運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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8 騎士一族と黒鉄編

3-0 エルシア、闘技会で活躍する

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 一部の試合が終わった翌日。

 すでに結果は把握済みだとはいえ、「正式な結果発表は聞いておいた方がいい」と言われて、私も発表会場にやってきていた。

 会場は王宮騎士団本部の中庭のようなところ。横に長い立て看板に、一部の試合の順位がずらーーーっと張り出されている。

「よしっ。トップ!」

 一位通過だというのは聞いていたので、一位から見ていっても良かったのに。

「お嬢。それだとワクワク感がありませんわ」

 などと、試合にワクワクを求める専属護衛と、

「他の騎士団の結果も確認したいので、最後から見ていきましょうよ」

 などと、真面目にデータ取りをする専属護衛。

 二人の意見に押し切られ、私たちは看板の最後の貼り紙から順位を見ていくことになった。

 最初、つまり後ろの方の順位は聞いたこともない名前が続く。それから、ちらほら聞いたことがある名前が混じり、最後の最後にニグラート辺境騎士団の名前が!

 一位。

 見事に一位。

 私が守りきったおかげで一位。

 一部なので、王宮騎士団は出場してない。だからすべての騎士団の頂点に立ってはいない。それでも、とても気持ちがいい。

 あちこちから、喚起の声、はしゃぐ声、残念がる声、悔しがる声、様々な声が聞こえてきた。

 上位の騎士団だけ二部の試合に進めるので、ここで終わりの騎士団も少なくない。残念がったり悔しがっているのは、そんな騎士団の騎士たちだろう。

「そんなバカなぁ!」

 ほらほら。あそこにも大声で悔しがる人が、って、あの人は…………。

「この、新リテラ王国一の武人が参加したというのに!」

 どこからどう見ても、エンデバート卿だわ。

「ルベル公爵家騎士団は、二部まで進めませんでしたわね」

 フィリアがにやけた目でエンデバート卿を眺めた。「ざまぁみろ、おっさん」と低く小声でつぶやくフィリアは、珍しく、成人男性の声と口振り。

 だよね。さんざん、好きだとか『理想の女性』だとか言われてたもんね。腹も立つよね。

 でも、成人男性の口調はすぐさま引っ込み、いつものフィリアに戻る。

「そもそも闘技会って、名前は『闘技』だけれど、組織戦で情報戦まで加わってくる奥が深ーーーーい大会なのよ」

「ですね。俺、初参加ですが、これほど複雑で神経を使う戦いだとは思いませんでしたよ」

 頭を抱えて大げさに嘆くエンデバート卿を端から眺めながら、二人はそんなことを話し出した。

 むむむ。

 闘技会は情報戦だとか組織戦だとか、ことあるごとに、みんなが口を揃えて言う。
 一部の試合の時も、相手の情報を把握して試合に臨んでいる。
 だから、ただの戦いでないことはよくよく分かってはいる。

 しかし、なんとなく納得しがたい気持ちが私の中にあった。

 なぜなら、

「情報戦とか組織戦とか言ってたわりには、うちのみんなは、どの相手も一斉に襲いかかってボコボコにしただけだったよね?」

 つまり、相手の情報に合わせて作戦を考えて、陣形を変えて、といったことは皆無だったのだ。少なくともニグラートの騎士たちは。

「情報、どこで生かされてるわけ?」

 しかも私への指示は『守り一択』。どの試合もまったく変わりはなかった。

 騎士たちはボカスカやってるのに、私だけ『守り』。見ているだけ。つまらないこと、この上ない。私も殴りたい。じゃなくて戦いに参加したい。

「殴る力加減を調節してましたけど?」

「だから、うちの試合はケガ人も死人もゼロでしたでしょ、お嬢?」

 嘘でしょ、死人まで出るの?!

 焦る私の様子を見て、何を勘違いしたのか、フィリアが涙ぐみながら語り出した。

「お嬢はお嬢の戦いを十分、立派にこなしてましたわ。それはもう立派でした!」

「ただ、旗の横で立ってただけだよね」

「そんなことはないです! それに、お嬢がバックについている、それだけで殲滅隊は強くなれるんですから!」

 バルトレット卿までフィリアに加勢する。

 必死になる二人の様子を見る限りでは、本心でそう思ってくれてる以外に何かありそうだ。

 例えば、

「グレイから、私を攻撃側にするな、って言われてるとか?」


 ビクン!


 フィリアやバルトレット卿だけでなく、今日の発表についてきていたニグラートの全員が、身体をこわばらせた。

 うん、当たりだ。

「まったく。私、そんなに弱くないのに」

 グレイの過保護に頭を抱える私だった。

 しかし、グレイの過保護は、ケガの心配だけではなかったのだ。

  突然、私の背後から太い男性の声が聞こえてきた。

「君がルベラス嬢か」

 聞き覚えのまったくない声。
 どうやら相手は私のことを知っているらしい。

 まぁ、黒髪金眼の組み合わせは凄く珍しいそうなので、会ったことがない人でもそれだけで私だと分かる。

 だからこそ、顔も名前も知らないフェルム一族の末端たちから、しつこくアプローチを受けたのだけれど。

 今度の人も、そのうちの一人だろうか。

 私より先に振り返ったフィリアとバルトレット卿が、少し、身を引くのを感じた。

 相当、ヤバい相手?

 私も振り返って、声をかけてきた相手の顔を確認する。

 どこかで見たことがあるような?

「誰?」

 上級職の騎士服に身を包んだ大柄なおじさんに対して、私は単刀直入で誰何したのだった。
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