縁の鎖

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それぞれの岐路

フィサリス

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首を切り落とされたフィサリスだったが、それで終わりではなかった。
生きた屍となったフィサリスの胴体は火刑に処された。
頭部に意識がある為、体が燃えた事は分かっている。

『私の体は燃やされたのね。熱さが伝わってくる。この勢いだと、骨も残らないわね。これも全て、あの女の所為!』


カーネリアンが献身的に語りかけ続けていた。

「フィサリス、今日は天気が良く学園の庭園でお茶をした事を思い出すね。」
『・・・。』

「フィサリス、綺麗な花だろ?教会の庭で育てているんだよ。君にも見てもらおうと思って、持って来たんだ。」
『・・・。』


カーネリアンが永遠の宝玉エテルネルスフェールの牢番になって10年が経った。

「今日は外が騒がしいな。窓を閉めておこうか?」
ふるふる。
『・・・。』
「閉めなくていいのかい?」
こくり。
『・・・。』

いつも冷ややかな目を向けて無反応だったフィサリスが、この日はカーネリアンの問いかけに意思表示を示した。

『お義姉様の戴冠式が行われているのね。天と地ほどの差があったにも関わらず、私は欲をかいてしまったのね。お母様も身の丈に合わない欲をかいて、身を滅ぼした。私達親子は本当に愚かだったのね。これもライの一族のさがなのかも知れないわね。ニセモノがホンモノにとって変われないのにね。お母様に誓ったはずだったのに。』

フィサリスは岩壁洞窟の崖で、ダチュラに誓いを立てていた。
ダチュラ様にはならないと。
ダチュラは一人で茨の道いばらの道を歩んだけれど、フィサリスは周りに居る者と共に歩むと。
ダチュラとは違うやり方で、誰よりも幸せを掴むと。

『私が次に岩壁洞窟の崖へ行く時は、誰よりも幸せになり、お義姉様が持ち合わせているモノを全て手に入れた時と思い描いていたのよ。なのに。なのに!あの女の所為で!憎い!憎い!恨めしい!許せない!』

フィサリスの封印されている永遠の宝玉エテルネルスフェールの色が濁る。

「フィサリス、窓を閉めるぞ。今日の喧騒は、お前の憎しみを助長してしまう。憎しみは、全て私に向けなさい。私が父親として役不足だったために、お前を苦しめてしまったんだ。すまない。」

ジェイドがフィサリスを宥めるが、その目には憎しみしか映らない。

それでもカーネリアンとジェイドの語りがけで、徐々に穏やかな表情を見せる様になっていった。


カーネリアンは88歳でその生涯を閉じた。
カーネリアンがこの世を去った日、フィサリスは早朝から穏やかな笑みを称えていた。
そして黄昏時、眩い光と共に泡と消えた。



「フィサリス!待っていたよ。」
「バカね。私なんかを待っているなんて。」
「私は何時迄も待っているさ。国を裏切り地位を捨ててでも、本当の愛を欲したのだから。」
「呆れるわ。私を最後まで想い続けるなんて…。蠱惑の妖力が切れた時、あのままお義姉様を選んでいれば今頃は、国王として大勢の人達に看取られていたでしょうに。」
「愛する者の側に居る。それが私には、万人に看取られるより、大切なモノだったんだよ。」
「本当にバカな人…。」
「ああ。私は世界一の大バカ者で、幸せ者だよ。」
「・・・でも・・・ありがとう。こんな毒婦を愛してくれて。」
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