政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi

文字の大きさ
11 / 18

11 破滅の息子

しおりを挟む
「あの女に会ったらダメだと言ったでしょう!?」

塔の部屋からポリーヌの怒声が聞こえる。

「嫌だ」

ロビンが抵抗している。

「あの女と母は敵なのよ?敵と仲良くしてどうするの!?」

ポリーヌの怒りは治らない。侍従からイーリスとロビンが一緒に部屋にいたことを聞いたのだろう。

「敵じゃない!あの人は、僕の友達でお姉さんで恋人で母上だ!!!」

ポリーヌははちゃめちゃなロビンの例えに顔を引きつらせた。

「母上は私でしょう!!??」
「お前は母じゃない!ただのおばさんだ!」
「な──!!!」

堪忍袋の尾が切れた。ポリーヌはロビンの頬を渾身の力でぶった。

「痛ッ」

ロビンは痛みで目に涙をため、ポリーヌを睨んだ。

「このクソがあ!!!」

罵声と共にポリーヌにつかみかかった。

「殿下おやめください!!」

侍従と侍女が数人がかりで二人を引き離した。ポリーヌは頬に痛みを感じ手で触れると、血がついた。

「あさましいクソ息子が…!!」

そう言って乱暴に扉を閉じ、外から鍵をかけた。

「出せ!クソあまが!」

ガンガン扉を蹴るロビンに構うことなく、ポリーヌは背を向けた。

お前のせいで、お前のせいで、私がどれだけ辛酸をなめてきたか…!

ポリーヌは体から吹き出るほどの怒りを感じていた。

お前がしっかりした息子だったら、何の問題もなく王太子になれただろうに…!

何度教えても覚えが悪く、すぐに癇癪をおこし暴れる。
しまいには。しまいにはあんなことを──

お前は私の役に立つのよ。
それしかお前が生きている意味はないのよ。

ポリーヌは塔の階段を降りていくうちに冷静さを取り戻した。

「あとでロビンの好きなお菓子でも差し入れておいて」
「かしこまりました」

そう侍従に命じたあと、ドレスの裾を直し歩き始めた。



「おいたわしいこと」

マリアが頬を血で滲ませているポリーヌを見かけ、つぶやいた。

ロビン破滅をかかえこんでお気の毒。それに比べ私は」

先を歩いていたオリヴァーが振り返り、マリアに輝く笑顔を向ける。

「お前こそ相応しい。この国の王太子に」

マリアは誇らしげに微笑んだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

家族から虐げられた令嬢は冷血伯爵に嫁がされる〜売り飛ばされた先で温かい家庭を築きます〜

香木陽灯
恋愛
「ナタリア! 廊下にホコリがたまっているわ! きちんと掃除なさい」 「お姉様、お茶が冷めてしまったわ。淹れなおして。早くね」 グラミリアン伯爵家では長女のナタリアが使用人のように働かされていた。 彼女はある日、冷血伯爵に嫁ぐように言われる。 「あなたが伯爵家に嫁げば、我が家の利益になるの。あなたは知らないだろうけれど、伯爵に娘を差し出した家には、国王から褒美が出るともっぱらの噂なのよ」   売られるように嫁がされたナタリアだったが、冷血伯爵は噂とは違い優しい人だった。 「僕が世間でなんと呼ばれているか知っているだろう? 僕と結婚することで、君も色々言われるかもしれない。……申し訳ない」 自分に自信がないナタリアと優しい冷血伯爵は、少しずつ距離が近づいていく。 ※ゆるめの設定 ※他サイトにも掲載中

大公殿下と結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい

Ruhuna
恋愛
容姿端麗、才色兼備の姉が実は私を呪っていたらしい    そんなこととは知らずに大公殿下に愛される日々を穏やかに過ごす 3/22 完結予定 3/18 ランキング1位 ありがとうございます

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

私の物をなんでも欲しがる義妹が、奪った下着に顔を埋めていた

ばぅ
恋愛
公爵令嬢フィオナは、義母と義妹シャルロッテがやってきて以来、屋敷での居場所を失っていた。 義母は冷たく、妹は何かとフィオナの物を欲しがる。ドレスに髪飾り、果ては流行りのコルセットまで――。 学園でも孤立し、ただ一人で過ごす日々。 しかも、妹から 「婚約者と別れて!」 と突然言い渡される。 ……いったい、どうして? そんな疑問を抱く中、 フィオナは偶然、妹が自分のコルセットに顔を埋めている衝撃の光景を目撃してしまい――!? すべての誤解が解けたとき、孤独だった令嬢の人生は思わぬ方向へ動き出す! 誤解と愛が入り乱れる、波乱の姉妹ストーリー! (※百合要素はありますが、完全な百合ではありません)

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

処理中です...