30 / 109
2章
11話
しおりを挟む
バダムと名乗った美青年は、ゲームでは一切出ていなかった。
ネーゼより少し弱い魔力だけど……今まで会ってきた人の中ではずば抜けている魔力を、私は感じ取っている。
アスファはゲームの時点で名前があるけど、攻略キャラではなかった。
主に聖堂内を紹介する人で、一つ年下ということもあって、確かカレンを慕っていたはず。
ゲームのことを思い返していると、バダムが私を見て。
「さて、リリアン様。貴方の実力が見たいのですが……よろしいでしょうか?」
「えっ?」
いきなりバダムがそんなことを言いながら少し離れて、右腕を私に向かって伸ばす。
「私の聖魔力による光の閃光を、聖魔力で防いでください。当たったとしても少し痛い程度、万一のことがあってもゲオルグ様の回復魔法で治せます」
「……バダムとか言ったな。なぜそんなことをしなければならない?」
レックス殿下が私の前に立ち、苛立ちながら尋ねる。
これに関しては私も理解できず困惑していたけど、バダムは表情を変えずに話す。
「リリアン様の力を見たいからですよ……それに、ゲオルグ様の話が信じられません。それほどまで聖魔力が凄いのなら、私が繰り出す聖魔力を打ち消すことは余裕のはずです」
どうやらバダムは、昨日ゲオルグに披露した聖魔力が信じられない様子だ。
周囲の人の視線も、興味深そうにしている様子で……私としても、聖魔力の攻撃を防いでみたいと思っている。
皮膚が切れるのは嫌だけど、それは魔法の模擬戦をしていた授業でも同じぐらい危険だった。
バダムはそこまでおかしなことは言っていないから、私は頷く。
「……わかりました」
今まで聖魔力を巧く扱える人は、家庭教師をしていたネーゼと素質のあるカレンしか居なかった。
ネーゼとカレンは私に対して聖魔力で攻撃をしたことがないから、聖魔力を聖魔力で防ぐ魔法を試したことがない。
聖魔力の魔力場でもある聖堂内だからこそ、私はバダムの攻撃を防ぎたくなっている。
「それでは……始めます!」
そして――バダムは服の袖に仕込んでいた杖を取り出して、白い光を私に向かって放つ。
私に迫る途中で三方向に分離して、私の体を掠めようとしている。
杖を出した私は同じように白い光の閃光を聖魔力で発生させて、聖魔力の閃光が衝突した。
それ以上に――私は打ち消しながら、バダムに迫るよう意識して閃光を放っている。
閃光はバダムの皮膚を掠めて消滅し……バダムは全身を震わせていた。
周囲の魔法士や騎士達から歓声の声があがったのは、バダムが明らかに加減をしていなかったからでしょう。
とてつもない速度で、攻撃が来ると先に言われていなければ、打ち消すだけで精一杯だった。
「リリアンの実力なら当然だが、こいつは正気か?」
レックス殿下は、客人の私に対して本気で魔法による攻撃を行ったことに、かなり引いている様子だ。
そして――驚きながら感動していたバダムは、私に対して笑顔を浮かべる。
「これはゲオルグ様、そしてネーゼの言っていた通り! 素晴らしい魔力です!!」
その叫び声を聞いて……私と、私の昔話を聞いていたカレンは納得する。
どうやらこの人は、ネーゼの関係者らしい。
ゲームでは一切説明がなかったネーゼは、アークス国でもトップクラスの魔法士だと聞いている。
そしてネーゼは私の魔力と魔法を知っているから、知り合いに私のことを話してもおかしくない。
その知り合いが隣の大陸に居たバダムで……知ったからこそ聖堂にやって来て、試してみたくなったのでしょう。
私が以前やらかしたせいで、ゲームと違う出来事が起きてしまった。
「リリアン様とレックス様、そしてロイ様……貴方達のことは、ネーゼから聞いています」
「お前、ネーゼの知り合いか?」
レックス殿下が尋ねると、バダムは優美な一礼を見せて。
「その通りです。僅か十代であのネーゼと互角の魔力を宿していると聞いた時は半信半疑でして……どうしても試してみたくなってしまい、失礼致しました」
「何かあったとしても私が治すつもりだったが、何もなくてなによりだ! これで皆もリリアンさんの凄さを理解できたようだしな!」
