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11 訪問 沙耶視点
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夜、私が最寄駅の改札から自宅へ向かおうとしたとき、優斗が目の前にいた。
「──ッ!!?」
ギクッとした。
なんか、異様だった。
約束もしてないのに。
住所も教えてないのに。
この前、住宅街で会ったから、目星を付けてずっと駅で見張ってたの?
「急にごめん。返事が来ないから心配になって」
無言の私に優斗が切り出した。
「あ、ああ。こっちこそごめんね。仕事が立て込んでて返事遅れちゃってて」
確かに既読スルーはよくなかった。
ちゃんと断りの返事をすればよかったのに、その勇気が私にはなかった。
「評判のスイーツ買ってきたんだ。部屋に行ってもいい?」
「(は)!?」
私は一瞬硬直した。
妻子持ちなのに元カノの部屋に上がる気なの??
「いや、それは無理だから。ごめん」
さすがに私は断った。
「ほんと返事遅れてごめんね。会うのはまずいと思うの。奥さんもお子さんもいるでしょ?誤解を招いたら申し訳ないわ」
「いや大丈夫。蘭は知ってる」
──どういうこと!???
私は頭が混乱した。
「沙耶にちょっと相談があって。ここに来たことは蘭の了承を得てる。だから何の問題もないんだ」
いや、何でそうなるの??
私が拒否してるのに。
「ごめんなさい!無理なのっ」
私は優斗から逃げ出した。
「ちょ──!沙耶!!」
優斗は追いかけてきた。
私はタクシーに飛び乗り、「ストーカーです!車出してください!!」と運転手さんに頼んだ。
タクシーを残念そうに見送っている優斗の姿がどんどん小さくなっていって私はほっとした。
「大丈夫かい?玄関に入る時、気をつけるんだよ」
自宅マンションの前で下ろしてくれた運転手さんが気遣いの言葉をかけてくれた。
「お気遣いありがとうございます。助かりました」
私がもうすぐ玄関に着きそうになった時。
「!?」
ぐいっと私の腕が掴まれ、私はマンションの暗い壁の所まであっという間に引きずられていった。
「ごめん、強引なことして」
優斗だった。
すごい力で私の腕を握っている。
「痛い。離して」
怖かった。
刺激したら何をされるかわからなかったから、平静を装った。
「ごめん。でもわかってほしい」
優斗は私を壁に押し付けて、両手を壁につき、逃がさないようにした。
私は小刻みに震えていた。
優斗の目が怖かった。
何かに酔っているかのようなその目が。
「あの時はごめん。子供ができて、どうしようもなかったんだ。でも今になって後悔してる。俺はやっぱり沙耶と──」
優斗の顔が私に迫ってくる。
なんで今更!?
あんな酷いフリ方をして、私が平気だったとでも!??
私は怒りが込み上げてきて、顔を背けて逃げようとした。
「待って!!」
優斗は私の手首を強く掴んで離さない。
「嫌!離して!!」
「誤解なんだ!」
誤解?
何が????
「沙耶、俺に惚れてただろ?」
────は?
「俺だって本当は別れたくなかったんだ。元の俺たちに戻らないか」
私は吐き気がしてきた。
優斗の考えは理解できない。
優斗に貸したきり返ってこない200万も、もう連絡を取りたくないから催促しなかったのに。
それを平気でいる人となんて。
「やめて!無理なものは無理なの!」
「おい!!」
私が優斗に抵抗していると、誰かの声が飛んできた。
「君、何してるんだ!」
一条専務だった。
優斗は声の主を一瞬睨んだけど、一条専務だとわかり、作り笑いをした。
「すみません。僕たちの問題なんです。心配はいりません」
「でも、沙耶さん嫌がってただろう?」
「ちょっとしたケンカです。お騒がせしてすみませんでした。沙耶、部屋に行こう」
蒼白な顔で震えて涙ぐんでいる私の様子に一条専務が勘付いた。
「取り込み中すまないが、実は沙耶さんと仕事の約束をしていてね。スマホに連絡したんだけど、出ないからこちらに来てみたんだよ。会社の極秘事項だから三橋くんには詳しくは話せないけど、至急の案件なんだ」
優斗は不服そうに眉をひそめたが、専務の用事を無下にするわけにもいかず、しぶしぶ私の手を離した。
助かった────
「また来るから」と言って去っていく優斗の背中に戦慄を覚えながら、私は一条専務にお礼を言った。
「ありがとうございました。本当は困ってたんです」
一条専務が機転をきかせてくれて助かった。
「着信は本当なんだけどね」
一条専務の言葉に私が慌ててスマホをチェックすると、確かに専務からの着信とメッセージが入っていた。
ちょうど優斗から逃げていた時だから気づかなかったんだ。
「連絡くださってたんですね、気づかなくてごめんなさい」
そう言った私の手を専務がそっと握った。
「!?」
私がびっくりして見上げると、専務はすごく優しい顔でこう言った。
「大丈夫かい?かわいそうに、震えて。すごく怖かっただろう」
私は優しい言葉をかけられて、急に涙が溢れてきた。
私にハンカチを差し出した後、泣いている間、専務はずっと私のそばにいてくれた。
「警察に行こう。三橋くんは確か沙耶さんの元彼だよね。たぶん彼はストーカーになってる」
専務の言葉に一瞬そうしようと思ったけど、私の脳裏に優斗の赤ちゃんが浮かんだ。
まだ小さくて、か弱い存在。
父親が警察に呼ばれるなんて、赤ちゃんがかわいそうかもしれない。
「警察は待ってください。まだ事を荒立てたくなくて。すみません、心配してくださったのに」
「いや、君がそれでいいのなら。もし何か困ったら遠慮なく僕に連絡してもらっていいからね」
専務は穏やかに私に言った。
「──ッ!!?」
ギクッとした。
なんか、異様だった。
約束もしてないのに。
住所も教えてないのに。
この前、住宅街で会ったから、目星を付けてずっと駅で見張ってたの?
