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8 グレイと見知らぬ令嬢
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のどかな午後だった。エルザはライアンと庭で花摘みをしていた。
「おかあさま、きれい」
一緒に作った花冠をエルザの頭にライアンが載せ微笑んだ時メイドが青ざめて飛んできた。
「お嬢様っ!!」
「一体、どうしたの?」
エルザとライアンがメイドを不思議そうに見上げた。
「グ、グレイ様がお見えで──」
「え!」
エルザは驚き勢いよく立ち上がった。そして胸騒ぎがしてライアンを抱きしめた。この胸騒ぎは当たっていた。
唐突に訪ねてきたグレイをエルザの家族は仕方なく迎えることになった。
「謝罪の手紙すらよこさずいきなり屋敷に来るなど何て不躾なやつだ!!」
侯爵は最初から怒り心頭である。本当は屋敷に入れたくなかったが一緒に同行している女が厄介だった。
「やあ。エルザ、久しぶり」
「……!」
客間にエルザが足を踏み入れたとたんグレイは片手を上げ挨拶をしてきた。
どのツラ下げてやって来たのか。
エルザは当然ながら不快げにグレイを見やった。
「何の用なの?あなたになんて会いたくないのに」
舐めるように自分を見てくるグレイにエルザは突き放すように言葉を返した。エルザはもうグレイに未練はなかった。天使のように可愛いライアンと両親がいる。それだけで十分だった。
「子どもは?」
いきなりグレイの隣にいる見知らぬ令嬢が口を挟んだ。上質だが派手目なドレスを身に纏いストレートの栗毛で勝気な煉瓦色の目をしていた。
「ライアンって言うんだろ?どこにいるんだ?」
ふたりはライアンを見たいようだった。ライアンは乳母と奥の部屋に行かせていた。
「エルザへの謝罪もなく無礼極まりないなグレイよ……!」
侯爵が怒りを抑えられない様子でグレイをたしなめた。妻のポーラは無言だったがその顔には怒りが浮かんでいた。
「ああ今まですみませんでした。僕の気まぐれで振り回してしまって」
グレイは髪をかき上げながらぺこりと侯爵に頭を下げた。
「君はそれで謝っていると思っているのか!?」
侯爵はグレイを睨みつけた。
気まぐれ……?
私は本気だったのに!?
エルザは軽薄なグレイを見ているうちにあの時の憎しみを思い出していた。
「ねえ、そろそろ子どもに会わせてくれる?」
グレイの隣の令嬢が身分も名乗らないうちから無神経な物言いをした。
「どうしてあなたに私の子どもを会わせないといけないの?」
カチンときたエルザは我慢ができず令嬢に言葉をぶつけた。
「ごめんごめん、エルザへの紹介がまだだったね。こちらは隣国トアン王国のゾフ男爵家のカミラだよ」
言い合いになる気配を感じ取りグレイが令嬢の紹介をした。
「ゾフ家め……」
侯爵が苦々しげに口を歪めた。無礼な若い女相手にどうして父は強く出ないのだろうとエルザは不思議に思ったがこれには理由があった。
身なりのいい格好をしていたので高位貴族かと思いきや男爵だという。だがただの男爵ではない。ゾフ家といえば貿易で成功しこの国でも名の知れた大富豪だった。隣国トアン王国では納税額が毎年一番となっており並みの王侯貴族より多くの財産を持っていると言われていた。
侯爵が屋敷に通さざるを得なかったのは相手がゾフ家の一人娘とわかり無下にできなかったためだ。ゾフ家はこの国の王侯貴族や商人たちとも取引関係があり侯爵の事情でゾフ家とトラブルになることは避けねばならなかった。
「おかあさま、きれい」
一緒に作った花冠をエルザの頭にライアンが載せ微笑んだ時メイドが青ざめて飛んできた。
「お嬢様っ!!」
「一体、どうしたの?」
エルザとライアンがメイドを不思議そうに見上げた。
「グ、グレイ様がお見えで──」
「え!」
エルザは驚き勢いよく立ち上がった。そして胸騒ぎがしてライアンを抱きしめた。この胸騒ぎは当たっていた。
唐突に訪ねてきたグレイをエルザの家族は仕方なく迎えることになった。
「謝罪の手紙すらよこさずいきなり屋敷に来るなど何て不躾なやつだ!!」
侯爵は最初から怒り心頭である。本当は屋敷に入れたくなかったが一緒に同行している女が厄介だった。
「やあ。エルザ、久しぶり」
「……!」
客間にエルザが足を踏み入れたとたんグレイは片手を上げ挨拶をしてきた。
どのツラ下げてやって来たのか。
エルザは当然ながら不快げにグレイを見やった。
「何の用なの?あなたになんて会いたくないのに」
舐めるように自分を見てくるグレイにエルザは突き放すように言葉を返した。エルザはもうグレイに未練はなかった。天使のように可愛いライアンと両親がいる。それだけで十分だった。
「子どもは?」
いきなりグレイの隣にいる見知らぬ令嬢が口を挟んだ。上質だが派手目なドレスを身に纏いストレートの栗毛で勝気な煉瓦色の目をしていた。
「ライアンって言うんだろ?どこにいるんだ?」
ふたりはライアンを見たいようだった。ライアンは乳母と奥の部屋に行かせていた。
「エルザへの謝罪もなく無礼極まりないなグレイよ……!」
侯爵が怒りを抑えられない様子でグレイをたしなめた。妻のポーラは無言だったがその顔には怒りが浮かんでいた。
「ああ今まですみませんでした。僕の気まぐれで振り回してしまって」
グレイは髪をかき上げながらぺこりと侯爵に頭を下げた。
「君はそれで謝っていると思っているのか!?」
侯爵はグレイを睨みつけた。
気まぐれ……?
私は本気だったのに!?
エルザは軽薄なグレイを見ているうちにあの時の憎しみを思い出していた。
「ねえ、そろそろ子どもに会わせてくれる?」
グレイの隣の令嬢が身分も名乗らないうちから無神経な物言いをした。
「どうしてあなたに私の子どもを会わせないといけないの?」
カチンときたエルザは我慢ができず令嬢に言葉をぶつけた。
「ごめんごめん、エルザへの紹介がまだだったね。こちらは隣国トアン王国のゾフ男爵家のカミラだよ」
言い合いになる気配を感じ取りグレイが令嬢の紹介をした。
「ゾフ家め……」
侯爵が苦々しげに口を歪めた。無礼な若い女相手にどうして父は強く出ないのだろうとエルザは不思議に思ったがこれには理由があった。
身なりのいい格好をしていたので高位貴族かと思いきや男爵だという。だがただの男爵ではない。ゾフ家といえば貿易で成功しこの国でも名の知れた大富豪だった。隣国トアン王国では納税額が毎年一番となっており並みの王侯貴族より多くの財産を持っていると言われていた。
侯爵が屋敷に通さざるを得なかったのは相手がゾフ家の一人娘とわかり無下にできなかったためだ。ゾフ家はこの国の王侯貴族や商人たちとも取引関係があり侯爵の事情でゾフ家とトラブルになることは避けねばならなかった。
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