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1 王女殿下の魔猫編
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「ダイモス魔術師殿もそう言っていたな」
「さすがはベテランですわ。適材を一目で見抜くとは」
カニス隊長とソニアが和やかに、私の知らないところでの話をしているところへ、チラチラと私を見ながら不機嫌そうに、ヴォードフェルム隊長が割って入る。
「こんな使えなさそうなヤツなど放っておいて、こちらの計画通りに進めれば問題はないはずだ」
その言葉にチラッとこちらを見るカニス隊長。
ガシッ
ムカついて動く前に、フェリクス副隊長が私の両肩を後ろから掴んだ。
その行動にコクッと頷くカニス隊長。
フェリクス副隊長は私のストッパー役か。クラウドも同じような役割だったっけ。
各隊に私のストッパー役がいるって。私はなんだと思われているのだろう。
私の様子を見て安心したのか、カニス隊長は再び会話に集中し始めた。
「場所の特定は出来ていないんだろう?」
「ええ、気配も感じ取れないので、効率が悪すぎますわ」
「問題ない。怪しい場所ならリストアップしてある」
「怪しい場所ではなく、現在位置を特定できなければ捕獲できませんわ」
「確かにな。だから探索用に人数を集めたんだろうが、カエルレウス嬢の言うように効率は悪くなるし、時間もかかる」
話から察するに、何か、動物を探して捕まえる仕事のようだ。
んー。
私、動物の探索に捕獲って、やったことないけど?
それに王宮職員ではなく、騎士が動員されるということは、安全な動物ではなさそうだし。
「標的は何? 猛獣?」
「エルシア、探索の内容や標的も確認せずに、こちらにいらしたの?」
私の口から漏れたつぶやきに、ソニアが驚いたように返事をしてくれた。
「私、元々、第三騎士団の第一隊担当じゃないから。
ここに来る直前に担当交代させられて、詳しいことは現場で聞けって言われたのよ」
私は肩をすくめた。
「酷い話でしょ」
「第三騎士団らしいですわね。もっと綿密さをお持ちにならないと」
「ふん。そんな上司しかいないとは。第三騎士団は話にならんな」
またもや、チラチラこちらを見ながら、話に割って入ってくるヴォードフェルム隊長。
「まったくですわね」
「いったい、どんな上司だ」
「もっと、きちんとして欲しいですわね」
なぜだか、私の上司が気に入らないというところで、ヴォードフェルム隊長とソニアが意気投合している。
私の上司のダメ出しまでし始めた。
「二人ともそこまでにしてくれ。指示したのはヴァンフェルム団長だから」
「「あの団長か」」
そして、なぜだか、二人の言葉までピッタリ揃う。うちの団長、他からはどう思われているんだか。
「あの団長なら、あり得ますわね」
と、ソニアは不安になるようなことを口にしてから、今回の探索について教えてくれた。
「王女殿下が飼われている猫殿が、王女殿下の庭園から抜け出しましたの」
「あぁ、だからここに集合してるんだ。って、猫? 王族が猫を飼ってるなんて聞いてないわ」
ふと、疑問を口にした私に対して、今度はヴォードフェルム隊長が口を開いた。
「お前のような部外者には、一切知らされてないからな。把握しているのは直属の側近や、近衛、第一騎士団くらいだ」
「やっぱりムカつくんだけど」
「だから、落ち着け」
どうして、こうも引っかかるような言い方しかできないのかな、こいつ。
しかも、わざわざ絡んでくるし。
フェリクス副隊長に押さえつけられていなければ、殴ってたのに。
「兄貴は性格はあんなでも、第一騎士団の隊長だから。エルシアが殴る前に避けられると思うぞ」
やってみないと分からないのに。
とは思ったものの、私だってやたらと相手に突っかかっていったりはしない。押さえつけられてもいるし。
ここは静かにして様子を見よう。
そもそも、ヴォードフェルム隊長が私に絡んでくる理由がはっきりしないのだ。
最初は黒髪の魔術師だからバカにされているか、平民出身の魔導爵持ちだから気に入らないのかの、どちらかだと思ったけれど。
どちらかが理由であるなら、『黒髪』とか『平民』とかの単語を使って、嫌みを言ってくる。
なのに、ヴォードフェルム隊長はそれもない。唯一使ったのは『第三騎士団』という単語だけ。
なんだか、違和感がある。
チラチラ見られてもいるし、何かを気にしているようにも見えるし。
そうそう、今、重要なのは猫の話だ。
「王女殿下がちょうど視察に行っている最中に、いなくなってしまって」
「つまり、王女殿下が帰ってくる前に捕まえたいってことね」
「話が早くて助かりますわ」
「猫の捜索と捕獲など、第一騎士団だけで十分、間に合うんだがな」
「ヴォードフェルム隊長!」
またまた、ヴォードフェルム隊長が割り込む。聞き咎めたソニアが怒鳴る。ピクッと反応する私をフェリクス副隊長が押さえつけ、カニス隊長があちゃーといった顔をする。
周囲で会話を黙って聞いている騎士たちも、カニス隊長と同じ表情だ。
しかし、ヴォードフェルム隊長はそんな周りの反応を気にすることもない。
「それで、この生意気女が何の役に立つんだ?」
「エルシアは、範囲魔法を得意としておりますから」
「は? 範囲魔法? そんな地味な魔法が本当に使い物になるのか?」
私の代わりに胸を張って答えるソニアに、ヴォードフェルム隊長は不思議そうな顔で言い返した。
地味ですって?
使い物になるのかですって?
