学園の華たちが婚約者を奪いに来る

nanahi

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8 友情

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「カリン、この前はありがとう」

学園の廊下で、ルアージュはカリンにダンスパーティのお礼を伝えていた。

「いいえ、少しはルアージュ様のお役に立てたみたいで嬉しいです」
「そういえば、君はいつからシャロンと友人なの?他のみなと違ってシャロンに優しいね」
「それはですね」

カリンはシャロンとの出会いを話し始めた。

「私の祖父は、昔、建築に明るくて国土院の顧問をしていたんです。
その時、上司にボツにされたシャロンのお父様の設計図をたまたま見たら、それは素晴らしい図面だったそうで。祖父はそのことを覚えていて、5年前に当家の屋敷を耐震工事するさいに、シャロンのお父様に個人的に依頼したんです」
「シャロンとはその時に?」
「はい。とても利発で優しい子だったから、すぐに仲良くなりました」
「それで今でもシャロンのことを」
「ええ。大事な親友です。絶対に幸せになってほしい。だから、ルアージュ様、シャロンのことお願いしますね」

ルアージュはうなずいた。
今はシャロンを傷つけてばかりいるダメな婚約者だけど、きっといつか、シャロンに笑ってほしい。

「絶対に幸せにするよ」

ルアージュの返答に、カリンはほっとしたように微笑んだ。




「ほんとしつこいらしいのよ、シャロンの父親」

カリンがシャロンに会いに隣のクラスに入るなり、侯爵令嬢のリュシエンヌがこれ見よがしに声を上げた。

「何度没にしても設計図をごり押ししてきて、お父様を困らせてるらしいの」
「リュシエンヌのお父様は国土院にお勤めなのよね」
「ええ。身の程知らずにも程があるわ。平民出のくせに」

またうちの悪口か。

シャロンは彼女たちの話には取り合わず、机でほおづえをつき横を向いていた。

「ちょっと、リュシエンヌ、そんな言い方ないんじゃない?シャロンのお父様はとても仕事熱心なだけよ!」

カリンが反論すると、リュシエンヌはカリンを見下したように鼻で笑った。

「子爵ごときが」

その言葉にカリンが切れた。

「なら言わせてもらうけど」
「私はいいから、カリン」

シャロンが慌ててカリンを止めようとしたが、カリンの怒りは止まらない。

「5年前に当家の屋敷の耐震工事をシャロンのお父様にお願いしたの。去年、大きな地震があったわよね?その時、うちの周辺の建物はほとんどが倒壊したり、壊滅状態だったの。
ところが、当家の屋敷だけは、無傷だったのよ。ねえ、確かリュシエンヌの屋敷も半分くらい倒壊したのよね?あなたの家門は国土院と強い繋がりがあるのに、どうして平民出のシャロンのお父様が工事した屋敷のほうが、丈夫だったの?」

リュシエンヌの美しい額にピキッと青筋が入った。
リュシエンヌの家は、公爵令嬢ソフィアと縁戚で、古来より国土院の上層部に名を連ねていた。

「そっ、そんなのたまたまでしょっ」

カリンの挑発にリュシエンヌはそう言い返すのがやっとだった。

「みんなも地震から生き残りたいのなら、屋敷の工事はシャロンのお父様にお願いするほうがいいわよ。一切の手抜きなしに、ベストな設計をしてくれるから」

カリンの暴露に、クラスはしばらくざわついていた。

カリン、すごいな。
ありがとう。

シャロンは勇気あるカリンを尊敬と感謝の眼差しで見ていた。

だが、このカリンの行動がのちにシャロンに辛い出来事をもたらすことになる。




「ソフィア!聞いてよ、ひどいのよ!」

リュシエンヌがソフィアのクラスに駆け込んだ。リュシエンヌはカリンに言われた内容を大げさに誇張して、ソフィアにまくしたてた。

「ふうん。我がレッドグレイブ家の縁戚であるリュシエンヌにそんな口をきいたの。生意気ね、とても」

ソフィアの青い目にくらい火が灯った。 




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