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第二話
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決戦の朝。
黒田長政や細川忠興など歴戦の武将たちが招集されていた。
その中にいる立花宗茂は自分が犯したミスを一人悔いていた。
徳川家康から意見を求められた際に
「秀頼の参陣はない」「指揮できる武将はいない。絶対に軍紀が乱れる」
と、断言していた。
しかし、真田幸村が後藤又兵衛の部隊と上手く合流し、大野治長が秀頼の参陣をタイミングよく成功させたのだ。
さらには場を乱す大野治長の弟たちはすでに戦死しており、指揮スムーズに行われていた。
これにより、豊臣軍の士気は上がり、局地戦で敗北を繰り返し、幕府軍は何度も本陣を脅かされ、作戦の核になるものがあっさりと崩壊したのだ。
しかし、西国無双と呼ばれた宗茂。
戦慣れしていない兵士をまとめ上げ、何度も押し返した。
しかし、幕府側の損害は膨大で松平忠輝、忠直、徳川義直といった一門は戦死。
大名も本多忠朝、藤堂高虎が戦死。
伊達家は激しく後藤又兵衛や真田幸村と戦い、ほぼ壊滅。片倉小十郎など配下は戦死している。
「豊臣兵は人を喰らう獣」
と呼ばれ、幕府軍に恐怖を与えていた。
ーー獣が相手であろうと、戦い抜き、勝たねばいけない。自身の信頼を取り戻さねばならぬ。
そして、総大将の家康もここで死ぬわけにはいかない。
彼自身、戦国時代を終わらせるという責務があることを自覚している。
一門や有力大名を殺され、和議に向かうと権威が失墜してしまう。
豊臣の世になることはないだろうが、秀忠や家光では大名は言うことを聞かず、戦国の時代に逆戻りしてしまうだろう。
兵数では豊臣軍とは圧倒的な差があるが、士気が違い過ぎる上に勝つのは困難である。
いや、勝てたとしても犠牲は大き過ぎる。
一方、後藤又兵衛と真田幸村は丘の上から両軍を見渡している。
「真田殿、どうじゃ? 勝てるか?」
「勝つだろう。しかし、その先はない」
幸村は財政状況などを鑑みて、戦争を継続できないと考えていた。
生き残るには徳川家康の首を狙うしかない。
やがて、戦が始まると、あっさりと決着がついた。
前日の戦いで恐怖した兵士は烏合の衆となり、猛将たちの号令も虚しく逃げ出す者も多数いた。
ーー死ぬわけにはいかぬ
平和な時が長過ぎた。
黒田長政、細川忠興たちも小競り合いのみで、自身が治める国に帰り、新たな戦国時代のため軍備を整えようとする。
幕府軍は自身のプライドのために戦った立花宗茂一人を除いて逃げ去って行った。
真田幸村たちが本陣に垂れ込んだ。
徳川家の馬印は燃やされ、踏まれ、もはや、本陣は軍としての体をなしていない。
そこに立花宗茂だけが座っている。
「家康殿は?」
幸村が宗茂に尋ねる。
「京に逃れた。早い段階でな」
宗茂の目が絶望を通り越したもの、ある意味で悟りに近い。
「宗茂殿……選択を誤りましたな」
宗茂は頷く。
何も言葉が出ない。
判断を誤ってしまい、負けることがない状態から敗北に導いてしまった。
様々な戦での活躍は水泡に喫する。
自分は後世に無能な武将として語り継がれるだろう。
全てを覚悟して言葉を発する。
「斬れ。私には腹を切る価値すらない」
真田幸村は振り返る。
「斬る価値はない。どこにでも行くがいい。秀頼様より立花宗茂は殺すなと伝言があった。秀頼様も其方のことを心配されておったのだ」
見捨てた相手に情けをかけられた。
武将として、これ程までにプライドを傷つけるものはない。
宗茂が家康のもとに帰ることはなかった。
その夜、徳川家康撃退は大きく知れ渡った。
70を過ぎた高齢の体に逃亡は堪えることができないほどのストレスだ。
京に辿り着いた家康はそれ以降の移動ができず、敗戦のショックで鬱の症状に見舞われていた。
彼は諸大名に豊臣討伐の軍令を飛ばすが、誰も乗ってはこない。
No.2に近かった藤堂高虎はいない。
伊達政宗も奥州に戻るが、権威が地に落ち、配下や兵士はほとんど討ち死にしており、各地で勃発した浪人たちの反乱に苦戦していた。
浪人たちは豊臣家の再興を大義名分に反乱を起こしていたのだ。
だが、その豊臣側も徳川家康を追撃する動きはない。
彼らも再び大きな一戦をする余力はない。
しかし、今回の勝利により浅野家は一揆勢に敗走し城をなくし、小出家や織田家も諸城を豊臣軍に奪われ、浪速の地は完全に豊臣側の領土となる。
秀忠は家康の言葉を聞かず、片桐且元を通じて豊臣家との和睦の準備を始めていた。
秀忠は和睦の条件を見て驚愕する。
