5 / 6
5
しおりを挟む
「魔物封じの石柱??」
陛下の話に、ドミニクはピンときていないようだ。
「我が国の国境付近に設置している水晶の石柱だ。空間のひずみから魔物が侵入してくるのを抑えておった」
「え!そんな大事なものをバーバラが壊した?」
ドミニクは再び疑念の目をバーバラに向けた。
「濡れ衣ですわ!私のようなひ弱な令嬢に、そんな恐ろしいことができるはずありませんわ!!」
バーバラはまたしても白を切り、傷ついた表情で陛下に訴えた。陛下は顔色ひとつ変えず、侍従に命じた。
「証人をここへ」
背後から、一人の下人が進み出た。巨漢で力が強そうな男だった。
「!!」
下人を見たバーバラが息を呑む。
「申せ」
陛下の命令に背中を押されるように、その男はおどおどと告白を始めた。
「オオ、オーバル子爵家の下男、サムでございます。バ、バーバラお嬢様に、その、石柱を壊すよう命じられました」
「いつ頃か?」
「カミーユ様が王宮にいらっしゃる、数ヶ月前くらいです」
ちょうど魔物がアンクタン王国に侵入し始めた頃だわ。
バーバラのせいだったの?
「壊した石柱は一本だけか?」
陛下の質問に下人は続けて答えた。
「いいえ。カミーユ様がいらっしゃってからは、一週間に一本ずつ壊せと」
「まさかもう石柱は全て──」
さすがの陛下も不吉な予感に顔が曇る。
「はい。一本も残っておりません」
「!!」
一同、呆気に取られている。
魔物封じの石柱は、力の強い聖女だった先先代の王妃様が設置させたものだった。
「どうりで魔物をいくら退けても減らなかったわけだわ」
私はあの時のつらさを思い出し、バーバラを怒りを持って睨んだ。
「なぜそんなことをした。王国に危機をもたらす重罪だぞ。カミーユの食事を減らしたばかりか、故意に魔物を侵入させ、カミーユを衰弱させた罪もある!」
陛下の問いかけに、バーバラはついっと顔を背けて答えた。
「記憶にありませんわ。その下人には虚言癖があって、私もほとほと参っていますの」
「お嬢様!」
下人が裏切られたという顔をした。
「お前はクビよ!!病気の母親のことも、もう知らないわ!!」
下人の弱みにつけ込んでいたのか。
それなのに忠実な下人を切り捨てようとしている。
私はバーバラの本性に寒気がした。
「わしは嘘などついていません!褒美としてバーバラ様はわしにこれをくださいました!」
下人が布を開いて差し出したのは、薔薇の形にルビーが施された見事な指輪だった。
「まだ売ってなかったの!?お前が石柱を壊すのをしぶるから与えてやったのに!!」
口から思わず本音が転がり出て、慌ててバーバラは口を塞いだ。
「こ、これは王妃の指輪!!代々王妃にだけ受け継がれる家宝ではないか……!!」
陛下がわなわなと震え出した。
「ドミニク!!お前はこんな大事なものをこのような小娘に与えたのか!??」
卒倒しそうな勢いで陛下は殿下を叱咤した。
「だだだ、だってバーバラが。どうしても欲しいというから……!」
私は何度頭を抱えればいいのだろう。
バーバラもバーバラだが、殿下も大概だ。
「バーバラが悪いんだぞ!私はお前を信じていたのに、なんでそんな事をしたんだ!?」
殿下は取り乱しながら、バーバラを弾糾した。
「ああ、ああ、もう面倒くさ」
悪事がばれたバーバラが脱力したように頭を傾けた。
「そんなに知りたいなら教えてやるわよ」
令嬢から売女のように変わったバーバラの告白が始まった。
「私はどうしても王太子妃になりたかった。この国では聖女が王妃になりやすい。そのために最初石柱を壊させた。私のおばあ様は聖女だったから、少しの魔物なら私にも退治できると思って」
「退治できたの?」
私の問いに、バーバラは両手を開いてお手上げのポーズをした。
「できなかったわ、一匹も。そうこうするうちに、あんたが王太子妃に決まって王宮にやってきた」
バーバラは憎悪の目で私を睨んだ。
「癪だったわ。私の座を奪われた気がして。お前を壊して殿下を奪ってやると思ったわ!」
とんだ逆恨みだ。
自分で厄災を招いておいて、私に尻拭いさせていたのか。その上さらに私を痛めつけていた。
絶望した殿下は今やバーバラを魔女を見るような目で見ている。
「お前のような者が王太子妃になれるわけがなかろう?占いの真似事しかできぬお前など、カミーユの足元にも及ばんのだぞ!」
陛下の白髭がゆれた。陛下の怒りは収まらない。
「王国を危機に陥れた罪に加え、この国の宝となるはずだった未来の王太子妃カミーユにも危害を加えた。オバール子爵家バーバラ。お前を極刑に処す!!」
最後に陛下が怒号を発した。
バーバラのプライドは完膚なきまで叩き潰された。
「くくくくく……」
バーバラはふいに不気味に笑いはじめた。バーバラは観念するどころか、断罪された怒りですぐさま無茶な行動に出た。
「カミーユを道連れにしてやる!!!」
自暴自棄になったバーバラは勢いよく私の右手を掴んだ。
私は危険を察して手を振り解こうとしたが、バーバラは鬼の形相で私の手を離さなかった。
バーバラの暴走が悲劇を呼んだ。
陛下の話に、ドミニクはピンときていないようだ。
「我が国の国境付近に設置している水晶の石柱だ。空間のひずみから魔物が侵入してくるのを抑えておった」
「え!そんな大事なものをバーバラが壊した?」
ドミニクは再び疑念の目をバーバラに向けた。
「濡れ衣ですわ!私のようなひ弱な令嬢に、そんな恐ろしいことができるはずありませんわ!!」
バーバラはまたしても白を切り、傷ついた表情で陛下に訴えた。陛下は顔色ひとつ変えず、侍従に命じた。
「証人をここへ」
背後から、一人の下人が進み出た。巨漢で力が強そうな男だった。
「!!」
下人を見たバーバラが息を呑む。
「申せ」
陛下の命令に背中を押されるように、その男はおどおどと告白を始めた。
「オオ、オーバル子爵家の下男、サムでございます。バ、バーバラお嬢様に、その、石柱を壊すよう命じられました」
「いつ頃か?」
「カミーユ様が王宮にいらっしゃる、数ヶ月前くらいです」
ちょうど魔物がアンクタン王国に侵入し始めた頃だわ。
バーバラのせいだったの?
