マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと

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第二十三話 無常

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翌朝。
秀包は差し込む朝日に眼を照らされて目を開ける。
隣には駒がいる。
しかし、彼女は義光殿の大切な娘……互いに指一本触れずに互いのことを話していた。

ーー今は抱けない

傷つけるようなことをしては今後の最上、毛利、小早川の関係に悪い影響を与えてしまうだけではなく、豊臣家に恥をかかせることになる。

ーー私は毛利、小早川、豊臣の子。欲に流されてはいけない。

しかし、二人の間には愛が芽生え始めている。
だからこそ、他の家族たちの悲しい顔を見せるようなマネはできない。
義光だけではない。駒は淀や北政所にとっても大切な家族となっている。

ーー家族か……

秀包は秀吉の顔を思い出した。

欲しかった父のような存在と酌み交わした酒。

幸せな時だった。

しかし、今、一つだけ気にかかることがある。
亡き父の元就が秀吉と会話していた。

ーーそんなことない……はずだ。あの父上はすでに……

秀包は不安に駆られ、すぐに着替え、秀吉との謁見を申し出ようとした……しかし、

「秀包殿、少しお話が……」

小姓の声が震えている。

ーーまさか、父上に何かあったのか?

秀包の背筋が凍りつく。


一方、徳川家康と前田利家、竹中半兵衛、浅野長吉など古くからの重臣たちが冷や汗をかき、生気を失った表情で話し合っている。

「隠していては余計に混乱を招きます。世に知らせねば……そして、殿下の意志を……」

家康は世間に知らせるべきだと言う。
しかし、利家はそれを拒む。

「な、何を言っておられるか? そのようなことできませぬ! はぁはぁ……」

利家の息が荒い。
彼も最近の体調は良くはないのだ。
しかも、この世界線でも秀吉に振り回されており心労により血を吐くほどである。
そしてさらに今、自分に秀吉という男が背負った天下が利家自身に覆い被さっている。
もはや、体が引きちぎられそうなくらいだ。

ーーワシには支えきれん!

利家は秀吉が亡き今、彼が天下を支えることになる。
目の前にいる徳川家康ですら、どう動くかわからない。
そして、秀吉に冷遇された黒田如水などの大名は反旗を翻すだろう。
宇喜多や島津さえ、家臣からのヘイトを抑えきれていない。
この状況で秀吉の死が公となれば天下は混乱してしまい、選択を誤ればNo.2の地位にある利家やその一族は無事でいられないだろう。


ーーワシが内府殿や如水殿を止められるのか……無理だ。

亡き秀吉の威光に縋るしかないのである。

史実のように暴君としての秀吉ではない。
その部分で読めないところがあるのだ。

羽柴秀次と竹中半兵衛が生きており、最上、小早川秀包、立花、島津、大友、長宗我部が今回は迷いなく秀吉側にいて強固な連携が取れている。
史実のような家康の動きをしようものなら、すぐに察知されてしまうだろう。

「……わかりました。では、頃合いを見て」

家康が利家の案を受け入れようとした瞬間。

「お待ちくだされ」

浅野長吉が冷静に言葉を発した。
彼に周囲の視線が突き刺さる。

「島津義弘殿と歳久殿、立花宗茂殿、長宗我部信親殿、最上義光殿……この方々を誤魔化せるとお思いですか? そして、真田信繁殿や毛利家の末子の三人は殿下とは親子同然。直感で何かを察する。誤魔化せぬでしょう」

「なら、どうすればよいのだ!?」

利家の声が恐怖から感情が入り混じる。

ーー確かに

その場いた全員が黙り込む。

沈黙の高音が耳元を刺激する。

半兵衛がその沈黙を破る。

「今、おっしゃられた方々には真実を話すべきです。その上で箝口令を敷くしかありません」

半兵衛の提案を三人は了承した。
ちょうどいい落とし所ではある。

至急、使いを出して大名たちを選別して、二条城に集められた。
呼ばれた武将たちは戦国の世を生き残った猛将ばかり。
顔色一つ変えずに座っている。
しかし、秀包のみが顔面が蒼白で震えている。

ーー父上に何かあったのか?

信親、宗茂は彼を気遣い隣に座り、

「落ち着け……将たるもの、何があってもそんな顔を見せてはならぬ」

と落ち着かせる。

表情を変えない理由。
彼らは呼ばれた時点で何があったか既に察しているのだ。

そこへ島津豊久が現れ、ドサッと座る。

「義弘殿はいらっしゃらないのか?」

宗茂からの質問に彼は反応する。

「叔父上が二日酔いで歩けないから聞いて来いってよ。まぁあんだけ食って飲んだらなるわな」

確かに薩摩隼人の義弘らしい返答である。

薩摩隼人……


『武士が戦場に於いて死ぬのも忠義に因って死ぬことを善だとは考えず、ただ武士は戦場に於いて死ぬものであると考えて論じることもない。泰平の時、主君は安座して礼節を正しくする一方で、家臣は足を伸ばしたり、或いは立ちながら主君と問答する類いも多い。末代までもこの気質である』

そう呼ばれるだけあって、義弘は天下人の生き死にには興味はない。
戦場で忠義を示すのみである。

十数人ほどの武将集められる。

利家は震えながら話そうとするが、声が出ない。

ーーこ、声が出ぬ!

半兵衛が汗で顔を覆われた利家の肩を叩き、アイコンタクトで代わりに話すことを告げ、交代する。

「落ち着いて、お聞きいただきたい」

半兵衛の声が室内に響き渡る。

続く
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