フッてくれてありがとう

10 訪問 優斗視点

蘭のほうから元カノに会うように言われ、内心、ビクッとした。

いいタイミングだったかもしれない。

実は、祝賀パーティ以来、沙耶のことが俺の頭から離れなくなって、思い詰めた俺は沙耶に「会いたい」ってメッセージを送ってしまっていた。

蘭が勘づいたのかとヒヤリとしたが、どうも違うらしい。
沙耶のお金が目当てのようだ。

沙耶に会う口実ができるのなら何でもいい。
変に勘繰られたら「お金のためだ。お前が言ったんだろう」と言えば、蘭の目を誤魔化せる。


それにしても沙耶から返事が来ないな。
まさか既読スルー?

俺が既婚者だから遠慮してるのかもしれないな。
だったらそれは気の毒だ。

沙耶は俺に惚れていた。
別れは寂しかったに違いない。

あの日、傷つけてしまったことを謝ろう。
そうすれば、昔のように戻れるかもしれない。

物件の見学に行った住宅街に行ってみよう。
今億り人だということは、たぶんあの辺に住んでるんじゃないかな。

沙耶、俺が会いに行ったら喜んでくれるかな。
何かスイーツを持参して、部屋に上がらせてもらおう。
久々に沙耶とゆっくり話をしたい。

俺は蘭に「お金の相談に行ってくる」と伝えて、さっそく身綺麗にして沙耶のもとへと向かった。