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第二十四話 賽
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「口外してはなりませぬぞ」
前田利家が汗を流しながら秀吉のことを話し出す。
ーー死が近いことはわかっていた……しかし、今ではないはずだ。
それはそこにいたすべての人間が思っていたこと。
予想外の別れに涙を流している者もいる。
特に秀吉を父のように慕っていた秀包はガタガタ震えながら目の焦点が合わない状況であった。
ーーまだ……まだ、父上と話したいことなど山のようにある……なぜだ!?
宗茂は秀包の肩を抱き、正気を取り戻すように促す
「落ち着け……気を確かに持て……大切なのはこれからぞ!」
だが、当の宗茂の目にも涙が流れている。
「ぐおぉ! 殿下! 秀頼様に信親……共に成長する姿を見ようと誓ったではないですか!?」
長宗我部元親が泣き叫ぶ。
秀吉は狂わずに無益な殺生を行わなかった。それ故に数年も平和な日常が続き、それが永遠に続くと思われていた。
遠くに置いてきた死に耐えられずに泣く者が多数いる。
そんな中、真田親子は立ち上がり、場の空気を読まずに告げる。
「話は以上ですか? 殿下がいないのであれば、いる価値はない。去りますぞ」
昌幸は冷静な口調と共に信繁と共に去っていく。
家康は昌幸の背後を見つめながら思った。
ーー真田昌幸……読めぬ男よ
彼はすでに冷静さを取り戻し物事を分析して、次の行動に向けて心は動き出している。
ーー秀頼様の後見人となるにしても、五大老筆頭である自分が権力の座につくとしても、天下はおそらく荒れるだろう。
絶対的な権力者の死。
急な改革を行い、それにより溜まってきたヘイトが噴出するのは間違いない。
まだ家康は何千通りのシュミレーションを脳内で行ってきた。
しかし、怪しいのが石田三成だ。
ーー何故、静観している? 奴の殿下への忠義は本物。此度の酒宴には参加するはず……だが……大谷吉継と一体何を考えておるのだ?
家康は三成と昌幸の行動にある種の恐れを感じていた。
現時点で動きが読めない男は五奉行筆頭の石田三成……奴は何かに気づいており、それに基づいた行動をしている。
そして、もう一人は広大な領土を持つ毛利輝元の二人である。
この二人以外はどう動いたところで話にはならない。
竹中半兵衛も所詮は領地を持たない秀吉直属の配下。
親友である黒田親子や子である竹中重門を使えばこちらに靡くだろう。
「言いたいのは、それだけですかい?」
島津豊久の言葉にハッと我に返った家康は彼が屋敷に戻ることを了承した。
豊久も真田親子同様に去っていく。
そして、その他の武将も次々に立ち上がり、それぞれの思いを胸に去っていく。
さっきまで泣いていた元親はすぐに正気に戻り、信親に呟く。
「国へ帰るぞ……」
皆、早く国へ帰ろうとしている中、信親は父親だけ帰国するように促し、自分は京で残した仕事をするために残ることを告げた。
皆が去っていく中、秀包と宗茂の二人は残り秀吉の死を受けいることができずに心が落ち着かず茫然としていた。
そんな中、前田利家はその二人の前に現れ話し始める。
「ワシからしたら、正直、無茶苦茶な方であった。しかし、お主らにとっては父のような存在であったな……少しばかり昔のことを話そうか」
利家の目に先ほどまでの何かに怯えた表情はない。
笑みを浮かべながら、彼らに話しかけた。
「聞きとうございますな!」
信親は樽に入った壺に入った酒を持ってきて、横から話に加わり、彼らと時を忘れ思い出話に花を咲かせた。
半兵衛は部屋の外から聞こえる思い出話を聞きながら思う。
ーー殿下は誠に幸せ者であるな。
と。
しかし、これから起こるであろう大乱に重臣として対処せねばならない。
ーー悲しみに浸るのは全てが終わってから。
半兵衛もまた"次"に向かい動き始めているのであった。
一方、京から去ろうとする真田親子。
昌幸は信繁の頭を撫でながら告げる。
「泣くな」
信繁は表情を変えずに涙を流していたのであった。
賽は投げられた。
この世界での関ヶ原は始まったのだ。
前田利家が汗を流しながら秀吉のことを話し出す。
ーー死が近いことはわかっていた……しかし、今ではないはずだ。
それはそこにいたすべての人間が思っていたこと。
予想外の別れに涙を流している者もいる。
特に秀吉を父のように慕っていた秀包はガタガタ震えながら目の焦点が合わない状況であった。
ーーまだ……まだ、父上と話したいことなど山のようにある……なぜだ!?
