悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

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2章

48話

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 二学期から一ヶ月が経過して、平和な日々を過ごせていた。

 十月の末には中間試験があり、その後は魔法披露会の準備になる。
 先生からも聞いていたし、ここはゲーム通りで間違いないはずだ。
 午後から教室から魔法を扱えるコロシアムのような場所に移り魔法の実技授業中、暇になった私は呟く。

「……明日から二学期初となるダンジョン探索の郊外授業ですけど、私達なら問題無さそうです」

「地下五階までが試験のようだが、俺達なら問題ないだろう。リリアンは不安なのか?」

 レックス殿下が心配してくれるけど、どうやら顔に出ていたらしい。
 一学期は地下三階までだったから、普通ならかなり難易度が上がっている。
 私達は中間試験でも地下五階に向かっていたから、試験は何も問題ない。

 成績上位の私達は先に魔法を扱い暇になっているから、皆は集まっていた。
 そこにはラギルの姿もあって、興味深そうに呟く。

「リリアン様でも不安になるほどのダンジョンですか。校外授業が楽しみです」

 どうやら不安になっていると勘違いしたようで、ダンジョンに期待している様子だ。
 本当に私が不安になる程ならとんでもないダンジョンだと思うけど、それでもやる気に満ちている。
 そんなラギルを眺めて、ロイが唖然とした様子で尋ねる。

「凄いな……僕やカレンさん、ルート君でも最初ダンジョンに潜った時は恐怖したものだよ」

「ぼくは冒険者として何度かダンジョンに潜ったことがあるので、慣れていますし楽しみです」

「そういえば元冒険者だったね……なんだか、僕とは違う人種のようだ」

 ラギルは好奇心に溢れているけど、魔法学園に来た理由もそんな感じだったか。
 話を聞いて驚きと尊敬の声を漏らすロイだけど、レックス殿下は違う。

「俺もリリアンと一緒ならダンジョンは怖くない。むしろ緊張感が心地よいほどだ!」

「王子という立場ながら勇ましい、流石はレックス殿下です」

 レックス殿下が変な張り合いをしているけど、ラギルが頷く辺り共感を得ているのだろうか。
 私としては魔力領域とか魔力が溢れている場所が好きだから、ダンジョンはあまり興味がない。
 それでもダンジョンにしか生息していないモンスターの特殊な魔法は、興味がある。

 やっぱり冒険者になった方が、様々な魔法を知ることができて楽しそうだ。
 そう考えている中……私は、カレンとルートの様子がおかしいことに気づく。

「カレン、ルート様、どうしましたか?」

 カレンは何かを思案している様子で、ルートは俯いている。
 気になった私が尋ねると、ルートが真っ先に応えた。

「いえ……今のロイ様ならダンジョンも平気のはずですし、大丈夫だと思います」

「そうだね。そこまで強くないけど回復魔法が使えるし、安全になるかな」

 私と違い、ロイは回復魔法を隠す気はないようだ。
 回復魔法の力はカレンと同じ程度だと思うけど、二人がいればアクシデントにも対処できそう。
 ルートの励ましを受けて、ロイが微笑んでいる。
 同じ転生者のカレンが気がかりでいると、私を眺めて話す。

「なんでもありません――」

 ――カレンの発言は、轟音によって遮られる。
 魔法の実技授業に使っていた会場の壁が、突如強い衝撃を受けて砕けたからだ。
 とてつもない巨体の闘牛が、壁を破壊して現れる。
 破壊された壁の方向を眺めて、実技の授業を担任する先生が叫ぶ。

「魔獣!? それも、学園の魔獣とは違います!」

「生徒の方は速やかに避難してください!!」

 本来人が制御している魔獣が突然現れて、私はハッとする。
 確かゲームだと――実技の授業を受けていた時、こうして暴走した謎の魔獣の襲撃イベントが起きていたはず。

 本来なら二学期が始まってすぐに起きるイベントのはずだけど、それが一ヶ月経った今起きている?
 カレンが気にしていたのは、実技の授業中を警戒していたからなのかもしれない。
 ようやく思い返すことができた私は、魔獣を止めようと決意していた。

「私が魔獣を抑えます!」

「危険だ。俺が前に出よう!」

 そう言ってレックス殿下が前に出てくれて……私は安堵する。
 一学期に修羅場を潜り抜け、夏休みの鍛錬を経てレックス殿下は強くなっている。

 ゲームよりも遙かに強い私と戦っても戦力になる、素晴らしい前衛だ。
 これは強くなった私と並びたいというレックス殿下の想いによるもので、尊敬するしかない。

「お願いします……どうやら破壊した箇所から、別の魔獣も複数来ていますね」

 闘牛が更に一頭、その背後から山羊が三頭も姿を現している。
 どれも一学期の魔獣より遙かに強いけど……ゲームだと一頭しかいなかったはず。

 まさか五頭も現れるとは思わず、山羊の魔獣については一切知らない。
 山羊の鋭そうな角には膨大な魔力が宿っていることだけは理解して、私が話す。

「あの山羊の角に魔力が宿っています……かなり高度な魔法を扱えそうです」

「俺が牛を二頭倒し、リリアンは山羊の魔法を防ぐのがよさそうか」

 一緒に戦ってきたからか、私の意図を察してくれている。
 レックス殿下の発言に嬉しくなりながら、私は背中越しに賛同する。

「それでいきましょう。狙いは私のはずです」

 そう考えていたけど――魔獣の行動に、驚くこととなる。

「――えっ?」

 二頭の闘牛が、勢いよく私に迫ってきたのはわかる。
 問題は山羊の方で……角から魔法を放つも、一頭はレックス殿下の足止め。
 そして二頭の魔法による攻撃は、カレンに向けられていた。

「大丈夫です!」

 カレンは叫び、山羊の角から繰り出された魔力の閃光を魔法で防ぐ。
 ラギルが前に出て腰の鞘から抜いた剣で闘牛を弾き飛ばし、ロイの魔法で足を止めて、カレンが聖魔力による光の閃光を杖の先端から繰り出した。

 レックス殿下は魔力を込めた剣による一撃で闘牛の意識を奪い、もう一頭は私が暴風を杖から繰り出して吹き飛ばしている。
 山羊は魔法を使った反動か動けず、レックス殿下の一撃を受けて倒されていた。
 
「ふぅ……今の俺達なら、大した敵ではなかったな」

「そう、ですね」

 レックス殿下の発言を聞き、私は頷く。
 確かに……今の私達なら、この程度の敵は問題なく倒せる。
 ロウデス教がゲームより手段を選ばない可能性が高いのは、カレンと話して予想できていた。

「どうして……私を狙ったのでしょうか?」
 
 一番の問題は、ロウデス教が一番捕らえたい私ではなく、ゲームの主役カレンを狙ったことにある。
 ゲーム通り起きたイベントに、私は困惑するしかなかった。
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