愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓

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26話 王子視点

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 コリサはラミカを制御し、フロンを排除しようと目論んでいる。

 本来なら出すべきではない手紙を送ることにして、ゴーレムによる襲撃が失敗したことも想定していたようだ。

 宰相ギーマはマルクト伯爵の報告を待つようで、その間はラミカは何も知らせない。

 そしてエリクの行動次第で、フロンが城に乗り込んでくるとコリサは予測していた。

「その気になれば屋敷を風魔法で潰せるラミカ様に行動されないよう、フロンは先手を打つはずです」

「エリクに送った手紙を証拠として、フロンはラミカを糾弾するということか?」

「早急にラミカ様の暴走を止めるためには、それしか方法がありません。城の魔法士や王家を味方につけて、ラミカ様を止めようとするはずです」

 実際は宰相を中心とした魔法主義の者ばかりで、更に魔法士で貴族令息の男は全てラミカの愛人だ。

 父の国王はラミカに逆らえないし、手紙を証拠としても味方となるのは僅かな兵士達だけだろう。

 その兵士達も半分以上が辞めて、新兵は魔法士に従うという決意を持った者達ばかりらしい。

 もしフロンが城に乗り込んでくれば、その時が最期となるだろう。

「数日が経過しても何も起きなければ、ラミカ様にゴーレムが屋敷を壊していないと報告します。そうすれば手紙の内容を実行するため、ラミカ様は自らフロンの屋敷に攻め込むでしょう」

 今までは宰相が抑えていたが、今回は手紙を出したことでラミカは冷静でなくなる。

 誰が何を言っても魔法士として最強のラミカは止まることなく、ガラレド侯爵家を潰しそうだ。

「これは最後の手段ですね。平民の店はいいとしても、貴族の屋敷を潰せば他の貴族達から反感があります。フロンが城に乗り込んで来て、そこを迎え撃つのが理想です」

「コリサの言う通りだ。城の戦力なら、フロンがどんな手段を使ったとしても無意味に決まっている!」

 バラドは最悪の事態として、エリクが元共存派の魔法士を呼び乗り込んできた場合を想像する。

 今は大半が宰相によりミドアルダ国は魔法主義の国となって他の派閥は消滅したが、事情を話せば味方になる者は多そうだ。

 それでも城の戦力は絶大で、ラミカの他にも優秀な魔法士のコリサや宰相がいる。

 どう足掻いてもフロンが勝てるわけなくて、バラドは勝利を確信した。

(……フロンに未練があったのは間違いないが、もはやどうでもいい。最期ぐらい見届けたいものだ)

 城に乗り込んでくるのかわからないが、フロンの最期は近いだろう。

 そして翌日、バラドはフロンと再会することになる。
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