「壊した石柱は一本だけか?」
陛下の質問に下人は続けて答えた。
「いいえ。カミーユ様がいらっしゃってからは、一週間に一本ずつ壊せと」
「まさかもう石柱は全て──」
さすがの陛下も不吉な予感に顔が曇る。
「はい。一本も残っておりません」
「!!」
一同、呆気に取られている。
魔物封じの石柱は、力の強い聖女だった先先代の王妃様が設置させたものだった。
「どうりで魔物をいくら退けても減らなかったわけだわ」
私はあの時のつらさを思い出し、バーバラを怒りを持って睨んだ。
「なぜそんなことをした。王国に危機をもたらす重罪だぞ。カミーユの食事を減らしたばかりか、故意に魔物を侵入させ、カミーユを衰弱させた罪もある!」
陛下の問いかけに、バーバラはついっと顔を背けて答えた。
「記憶にありませんわ。その下人には虚言癖があって、私もほとほと参っていますの」
「お嬢様!」
下人が裏切られたという顔をした。
「お前はクビよ!!病気の母親のことも、もう知らないわ!!」
下人の弱みにつけ込んでいたのか。
それなのに忠実な下人を切り捨てようとしている。
私はバーバラの本性に寒気がした。
「わしは嘘などついていません!褒美としてバーバラ様はわしにこれをくださいました!」
下人が布を開いて差し出したのは、薔薇の形にルビーが施された見事な指輪だった。
「まだ売ってなかったの!?お前が石柱を壊すのをしぶるから与えてやったのに!!」
口から思わず本音が転がり出て、慌ててバーバラは口を塞いだ。
「こ、これは王妃の指輪!!代々王妃にだけ受け継がれる家宝ではないか……!!」
陛下がわなわなと震え出した。
「ドミニク!!お前はこんな大事なものをこのような小娘に与えたのか!??」
卒倒しそうな勢いで陛下は殿下を叱咤した。
「だだだ、だってバーバラが。どうしても欲しいというから……!」
私は何度頭を抱えればいいのだろう。
バーバラもバーバラだが、殿下も大概だ。
「バーバラが悪いんだぞ!私はお前を信じていたのに、なんでそんな事をしたんだ!?」
殿下は取り乱しながら、バーバラを弾糾した。
「ああ、ああ、もう面倒くさ」
悪事がばれたバーバラが脱力したように頭を傾けた。
「そんなに知りたいなら教えてやるわよ」
令嬢から売女のように変わったバーバラの告白が始まった。
「私はどうしても王太子妃になりたかった。この国では聖女が王妃になりやすい。そのために最初石柱を壊させた。私のおばあ様は聖女だったから、少しの魔物なら私にも退治できると思って」
「退治できたの?」
私の問いに、バーバラは両手を開いてお手上げのポーズをした。
「できなかったわ、一匹も。そうこうするうちに、あんたが王太子妃に決まって王宮にやってきた」
バーバラは憎悪の目で私を睨んだ。
「癪だったわ。私の座を奪われた気がして。お前を壊して殿下を奪ってやると思ったわ!」
とんだ逆恨みだ。
自分で厄災を招いておいて、私に尻拭いさせていたのか。その上さらに私を痛めつけていた。
絶望した殿下は今やバーバラを魔女を見るような目で見ている。
「お前のような者が王太子妃になれるわけがなかろう?占いの真似事しかできぬお前など、カミーユの足元にも及ばんのだぞ!」
陛下の白髭がゆれた。陛下の怒りは収まらない。
「王国を危機に陥れた罪に加え、この国の宝となるはずだった未来の王太子妃カミーユにも危害を加えた。オバール子爵家バーバラ。お前を極刑に処す!!」
最後に陛下が怒号を発した。
バーバラのプライドは完膚なきまで叩き潰された。
「くくくくく……」
バーバラはふいに不気味に笑いはじめた。バーバラは観念するどころか、断罪された怒りですぐさま無茶な行動に出た。
「カミーユを道連れにしてやる!!!」
自暴自棄になったバーバラは勢いよく私の右手を掴んだ。
私は危険を察して手を振り解こうとしたが、バーバラは鬼の形相で私の手を離さなかった。
バーバラの暴走が悲劇を呼んだ。
774
あなたにおすすめの小説
氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。
吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!
ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。
ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~
小説家になろうにも投稿しております。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる