飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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1.波紋を描く、異色の水滴

3

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最悪だ。そう叫びたくなった。

「おや、貴方は先日の…申し訳ない、あの後は大丈夫でしたか?人間同士ならば大したことにはならないかと思いますが我々Swisは身体が大きいので」

セミュール…とかいう敬語がお上手な眼鏡のSwis。人が必死に死にかけのところを部署に戻ろうと歩いてたら、呑気におやなどと話しかけ、横に並んで歩き出しやがった。
いつも大丈夫じゃないですよ、と言いたいのを押し込みいえ、と曖昧に笑っておく。

「せ、先日は、どうも。全然大丈夫なんでお気になさらず…!」

視線はあちこちへと周りを探るように左右へ。幸い今は昼休憩ではなく業務時間中。この辺りを歩いている人は居なさそうだ。

ふぅ、危ない危ない…Swisと歩いているところなんて見られたら死ぬ。

「本当ですか?心配ではあったのですが、貴方はいつも忙しく席を外しておられたので中々話しかけられず。たまたまこうやって並んでお話出来て良かったです」

にこにこ。と効果音がつきそうな人のいい笑みを浮かべてよく喋る綺麗な面をしたSwis。その顔がどうも薄っぺらな西園寺を彷彿とさせて気分が悪くなってくる。

大体何なんだずっと心配だったみたいな言い方、弱者にも手を差し伸べるとーっても優しいんですよアピール?ウザ。

「はあ。でも全然大丈夫なんで、本当に。…僕は用事があるのでこれで失礼します」

くるりと踵を返して男から離れようとする。これ以上近くに居ると耐えられない。誰かに見つかれば風当たりは強くなるし、見つからなくてもそもそもこの状況が無理。

「おや、背中に糸くずが…」
「自分で取るんでッ!!」

視界の端に、こちらに向かって伸ばされた手が見えた。その瞬間に西園寺に殴られた後だとは思えないくらいの速さで更にSwisから距離を取る。

さわられて、なるものか

Swisの方を見れば、ポカンと口を開いていて。ああやったな、と思った。

「ふふ、警戒することは悪いことではございません。…にも伝えておかなければなりませんね」

…彼?

「ご、めんなさい…ちょっと吃驚してしまって」

「いえ、また話しましょう。次はどこでか、私にも分かりませんが」

そんな変なことばかりを言って、男は去っていった。次は無いですと言う暇もなく。彼だとか次がどこだとかそんなのどうでも良くて、無駄に動いたせいで余計痛む全身にどんどんイライラしてくる。

「なんなんだあいつは…ッくそ…」

いいよな、たのしそうで、いつも

「戻らないと…」

ここに居るのに意味がある。ある?あるはずだから。あの場所に戻らないといけない。
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