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第三章
第Ex話『隻眼の少女』
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その日会ったのは不思議な少女だった。
私より幼くて、ちょっとオドオドしていて、けれど大人びた声色を持った少女だった。魔法使いのような見た目なのに、右目に黒い眼帯をつけていた。名前はレインというらしい。
最初は妙に話しかけてくる奴だと思った。会話が好きというより、私を探るような接し方だった。こういうのは大抵、私を値踏みする輩が多い。だから私は無関心な態度をとっていた。
テントを組み立るところを見ていると、かなり鈍くさかった。ポールが上手く嵌め込めなかったり、ハンマーを持ってなかったり。正直低ランクらしさがあった。そこでずっとガチャガチャされていても却って困ると思い、手を貸した。
ところが夜中の戦闘での様子を見ると、C級のナイトホークと同列の魔法を使っていた。到底Fランクとは思えなかった。お陰でナイトホークを倒すことができたが、何か裏があるんじゃないかと疑った。
それでテントに戻ると、彼女もその後ろを付いてきた。さっさと自分のテントに帰れと言ったが、彼女は未だに私の腕を心配した様子だった。
今まで似たように心配してきた奴はいたが、その殆どに威圧的な態度を取ってきた。別に手助けなんかいらない。産まれてから親の助けも必要とせず、自分一人でなんとかやってきたからだ。私に近づいてきた輩は大抵それで身を引いて私に近づかなくなる。
ところが彼女は私に反抗して、私の手首を掴んできやがった。振り解こうとしても、腕に力が入らず、彼女が私の袖を捲るのをただ見ているしかなかった。ここまで強引な奴は初めてだった。
すると治癒術を使って私の腕の傷を治してきた。その上に、私の持っていた包帯を貸せと言って、ぐるぐると腕に巻き付けていった。
「…礼は言わないからな」
そう言い放っても、驚く様子も見せず、寧ろ嬉しそうな顔をされた。打算的な考えが一切見受けられなかった。
ただその考えなしが元の性格なのか、野宿の際の準備をまるでしていなかった。上着の用意はまだしも、夜食を持ってきていないとは。こんなやつに助けられたなんて、彼女にも自分にも呆れてしまった。
以降会話はなく、彼女が私がやったサンドイッチを食べている傍ら、私は剣に付いた汚れを拭き取り、砥石で研磨をしていた。この作業をするとき、誰かがいると気が散ってできないが、このときばかりはいつも通り集中してできた気がする。
一息ついて、ちらとレインの方を見ると、汚れたローブを下敷きにして、私のマウンテンパーカーを着たままぐっすりと眠っていた。野外というのに気持ちよさそうに寝息を立てている。あまりに緊張感のない姿だ。もし私が悪い人間だったら、このまま金目のものを奪っている。
…ったく。
仕方なく作業を中断して、彼女を抱きかかえてテントへ運んでやった。年相応とはいえ、冒険者を名乗るにしては華奢な身体つきなように思えた。魔法使いだとこんなもんなのか?