そう言って――ゲオルグから、バダムとアスファの説明を聞く。
どうやらアスファは私の護衛をしてくれるようで、行動を同じにするロイとカレンの護衛をしている人がやって来る。
ゲオルグの説明によると……ロイとカレンの護衛に関しては、余裕のある騎士の人が行うらしい。
「魔法の書庫には、一部の者しか入れない場所があるが、リリアンさんはそこで学ぶべきだと判断して皆の許可は私が出しておいた。それでも、恐らくリリアンさんしか理解できない内容だろう」
どうやらそれが、私にだけアスファを護衛にする理由らしい。
カレンとロイは普通に魔法を覚えるべきだからこそ、別の人が護衛をするようだ。
そしてバダムは、私を眺めながら話す。
「明日から私が、リリアン様に様々な聖魔力による魔法を教えようと考えています」
「バダムは聖堂でも特に優秀な魔法士だ。私は試練があるからあまり関われないが、バダムに任せようと考えている」
どうやら私の魔法の素質を見て、ゲオルグもバダムも色々と教えたくなった様子だ。
私としても、大賢者ゲオルグが認めているバダムから襲われるのなら、ありがたい機会だと思うしかない。
「ゲオルグ様、バダム様……ありがとうございます」
私がゲオルグとバダムにお礼を言うと、ゲオルグはアスファの肩を叩く。
「このアスファは、十五歳で騎士となった優秀な護衛で、騎士だが誰にも仕えていない」
騎士になると、誰かに仕えることになるはずだけど、アスファは例外だったわね。
そう考えていると、ゲオルグが理由を話してくれる。
「アスファは若いからな。より強くなってから、相応しい者に仕えてもらおうと考えている」
「リリアン様、よろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
「……俺より一つ年下で、騎士になるほどの実力者か」
アスファの挨拶を聞くと、レックス殿下は対抗心を燃やしている。
そして――聖堂での生活が、始まろうとしていた。
ネーゼより少し弱い魔力だけど……今まで会ってきた人の中ではずば抜けている魔力を、私は感じ取っている。
アスファはゲームの時点で名前があるけど、攻略キャラではなかった。
主に聖堂内を紹介する人で、一つ年下ということもあって、確かカレンを慕っていたはず。
ゲームのことを思い返していると、バダムが私を見て。
「さて、リリアン様。貴方の実力が見たいのですが……よろしいでしょうか?」
「えっ?」
いきなりバダムがそんなことを言いながら少し離れて、右腕を私に向かって伸ばす。
「私の聖魔力による光の閃光を、聖魔力で防いでください。当たったとしても少し痛い程度、万一のことがあってもゲオルグ様の回復魔法で治せます」
「……バダムとか言ったな。なぜそんなことをしなければならない?」
レックス殿下が私の前に立ち、苛立ちながら尋ねる。
これに関しては私も理解できず困惑していたけど、バダムは表情を変えずに話す。
「リリアン様の力を見たいからですよ……それに、ゲオルグ様の話が信じられません。それほどまで聖魔力が凄いのなら、私が繰り出す聖魔力を打ち消すことは余裕のはずです」
どうやらバダムは、昨日ゲオルグに披露した聖魔力が信じられない様子だ。
周囲の人の視線も、興味深そうにしている様子で……私としても、聖魔力の攻撃を防いでみたいと思っている。
皮膚が切れるのは嫌だけど、それは魔法の模擬戦をしていた授業でも同じぐらい危険だった。
バダムはそこまでおかしなことは言っていないから、私は頷く。
「……わかりました」
今まで聖魔力を巧く扱える人は、家庭教師をしていたネーゼと素質のあるカレンしか居なかった。
ネーゼとカレンは私に対して聖魔力で攻撃をしたことがないから、聖魔力を聖魔力で防ぐ魔法を試したことがない。
聖魔力の魔力場でもある聖堂内だからこそ、私はバダムの攻撃を防ぎたくなっている。
「それでは……始めます!」
そして――バダムは服の袖に仕込んでいた杖を取り出して、白い光を私に向かって放つ。