宗茂は秀包の肩を抱き、正気を取り戻すように促す
「落ち着け……気を確かに持て……大切なのはこれからぞ!」
だが、当の宗茂の目にも涙が流れている。
「ぐおぉ! 殿下! 秀頼様に信親……共に成長する姿を見ようと誓ったではないですか!?」
長宗我部元親が泣き叫ぶ。
秀吉は狂わずに無益な殺生を行わなかった。それ故に数年も平和な日常が続き、それが永遠に続くと思われていた。
遠くに置いてきた死に耐えられずに泣く者が多数いる。
そんな中、真田親子は立ち上がり、場の空気を読まずに告げる。
「話は以上ですか? 殿下がいないのであれば、いる価値はない。去りますぞ」
昌幸は冷静な口調と共に信繁と共に去っていく。
家康は昌幸の背後を見つめながら思った。
ーー真田昌幸……読めぬ男よ
彼はすでに冷静さを取り戻し物事を分析して、次の行動に向けて心は動き出している。
ーー秀頼様の後見人となるにしても、五大老筆頭である自分が権力の座につくとしても、天下はおそらく荒れるだろう。
絶対的な権力者の死。
急な改革を行い、それにより溜まってきたヘイトが噴出するのは間違いない。
まだ家康は何千通りのシュミレーションを脳内で行ってきた。
しかし、怪しいのが石田三成だ。
ーー何故、静観している? 奴の殿下への忠義は本物。此度の酒宴には参加するはず……だが……大谷吉継と一体何を考えておるのだ?
家康は三成と昌幸の行動にある種の恐れを感じていた。
現時点で動きが読めない男は五奉行筆頭の石田三成……奴は何かに気づいており、それに基づいた行動をしている。
そして、もう一人は広大な領土を持つ毛利輝元の二人である。
この二人以外はどう動いたところで話にはならない。
竹中半兵衛も所詮は領地を持たない秀吉直属の配下。
親友である黒田親子や子である竹中重門を使えばこちらに靡くだろう。
「言いたいのは、それだけですかい?」
島津豊久の言葉にハッと我に返った家康は彼が屋敷に戻ることを了承した。
豊久も真田親子同様に去っていく。
そして、その他の武将も次々に立ち上がり、それぞれの思いを胸に去っていく。
さっきまで泣いていた元親はすぐに正気に戻り、信親に呟く。
「国へ帰るぞ……」
皆、早く国へ帰ろうとしている中、信親は父親だけ帰国するように促し、自分は京で残した仕事をするために残ることを告げた。
皆が去っていく中、秀包と宗茂の二人は残り秀吉の死を受けいることができずに心が落ち着かず茫然としていた。
そんな中、前田利家はその二人の前に現れ話し始める。
「ワシからしたら、正直、無茶苦茶な方であった。しかし、お主らにとっては父のような存在であったな……少しばかり昔のことを話そうか」
利家の目に先ほどまでの何かに怯えた表情はない。
笑みを浮かべながら、彼らに話しかけた。
「聞きとうございますな!」
信親は樽に入った壺に入った酒を持ってきて、横から話に加わり、彼らと時を忘れ思い出話に花を咲かせた。
半兵衛は部屋の外から聞こえる思い出話を聞きながら思う。
ーー殿下は誠に幸せ者であるな。
と。
しかし、これから起こるであろう大乱に重臣として対処せねばならない。
ーー悲しみに浸るのは全てが終わってから。
半兵衛もまた"次"に向かい動き始めているのであった。
一方、京から去ろうとする真田親子。
昌幸は信繁の頭を撫でながら告げる。
「泣くな」
信繁は表情を変えずに涙を流していたのであった。
賽は投げられた。
この世界での関ヶ原は始まったのだ。
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