleur de lis】  舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。  まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。  少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。  ただの一人を除いて。  ――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)  彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。  あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。  最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。  そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。  うん、学院追放だけはマジで無理。  これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。  ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...