私に迫る途中で三方向に分離して、私の体を掠めようとしている。
杖を出した私は同じように白い光の閃光を聖魔力で発生させて、聖魔力の閃光が衝突した。
それ以上に――私は打ち消しながら、バダムに迫るよう意識して閃光を放っている。
閃光はバダムの皮膚を掠めて消滅し……バダムは全身を震わせていた。
周囲の魔法士や騎士達から歓声の声があがったのは、バダムが明らかに加減をしていなかったからでしょう。
とてつもない速度で、攻撃が来ると先に言われていなければ、打ち消すだけで精一杯だった。
「リリアンの実力なら当然だが、こいつは正気か?」
レックス殿下は、客人の私に対して本気で魔法による攻撃を行ったことに、かなり引いている様子だ。
そして――驚きながら感動していたバダムは、私に対して笑顔を浮かべる。
「これはゲオルグ様、そしてネーゼの言っていた通り! 素晴らしい魔力です!!」
その叫び声を聞いて……私と、私の昔話を聞いていたカレンは納得する。
どうやらこの人は、ネーゼの関係者らしい。
ゲームでは一切説明がなかったネーゼは、アークス国でもトップクラスの魔法士だと聞いている。
そしてネーゼは私の魔力と魔法を知っているから、知り合いに私のことを話してもおかしくない。
その知り合いが隣の大陸に居たバダムで……知ったからこそ聖堂にやって来て、試してみたくなったのでしょう。
私が以前やらかしたせいで、ゲームと違う出来事が起きてしまった。
「リリアン様とレックス様、そしてロイ様……貴方達のことは、ネーゼから聞いています」
「お前、ネーゼの知り合いか?」
レックス殿下が尋ねると、バダムは優美な一礼を見せて。
「その通りです。僅か十代であのネーゼと互角の魔力を宿していると聞いた時は半信半疑でして……どうしても試してみたくなってしまい、失礼致しました」
「何かあったとしても私が治すつもりだったが、何もなくてなによりだ! これで皆もリリアンさんの凄さを理解できたようだしな!」
そう言って――ゲオルグから、バダムとアスファの説明を聞く。
どうやらアスファは私の護衛をしてくれるようで、行動を同じにするロイとカレンの護衛をしている人がやって来る。
ゲオルグの説明によると……ロイとカレンの護衛に関しては、余裕のある騎士の人が行うらしい。
「魔法の書庫には、一部の者しか入れない場所があるが、リリアンさんはそこで学ぶべきだと判断して皆の許可は私が出しておいた。それでも、恐らくリリアンさんしか理解できない内容だろう」
どうやらそれが、私にだけアスファを護衛にする理由らしい。
カレンとロイは普通に魔法を覚えるべきだからこそ、別の人が護衛をするようだ。
そしてバダムは、私を眺めながら話す。
「明日から私が、リリアン様に様々な聖魔力による魔法を教えようと考えています」
「バダムは聖堂でも特に優秀な魔法士だ。私は試練があるからあまり関われないが、バダムに任せようと考えている」
どうやら私の魔法の素質を見て、ゲオルグもバダムも色々と教えたくなった様子だ。
私としても、大賢者ゲオルグが認めているバダムから襲われるのなら、ありがたい機会だと思うしかない。
「ゲオルグ様、バダム様……ありがとうございます」
私がゲオルグとバダムにお礼を言うと、ゲオルグはアスファの肩を叩く。
「このアスファは、十五歳で騎士となった優秀な護衛で、騎士だが誰にも仕えていない」
騎士になると、誰かに仕えることになるはずだけど、アスファは例外だったわね。
そう考えていると、ゲオルグが理由を話してくれる。
「アスファは若いからな。より強くなってから、相応しい者に仕えてもらおうと考えている」
「リリアン様、よろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
「……俺より一つ年下で、騎士になるほどの実力者か」
アスファの挨拶を聞くと、レックス殿下は対抗心を燃やしている。
そして――聖堂での生活が、始まろうとしていた。
20
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。