大坂の陣の首謀者である板倉勝重、金地院崇伝、林羅山、南光坊天海の斬首であった。
黒田長政や細川忠興など歴戦の武将たちが招集されていた。
その中にいる立花宗茂は自分が犯したミスを一人悔いていた。
徳川家康から意見を求められた際に
「秀頼の参陣はない」「指揮できる武将はいない。絶対に軍紀が乱れる」
と、断言していた。
しかし、真田幸村が後藤又兵衛の部隊と上手く合流し、大野治長が秀頼の参陣をタイミングよく成功させたのだ。
さらには場を乱す大野治長の弟たちはすでに戦死しており、指揮スムーズに行われていた。
これにより、豊臣軍の士気は上がり、局地戦で敗北を繰り返し、幕府軍は何度も本陣を脅かされ、作戦の核になるものがあっさりと崩壊したのだ。
しかし、西国無双と呼ばれた宗茂。
戦慣れしていない兵士をまとめ上げ、何度も押し返した。
しかし、幕府側の損害は膨大で松平忠輝、忠直、徳川義直といった一門は戦死。
大名も本多忠朝、藤堂高虎が戦死。
伊達家は激しく後藤又兵衛や真田幸村と戦い、ほぼ壊滅。片倉小十郎など配下は戦死している。
「豊臣兵は人を喰らう獣」
と呼ばれ、幕府軍に恐怖を与えていた。
ーー獣が相手であろうと、戦い抜き、勝たねばいけない。自身の信頼を取り戻さねばならぬ。
そして、総大将の家康もここで死ぬわけにはいかない。
彼自身、戦国時代を終わらせるという責務があることを自覚している。
一門や有力大名を殺され、和議に向かうと権威が失墜してしまう。
豊臣の世になることはないだろうが、秀忠や家光では大名は言うことを聞かず、戦国の時代に逆戻りしてしまうだろう。
兵数では豊臣軍とは圧倒的な差があるが、士気が違い過ぎる上に勝つのは困難である。
いや、勝てたとしても犠牲は大き過ぎる。
一方、後藤又兵衛と真田幸村は丘の上から両軍を見渡している。
「真田殿、どうじゃ? 勝てるか?」
「勝つだろう。しかし、その先はない」
幸村は財政状況などを鑑みて、戦争を継続できないと考えていた。
生き残るには徳川家康の首を狙うしかない。
やがて、戦が始まると、あっさりと決着がついた。
前日の戦いで恐怖した兵士は烏合の衆となり、猛将たちの号令も虚しく逃げ出す者も多数いた。
ーー死ぬわけにはいかぬ
平和な時が長過ぎた。
黒田長政、細川忠興たちも小競り合いのみで、自身が治める国に帰り、新たな戦国時代のため軍備を整えようとする。
幕府軍は自身のプライドのために戦った立花宗茂一人を除いて逃げ去って行った。
真田幸村たちが本陣に垂れ込んだ。
徳川家の馬印は燃やされ、踏まれ、もはや、本陣は軍としての体をなしていない。
そこに立花宗茂だけが座っている。
「家康殿は?」
幸村が宗茂に尋ねる。
「京に逃れた。早い段階でな」
宗茂の目が絶望を通り越したもの、ある意味で悟りに近い。
「宗茂殿……選択を誤りましたな」
宗茂は頷く。
何も言葉が出ない。
判断を誤ってしまい、負けることがない状態から敗北に導いてしまった。
様々な戦での活躍は水泡に喫する。
自分は後世に無能な武将として語り継がれるだろう。
全てを覚悟して言葉を発する。
「斬れ。私には腹を切る価値すらない」
真田幸村は振り返る。
「斬る価値はない。どこにでも行くがいい。秀頼様より立花宗茂は殺すなと伝言があった。秀頼様も其方のことを心配されておったのだ」
見捨てた相手に情けをかけられた。
武将として、これ程までにプライドを傷つけるものはない。
宗茂が家康のもとに帰ることはなかった。
その夜、徳川家康撃退は大きく知れ渡った。
70を過ぎた高齢の体に逃亡は堪えることができないほどのストレスだ。
京に辿り着いた家康はそれ以降の移動ができず、敗戦のショックで鬱の症状に見舞われていた。
彼は諸大名に豊臣討伐の軍令を飛ばすが、誰も乗ってはこない。
No.2に近かった藤堂高虎はいない。
伊達政宗も奥州に戻るが、権威が地に落ち、配下や兵士はほとんど討ち死にしており、各地で勃発した浪人たちの反乱に苦戦していた。
浪人たちは豊臣家の再興を大義名分に反乱を起こしていたのだ。
だが、その豊臣側も徳川家康を追撃する動きはない。
彼らも再び大きな一戦をする余力はない。
しかし、今回の勝利により浅野家は一揆勢に敗走し城をなくし、小出家や織田家も諸城を豊臣軍に奪われ、浪速の地は完全に豊臣側の領土となる。
秀忠は家康の言葉を聞かず、片桐且元を通じて豊臣家との和睦の準備を始めていた。
秀忠は和睦の条件を見て驚愕する。
大坂の陣の首謀者である板倉勝重、金地院崇伝、林羅山、南光坊天海の斬首であった。
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