側近女性は迷わない

中田カナ

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第2話

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 気まずい空気を無視して私は第二王子殿下の方を向いた。
「第二王子殿下、先ほど打ち合わせしてまいりました来週行われる懇親会についてお話ししてよろしいでしょうか?」
 なぜか情けない表情の殿下。
「その、いつものように名前では呼んでくれないのか?」
「殿下に請われてずうずうしくもお名前で呼んでおりましたが、やはり失礼に当たると思いますので、これからはやめようと思います。それから女性だからと無理に優しくしていただかなくても結構ですよ。私がここにいるのはあくまで仕事なのですから。それより懇親会の件ですが…」
 殿下に口を挟ませることなく懇親会について説明していく。

 懇親会の説明が終わり、側近の1人から書類作成の依頼を受ける。
「かしこまりました。それでは作業に集中したいので、私は別室に行かせていただきますね」
 資料を手に第二王子殿下の執務室を出る。
 微妙な空気の執務室から逃げ出したようにも見えるが、別室での作業はいつものことである。執務室では他の側近達の雑談で気が散るので、空いている小部屋を作業用に借りているのだ。
 いつも持ち歩いている鍵でテーブルと椅子のみの小部屋の扉を開け、中に入るとすぐに鍵を閉める。
 資料と伊達眼鏡をテーブルに置くと、しゃがみこんで声をできるだけ出さないようにして泣いた。
 いろんな感情が入り混じってしまい、涙が止まるまで少し時間がかかってしまった。

 なんとか泣き止んでから書類を作成している間に何度かノックの音を聞いたけど、すべて無視した。
 泣いた後のみっともない顔を誰にも見られたくなかったから。
 書類作成が終わり、気持ちもようやく落ち着いたので、小部屋を出ると扉の脇に小さな紙袋が置いてあった。中を見るとクッキーが入っていたけれど、今はとてもじゃないけど食欲がなくて、小部屋のテーブルの上に置いて鍵を閉めた。


 もう夕方でみんな帰ってしまったらしく、第二王子殿下の執務室には鍵がかかっていた。
 殿下も側近も全員鍵を持っているので、私は手持ちの鍵で扉を開け、作成した書類を殿下の机の上に置く。
「ちょっと待ってくれ」
 執務室から出ようと扉に向かうと男性の声で呼び止められた。
 声がした方を見ると、夕方の薄暗い執務室の片隅にしゃがみこんでいる人がいた。
「第二王子殿下、そんなところで何をなさってらっしゃるんですか?」
「貴女に謝ろうと思って、ずっと待っていた」
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