「急にごめん。返事が来ないから心配になって」
無言の私に優斗が切り出した。
「あ、ああ。こっちこそごめんね。仕事が立て込んでて返事遅れちゃってて」
確かに既読スルーはよくなかった。
ちゃんと断りの返事をすればよかったのに、その勇気が私にはなかった。
「評判のスイーツ買ってきたんだ。部屋に行ってもいい?」
「(は)!?」
私は一瞬硬直した。
妻子持ちなのに元カノの部屋に上がる気なの??
「いや、それは無理だから。ごめん」
さすがに私は断った。
「ほんと返事遅れてごめんね。会うのはまずいと思うの。奥さんもお子さんもいるでしょ?誤解を招いたら申し訳ないわ」
「いや大丈夫。蘭は知ってる」
──どういうこと!???
私は頭が混乱した。
「沙耶にちょっと相談があって。ここに来たことは蘭の了承を得てる。だから何の問題もないんだ」
いや、何でそうなるの??
私が拒否してるのに。
「ごめんなさい!無理なのっ」
私は優斗から逃げ出した。
「ちょ──!沙耶!!」
優斗は追いかけてきた。
私はタクシーに飛び乗り、「ストーカーです!車出してください!!」と運転手さんに頼んだ。
タクシーを残念そうに見送っている優斗の姿がどんどん小さくなっていって私はほっとした。
「大丈夫かい?玄関に入る時、気をつけるんだよ」
自宅マンションの前で下ろしてくれた運転手さんが気遣いの言葉をかけてくれた。
「お気遣いありがとうございます。助かりました」
私がもうすぐ玄関に着きそうになった時。
「!?」
ぐいっと私の腕が掴まれ、私はマンションの暗い壁の所まであっという間に引きずられていった。
「ごめん、強引なことして」
優斗だった。
すごい力で私の腕を握っている。
「痛い。離して」
怖かった。
刺激したら何をされるかわからなかったから、平静を装った。
「ごめん。でもわかってほしい」
優斗は私を壁に押し付けて、両手を壁につき、逃がさないようにした。
私は小刻みに震えていた。
優斗の目が怖かった。
何かに酔っているかのようなその目が。
「あの時はごめん。子供ができて、どうしようもなかったんだ。でも今になって後悔してる。俺はやっぱり沙耶と──」
優斗の顔が私に迫ってくる。
なんで今更!?
あんな酷いフリ方をして、私が平気だったとでも!??
私は怒りが込み上げてきて、顔を背けて逃げようとした。
「待って!!」
優斗は私の手首を強く掴んで離さない。
「嫌!離して!!」
「誤解なんだ!」
誤解?
何が????
「沙耶、俺に惚れてただろ?」
────は?
「俺だって本当は別れたくなかったんだ。元の俺たちに戻らないか」
私は吐き気がしてきた。
優斗の考えは理解できない。
優斗に貸したきり返ってこない200万も、もう連絡を取りたくないから催促しなかったのに。
それを平気でいる人となんて。
「やめて!無理なものは無理なの!」
「おい!!」
私が優斗に抵抗していると、誰かの声が飛んできた。
「君、何してるんだ!」
一条専務だった。
優斗は声の主を一瞬睨んだけど、一条専務だとわかり、作り笑いをした。
「すみません。僕たちの問題なんです。心配はいりません」
「でも、沙耶さん嫌がってただろう?」
「ちょっとしたケンカです。お騒がせしてすみませんでした。沙耶、部屋に行こう」
蒼白な顔で震えて涙ぐんでいる私の様子に一条専務が勘付いた。
「取り込み中すまないが、実は沙耶さんと仕事の約束をしていてね。スマホに連絡したんだけど、出ないからこちらに来てみたんだよ。会社の極秘事項だから三橋くんには詳しくは話せないけど、至急の案件なんだ」
優斗は不服そうに眉をひそめたが、専務の用事を無下にするわけにもいかず、しぶしぶ私の手を離した。
助かった────
「また来るから」と言って去っていく優斗の背中に戦慄を覚えながら、私は一条専務にお礼を言った。
「ありがとうございました。本当は困ってたんです」
一条専務が機転をきかせてくれて助かった。
「着信は本当なんだけどね」
一条専務の言葉に私が慌ててスマホをチェックすると、確かに専務からの着信とメッセージが入っていた。
ちょうど優斗から逃げていた時だから気づかなかったんだ。
「連絡くださってたんですね、気づかなくてごめんなさい」
そう言った私の手を専務がそっと握った。
「!?」
私がびっくりして見上げると、専務はすごく優しい顔でこう言った。
「大丈夫かい?かわいそうに、震えて。すごく怖かっただろう」
私は優しい言葉をかけられて、急に涙が溢れてきた。
私にハンカチを差し出した後、泣いている間、専務はずっと私のそばにいてくれた。
「警察に行こう。三橋くんは確か沙耶さんの元彼だよね。たぶん彼はストーカーになってる」
専務の言葉に一瞬そうしようと思ったけど、私の脳裏に優斗の赤ちゃんが浮かんだ。
まだ小さくて、か弱い存在。
父親が警察に呼ばれるなんて、赤ちゃんがかわいそうかもしれない。
「警察は待ってください。まだ事を荒立てたくなくて。すみません、心配してくださったのに」
「いや、君がそれでいいのなら。もし何か困ったら遠慮なく僕に連絡してもらっていいからね」
専務は穏やかに私に言った。
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