側近女性は迷わない

中田カナ

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第3話

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「貴女に謝ろうと思って、ずっと待っていた」
 座り込んだまま私を見上げて話す殿下。

「わざわざ鍵をかけて、いないふりをして、ですか?」
「誰かいるとわかったら貴女が入りづらいだろうと思ったから」
 本来はこういう気遣いが出来る人なんだけどなぁ。
「お気遣いありがとうございます。ああ、それからクッキーもありがとうございました。食欲がなかったので明日にでもいただきますね」
 殿下がようやく顔を上げる。
「え、食欲がない?大丈夫なのか?」
 殿下が心配そうな顔をしているので笑顔で答える。
「今はもうだいぶ落ち着きましたし、一晩ぐっすり眠れば気持ちも晴れると思いますので」
 気持ちの切り替えは早い方だから、きっと大丈夫。
 今が夕方でよかった。この薄暗さなら泣いた後の顔もきっとよくわからないはず。

 のそのそと立ち上がった殿下が私の方を向いて深々と頭を下げる。
「昼間の件、本当にすまなかった」
 王族に頭を下げさせるなんてとんでもないことである。
「殿下、どうか頭をお上げください!謝罪は不要と申し上げたはずですわ。あのように本音というものは本人がいないところで出るということがよくわかりましたしね」
 頭を上げてため息をつく殿下。
「まったくその通りだな。あいつらは明日から来なくていいと言った。いつまで経っても幼馴染気分が抜けず、仕事もほとんど貴女に任せてしまって満足にこなせない。そして何より貴女に対しての無礼極まりない発言は許しがたい。このまま側近からはずれてもらうことになるだろう」
「厳しいですね」
「これが初回だったらまだ温情もあっただろうが、貴女が加入する前から問題をいくつか起こしていたからな」
 幼馴染の側近達は高位貴族の次男や三男だったはず。ここではずされるのは彼らにとって大打撃ではなかろうか。

「彼らのことはもちろんなのだが、私自身の発言に対しても貴女に謝らなければならない」
「何でしょう?」
 なんとなく予想はついているけれど。
「あの場で『地味でダサい子にも優しくしてやるなんて大変だ』と言われた時に私が『しかたがない』と答えたこと、覚えているか?」
「ええ」
そう、その言葉が私にとっては一番痛かった。
「あれは貴女に地味な服装を強いているから『しかたがない』と言ったつもりだった。だが、彼らに貴女の服装の指示については伝えていない。あの場で言うわけにもいかず、言葉が足りなくて発言を耳にしてしまった貴女を傷つけたと思う。どうか許してほしい」
 もう一度深々と頭を下げる殿下。
 なんだ、忘れてたわけじゃなかったのね。よかった。
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