運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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7 王女殿下と木精編

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 金冠とメッサリーナ殿とエンデバート卿の話は、今、考えても仕方がないので、脇に置いておくとして。

 王女宮に到着した私は、侍女さんに案内されてデルティ殿下がいる部屋にまで通された。

 ここまではいつもと同じ。

 今日はいつもと違うことが一つあった。

 デルティ殿下がいると思われる部屋の前に、爽やかそうな騎士が一人。

 どこからどう見ても爽やかそうな雰囲気を纏っているはずなのに、それが空々しく胡散臭く感じるのは、私の偏見なんだろうか。

 私はその騎士を偽爽騎士と呼ぶ。陰で。

 その偽爽騎士を見るなり、私の足はぴたりと止まった。

「あー、面倒なのがいたわ」

 足が止まるだけでなく、口から遠慮なく言葉が漏れる。

 私の言葉が聞こえたとでも言うように、いいタイミングで、偽爽騎士がこちらを向いた。

 ニコリ

 キラキラーンと笑顔が煌めいているように見える。でも、あれは偽の輝きだ。騙されてはいけない。

 そもそも、私の言葉が耳に届く前から姿は見えていただろうから、気がついていたはず。

 わ、ざ、と、タイミングよく顔を向けてキラキラ攻撃。

 まったく。

「お嬢、誰ですか、あいつ?」

 フィリアが女性には出そうもないくらい低ーい声を出してきた。こちらはこちらでギャップがヤバい。

 私が紹介する前に、バルトレット卿が唸りそうになるフィリアを押し止める。

「ロード先輩、フェルム一族ですよ。バルザードが言っていました。お嬢にちょっかいを出している、命知らずなフェルムの男が四人いるって」

「うん? 四人?」

 私に絡んでくるフェルム一族って、四人もいたっけ?

「ストーカー、優柔不断、奥手、そしてあの胡散臭いヤツです」

「どれも悪口」

 バルザード卿、どんな申し送りをしたんだか。

 ストーカーはフェリクス副隊長、胡散臭いヤツは指を差してるので偽爽騎士で間違いないだろうけど。

 あとの二人は?

「フェリクス副隊長とヴェルフェルム卿は分かるけど、他は心当たりないんだけど」

 目をつぶって、うーんと考えてみても出てこない。

 騎士団勤めのフェルム一族は、と記憶力を総動員させた。

 まずは、フェルム侯爵。本部にいる総騎士団長なので関わりなし。

 ヴェルフェルム第一騎士団長。所属が違うので関わりなし。何回か姿を見たことがある程度。

 ヴァンフェルム第三騎士団長。今の直の上司の人。関わりはあるけど絡まれたことはなし。

 クラウド。同じ第三騎士団だけど、今は配属が違うので関わりなし。元同僚。

 クラウドの一番目のお兄さん。第一騎士団にいるらしい程度の情報しか知らない。

 クラウドの二番目のお兄さん=偽爽騎士のカイエン・ヴェルフェルム卿。思いっきり絡んでこられて嫌になる。この前、業務的に求婚されたっけ。

 フェリクス副隊長。私の後をつけ回しているらしい。おかげで危険だからと、官舎住まいさせてもらえなくなっちゃった。

 フェリクス副隊長のお兄さんのヴォードフェルム隊長。第一騎士団所属なので、ほぼ関わりなし。

 以上。

「優柔と奥手は、視野にも入ってないってことですね」

「とにかく。あの人、面倒くさいんだよねぇ。いちいち絡んでくるし、私のこと、好きでも何でもないくせにさぁ、結婚してくれだとかなんだとか。私に求婚するのを仕事にしているみたいでさ」

「珍しく、お嬢が長々と文句を言ってますね」

 わざとカイエン卿にまで聞こえるような大きさの声で喋っているのに、カイエン卿は涼しい笑顔のまま。

 だから、嫌なんだわ。

「あいつはあそこ担当なんですか? 見かけませんでしたけど?」

「デルティ殿下の専属護衛の近衛騎士だから。本当なら室内、デルティ殿下のすぐそばにいるはずだよ」

「てことは、お嬢を出迎えるために、あそこにいると」

「そうなるよね。面倒だなぁ」

 どうやっても、あそこを正面突破しないことにはデルティ殿下のところへは行けないのだ。

 言葉を交わすのも面倒で、頭が痛くなってくる。

「王女殿下の専属なら、毎日、護衛していますよね?」

 バルトレット卿の疑問はもっともなんだけど。専属護衛だとしても休みはある。

「専属が何人かいるから。昨日まではいなかったんだよね」

「隊長はお嬢の護衛を一人で、二十四時間やってますよね?」

「それはグレイがおかしいだけだから。グレイを基準にしてはダメだって」

 それに普通の護衛はベッドの中まで護衛しないから。

 ムスッとして言い返すと、バルトレット卿が黙って、今度はフィリアが喋り出す。

「ふーん、今日からまた、あの胡散臭い専属が復帰してきたわけですか」

 そう言って、フィリアは好戦的な視線をカイエン卿に向けた。

 キリッとした表情。

 美人過ぎて格好いい。

 ざわざわするので、背後を窺うと、廊下の目立たない隅から、フィリアに熱い視線が注がれていた。

 意外にも、侍女さんたちから。

 侍女さんは私たちのすぐそばにもいた。

「あの」

 私たちをここまで案内してくれた侍女さんも、フィリアをぽーっとした目で見つめながら、おずおずと口を開いた。

「闘技会です。カイエン卿、闘技会の参加メンバーに選ばれていますので、近衛騎士団の方で訓練しております」

「なるほどね。教えてくれてありがとう」

 にっこりと微笑むフィリア。微笑まれて真っ赤になる侍女さん。

「私は何を見せられているんだろう」

「お嬢と隊長に比べたら、健全ですよ?」

 余計なことを口走るバルトレット卿の足を踏んづけて黙らせていると、フィリアが何かを閃いたような顔をする。

「お嬢、こうしましょうか」

 自信満々なフィリアの提案は、ちょっと心配になるような内容だった。
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