飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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3.霧、もしくは雨、もしくは…

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「───これで諸々の説明は終わったかな。脱走以外なら基本自由にしてていいよ、脱走以外なら」
 
「はいはい、分かってますよ」

暫く世話になるので、部屋の場所や物の使い方など聞いた。
洗面所に風呂場、書斎、彼奴の部屋と色々見せてもらったが全体を通してただただ広いという感想しか出てこなかった。そして無駄に豪華。
改めて何だかとんでもない奴に捕まってしまったな、と紫ヶ崎は唸る。

「じゃあ…少し早いけど晩御飯にしようか。俺は準備するから、お風呂入っておいで」

キッチン付近のカーテンは纏められており、大開口窓から差し込む光が室内の一部を橙色に染めている。色々な事があったからだろう、時間の進みがやけに早く感じた。

えっと…?確か、銀行に向かう時に黄色い帽子を被った子供を見たから…目が覚めた時には昼すぎで、昼食は14時とか15時か?

となると自分は…あの日、つまり。
夕方の18時くらいに倒れたと仮定し、それから3日、と…?

いやいやいやいや、そんなに?まさか。

ぶんぶん、と首を振る。

「あ、お風呂嫌?それとも俺と一緒に入る?傷がまだ痛むと思うから俺が洗おうか?これでもペットについてはかなり───、」
「1人で入れるんで。けっこ……要らないです」

此奴の前で結構ですは禁句だ。

先程の説明を思い出しながら早足でパジャマやバスタオルの準備を済まし、スリッパを履き風呂場へ。
ぱたんと扉を閉めてしまえば薄ら物音はするものの、視界には誰も居ない為この家に連れてこられてから初めてほっと息をつけた気がした。

「彼奴、なんでこんなのを」

脱衣場の大きな鏡の中の自分と目が合った。立派な青い隈をこさえた鳥の巣ヘアーな自分を、何故?
服を脱ぎ、慎重に外した包帯を言われた通りゴミ箱に捨てながら考えることと言えば、今日だけでも何度も考えたことで。
考える度に嫌な妄想をして、信用できる訳ない、早く此処から出ないとと焦る。

「ッい゛…」

痛い。

別の事を考えていたからか、物凄い色をしている部分を遠慮なく擦ってしまっていた。風呂場は声が響く。また彼奴が喧しくなる事だろう。それを想像して溜息が止まらない。
それから最大限声を我慢しやっとの思いで風呂を終える。

「大丈夫だった!?」

何故かピッタリなパジャマに寒気を覚えながら袖を通し、脱衣場を出る。出迎えたのはわたわたしているミースだった。

「焦りすぎでしょ。大丈夫です」

包帯と湿布と何らかの塗り薬を両手にデカイ図体を忙しなく動かす様は何とも、こう…思うところがある。
必死に説明し何とか落ち着いてもらうことは出来たがどっと疲れた気がする。

大丈夫です、って10回くらい言った気がするな。
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