運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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7 王女殿下と木精編

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 その日の終業後。

 私はしつこく王太子殿下に呼び出されていた。

 今日は朝からエンデバート卿に隠れて移動したり、クラヴィスからとんでもない話を聞かされたり、デルティ殿下の最終仕上げに付き合って最後に爆発したり(どうして?)、突っ込みどころ満載の一日で。

 それだけではなく、他の理由もいろいろあって、私は疲れていたのだ。とてもとても疲れていたのだ。

 だから。

「入ってくるなり、嫌そうにするのは止めてもらえないか?」

「疲れてるんです。理由は分かりますよね」

 疲れが顔に出ていた模様。

 デルティ殿下と王族教育は受けていて、表情コントロールも前より幾分かはマシになったと思っていたのに。

 それに、私がこんなに疲れているのは、遡れば王太子殿下のせい。

 私は心の中だけで不平を漏らした。
 ところが、心の中だけのはずなのに、

「私がお願いしたのが原因なのは、理解しているが。面と向かって、そこまで嫌そうにされると堪えるな」

 王太子殿下は正確に私の心を指摘する。

 ここで私はようやく、回りの反応に気づいた。
 専属の侍従さんや護衛騎士はともかく、補佐官たちが怪訝な顔をしているのを。

「もしかして。私、嫌そうな顔をしているようには見えない、とか?」

「面と向かって嫌そうな顔をしたら、相手に失礼だろう」

「でも、今。言いませんでした?」

「嫌そうにしている、とは言ったが、嫌そうな顔をしているとは言ってない」

 そうだった。王太子殿下はちょくちょく、私の心の声を正確に読みとってくる人だったわ。

 私は改めて、目の前の殿下を見る。

 ユニシス・グラディア第一王子。グラディア王国の次期国王で、三聖の一つ、統率のスローナスの主。

 スローナスに読心の能力があるとは聞いてないけど、何度もやられているし、おそらくそういうことか。

「言っておくが、スローナスの力ではないからな」

「えっ、違うんですか?!」

 うん、見事に違ったらしい。

 顔に手を当てて、はぁぁぁ、とため息をつく王太子殿下は金髪を左右に振った後、真っ直ぐ私を見つめてきた。

 王太子殿下の瞳は金色。いわゆる、スロンの金眼。

 そちらか。

 王太子殿下はうむっ、と小さく頷いてから、口を開いた。

「セラの金眼と同様に、スロンの金眼も得意分野があるからな」

 この辺、よく誤解される話なんだよね。
 同じことを思ったのか、わざわざ、丁寧に説明をし始める王太子殿下。

「スローナスは統率の個有能力を持ち、統率することに長けた魔導具だ。それとは別に、スロンの金眼を持つ者は、統率に長けた能力を有している」

 私にではなく、周りの人間に説明するために。

「統率に長けた能力を持って生まれたから、五歳の時にスロンの金眼として発現し、スローナスの主となったのだ。
 スローナスの主となったから、能力を得たわけではない」

 よくいるんだ。

 自分が杖の主になっていたら、自分が力を発言させていたのに。て、言う人。

 主になる前に、力を発言させてないとしたら、主として選ばれないのにね。

 私がスローナスの能力とスロンの力を見誤ったから、わざわざ丁寧に説明したと最初は思ったけど、どうやらそういうわけではなさそうだ。

 ふと手元の紙束に目を落とす殿下。

 束は二つ。

 私のところからも表題が見えた。隠す気はないらしい。

 一つは五強の杖の報告書、もう一つはルベル公爵邸の報告書、と書いてある。サインはケルビウス。

 わざわざ、スローナスの主云々を口にしたのは、五強の仮主、フォセル嬢の件があったからなのかも。

 と、推測してみた。顔には出さずに。

 珍しく王太子殿下は自分の話を語り続ける。

「それにスロンの金眼は、魔力の量や強さがスローナスに見合うだけないと発現しない。セラもケルも同様。
 見合う能力と素質があるから、杖の主になれる。使いこなせるかはその後の努力次第。
 逆に言えば、見合う能力と素質がなければ、杖の主にはなれぬし、なったところで努力せねばならない」

 フォセル嬢とアクアのことだけでなく、同時にデルティ殿下とリグヌムのこともあった。どちらも王太子殿下としては、頭の痛い内容だろう。

「まぁ、私の話はここまでにして」

 不意に王太子殿下が、いつもの王太子殿下に戻る。
 表情は相変わらず読めないけれど、読めたら読めたで怖さしか感じない。だから、いつもの王太子殿下に戻って、少しだけ安堵する私。

 王太子殿下は私の様子を見て、とくに突っ込むこともせずに、さっさと本題へ。

「ケルビウスからも話は聞いた」

 本題はケルビウスから聞いた話の方だ。

 王太子殿下の手元にあった紙束は、いつの間にか、一つになっている。表題はルベル公爵邸の報告書。

「あのー」

「なんだ?」

「話の流れからすると、二十年前のお披露目会で、私の母が金冠の主になって、金冠をグラディアに連れてきてしまった、ということになりますけど」

 ケルビウスたちはそう推察したようだけれど、真実かどうかは、かなり疑わしいと私は思っている。

 王太子殿下はどうだろうか。
 私は挑むような目で王太子殿下を見た。

「ケルビウスが、あのメッサリーナ殿に張り付いて調べたところからすると、そういうことになるな」

「二十年前のお披露目会云々の話って、本当なんですか?」

 私の挑戦的な質問に、殿下は私とは違う煌めきを持つ金色の瞳を輝かせた。
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