序でに運んだローブを改めて観ると、かなり上質な素材を使っているように見える。到底ランク相応の代物とは思えないが、かといって彼女が貴族だとも思えなかった。この歳の貴族がたった一人で旅をしているわけがない。
どこからか奪った…は無くはない。ただ、もしそうなら、これだけの代物を奪われたと依頼が来てもおかしくないだろうし、第一彼女の態度は悪怯れた様子は一切無かった。元から持っていたというのが一番しっくりくるが…。だとしたら、この歳で中級風魔術を使いこなして、その上治癒術まで使えるなんて、彼女は一体何者なんだろうか。
そこまで考えて、小さく首を横に振った。
らしくないな。他人のことを気にしてしまうなんて。別に彼女が何者だっていい。私にとって害がある存在じゃなければなんだって。
テントから出て、残った箱を拾って中を確かめると、サンドイッチの数は一つしか減っていなかった。
「…そりゃ全部食べるなとは言ったけどさ」
強引なところはあるのに、こういうのは謙抑なんだよな。ホント不思議な奴。
彼女のいるテントを見つめながら、箱の中にあるサンドイッチを一つ手にとって齧りついた。
私より幼くて、ちょっとオドオドしていて、けれど大人びた声色を持った少女だった。魔法使いのような見た目なのに、右目に黒い眼帯をつけていた。名前はレインというらしい。
最初は妙に話しかけてくる奴だと思った。会話が好きというより、私を探るような接し方だった。こういうのは大抵、私を値踏みする輩が多い。だから私は無関心な態度をとっていた。
テントを組み立るところを見ていると、かなり鈍くさかった。ポールが上手く嵌め込めなかったり、ハンマーを持ってなかったり。正直低ランクらしさがあった。そこでずっとガチャガチャされていても却って困ると思い、手を貸した。
ところが夜中の戦闘での様子を見ると、C級のナイトホークと同列の魔法を使っていた。到底Fランクとは思えなかった。お陰でナイトホークを倒すことができたが、何か裏があるんじゃないかと疑った。
それでテントに戻ると、彼女もその後ろを付いてきた。さっさと自分のテントに帰れと言ったが、彼女は未だに私の腕を心配した様子だった。
今まで似たように心配してきた奴はいたが、その殆どに威圧的な態度を取ってきた。別に手助けなんかいらない。産まれてから親の助けも必要とせず、自分一人でなんとかやってきたからだ。私に近づいてきた輩は大抵それで身を引いて私に近づかなくなる。
ところが彼女は私に反抗して、私の手首を掴んできやがった。振り解こうとしても、腕に力が入らず、彼女が私の袖を捲るのをただ見ているしかなかった。ここまで強引な奴は初めてだった。
すると治癒術を使って私の腕の傷を治してきた。その上に、私の持っていた包帯を貸せと言って、ぐるぐると腕に巻き付けていった。
「…礼は言わないからな」
そう言い放っても、驚く様子も見せず、寧ろ嬉しそうな顔をされた。打算的な考えが一切見受けられなかった。
ただその考えなしが元の性格なのか、野宿の際の準備をまるでしていなかった。上着の用意はまだしも、夜食を持ってきていないとは。こんなやつに助けられたなんて、彼女にも自分にも呆れてしまった。
以降会話はなく、彼女が私がやったサンドイッチを食べている傍ら、私は剣に付いた汚れを拭き取り、砥石で研磨をしていた。この作業をするとき、誰かがいると気が散ってできないが、このときばかりはいつも通り集中してできた気がする。
一息ついて、ちらとレインの方を見ると、汚れたローブを下敷きにして、私のマウンテンパーカーを着たままぐっすりと眠っていた。野外というのに気持ちよさそうに寝息を立てている。あまりに緊張感のない姿だ。もし私が悪い人間だったら、このまま金目のものを奪っている。
…ったく。
仕方なく作業を中断して、彼女を抱きかかえてテントへ運んでやった。年相応とはいえ、冒険者を名乗るにしては華奢な身体つきなように思えた。魔法使いだとこんなもんなのか?
序でに運んだローブを改めて観ると、かなり上質な素材を使っているように見える。到底ランク相応の代物とは思えないが、かといって彼女が貴族だとも思えなかった。この歳の貴族がたった一人で旅をしているわけがない。
どこからか奪った…は無くはない。ただ、もしそうなら、これだけの代物を奪われたと依頼が来てもおかしくないだろうし、第一彼女の態度は悪怯れた様子は一切無かった。元から持っていたというのが一番しっくりくるが…。だとしたら、この歳で中級風魔術を使いこなして、その上治癒術まで使えるなんて、彼女は一体何者なんだろうか。
そこまで考えて、小さく首を横に振った。
らしくないな。他人のことを気にしてしまうなんて。別に彼女が何者だっていい。私にとって害がある存在じゃなければなんだって。
テントから出て、残った箱を拾って中を確かめると、サンドイッチの数は一つしか減っていなかった。
「…そりゃ全部食べるなとは言ったけどさ」
強引なところはあるのに、こういうのは謙抑なんだよな。ホント不思議な奴。
彼女のいるテントを見つめながら、箱の中にあるサンドイッチを一つ手にとって齧りついた。
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