「うん、やっぱり殴っていい?」
フェリクス副隊長の手を振り払って、私は拳を握りしめた。
「さすがはベテランですわ。適材を一目で見抜くとは」
カニス隊長とソニアが和やかに、私の知らないところでの話をしているところへ、チラチラと私を見ながら不機嫌そうに、ヴォードフェルム隊長が割って入る。
「こんな使えなさそうなヤツなど放っておいて、こちらの計画通りに進めれば問題はないはずだ」
その言葉にチラッとこちらを見るカニス隊長。
ガシッ
ムカついて動く前に、フェリクス副隊長が私の両肩を後ろから掴んだ。
その行動にコクッと頷くカニス隊長。
フェリクス副隊長は私のストッパー役か。クラウドも同じような役割だったっけ。
各隊に私のストッパー役がいるって。私はなんだと思われているのだろう。
私の様子を見て安心したのか、カニス隊長は再び会話に集中し始めた。
「場所の特定は出来ていないんだろう?」
「ええ、気配も感じ取れないので、効率が悪すぎますわ」
「問題ない。怪しい場所ならリストアップしてある」
「怪しい場所ではなく、現在位置を特定できなければ捕獲できませんわ」
「確かにな。だから探索用に人数を集めたんだろうが、カエルレウス嬢の言うように効率は悪くなるし、時間もかかる」
話から察するに、何か、動物を探して捕まえる仕事のようだ。
んー。
私、動物の探索に捕獲って、やったことないけど?
それに王宮職員ではなく、騎士が動員されるということは、安全な動物ではなさそうだし。
「標的は何? 猛獣?」
「エルシア、探索の内容や標的も確認せずに、こちらにいらしたの?」
私の口から漏れたつぶやきに、ソニアが驚いたように返事をしてくれた。
「私、元々、第三騎士団の第一隊担当じゃないから。
ここに来る直前に担当交代させられて、詳しいことは現場で聞けって言われたのよ」
私は肩をすくめた。
「酷い話でしょ」
「第三騎士団らしいですわね。もっと綿密さをお持ちにならないと」
「ふん。そんな上司しかいないとは。第三騎士団は話にならんな」
またもや、チラチラこちらを見ながら、話に割って入ってくるヴォードフェルム隊長。
「まったくですわね」
「いったい、どんな上司だ」
「もっと、きちんとして欲しいですわね」
なぜだか、私の上司が気に入らないというところで、ヴォードフェルム隊長とソニアが意気投合している。
私の上司のダメ出しまでし始めた。
「二人ともそこまでにしてくれ。指示したのはヴァンフェルム団長だから」
「「あの団長か」」
そして、なぜだか、二人の言葉までピッタリ揃う。うちの団長、他からはどう思われているんだか。
「あの団長なら、あり得ますわね」
と、ソニアは不安になるようなことを口にしてから、今回の探索について教えてくれた。
「王女殿下が飼われている猫殿が、王女殿下の庭園から抜け出しましたの」
「あぁ、だからここに集合してるんだ。って、猫? 王族が猫を飼ってるなんて聞いてないわ」
ふと、疑問を口にした私に対して、今度はヴォードフェルム隊長が口を開いた。
「お前のような部外者には、一切知らされてないからな。把握しているのは直属の側近や、近衛、第一騎士団くらいだ」
「やっぱりムカつくんだけど」
「だから、落ち着け」
どうして、こうも引っかかるような言い方しかできないのかな、こいつ。
しかも、わざわざ絡んでくるし。
フェリクス副隊長に押さえつけられていなければ、殴ってたのに。
「兄貴は性格はあんなでも、第一騎士団の隊長だから。エルシアが殴る前に避けられると思うぞ」
やってみないと分からないのに。
とは思ったものの、私だってやたらと相手に突っかかっていったりはしない。押さえつけられてもいるし。
ここは静かにして様子を見よう。
そもそも、ヴォードフェルム隊長が私に絡んでくる理由がはっきりしないのだ。
最初は黒髪の魔術師だからバカにされているか、平民出身の魔導爵持ちだから気に入らないのかの、どちらかだと思ったけれど。
どちらかが理由であるなら、『黒髪』とか『平民』とかの単語を使って、嫌みを言ってくる。
なのに、ヴォードフェルム隊長はそれもない。唯一使ったのは『第三騎士団』という単語だけ。
なんだか、違和感がある。
チラチラ見られてもいるし、何かを気にしているようにも見えるし。
そうそう、今、重要なのは猫の話だ。
「王女殿下がちょうど視察に行っている最中に、いなくなってしまって」
「つまり、王女殿下が帰ってくる前に捕まえたいってことね」
「話が早くて助かりますわ」
「猫の捜索と捕獲など、第一騎士団だけで十分、間に合うんだがな」
「ヴォードフェルム隊長!」
またまた、ヴォードフェルム隊長が割り込む。聞き咎めたソニアが怒鳴る。ピクッと反応する私をフェリクス副隊長が押さえつけ、カニス隊長があちゃーといった顔をする。
周囲で会話を黙って聞いている騎士たちも、カニス隊長と同じ表情だ。
しかし、ヴォードフェルム隊長はそんな周りの反応を気にすることもない。
「それで、この生意気女が何の役に立つんだ?」
「エルシアは、範囲魔法を得意としておりますから」
「は? 範囲魔法? そんな地味な魔法が本当に使い物になるのか?」
私の代わりに胸を張って答えるソニアに、ヴォードフェルム隊長は不思議そうな顔で言い返した。
地味ですって?
使い物になるのかですって?
「うん、やっぱり殴っていい?」
フェリクス副隊長の手を振り払って、私は拳を握りしめた。
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