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第二十五話 暗雲
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大名は急ぎ帰国した。
秀吉亡き後、戦乱の世になる可能性は高い。
現地により今まで虐げられていた家臣たちが反乱を起こすかもしれない。
まずは真実を告げずに家中をまとめなければならない。
その上で戦の準備をする。
一方、大坂城にやってきた竹中半兵衛は楽観視していた。
律儀者であり、秀吉を兄弟のように慕っていた徳川家康が裏切るわけはない。
彼が大名たちをしっかりとまとめ上げ、徳川秀忠、石田三成、宇喜多秀家や直江兼続に繋ぐだろう。
そう思っていた。
しかし、家康が駿府城に帰り、各地の警備について話し合おうとする……しかし、家臣は冷ややかな態度で彼を迎えた。
「ど、どうした? お主ら? ワシの話が聞けぬのか?」
家康は困惑する。
意を決した井伊直政が家康に対して意見を言う。
「もう、良いではありませぬか? 殿下はすでにいないのでしょう?」
家康は驚く。
「なぜそれを?」
そして、実直な彼が家康にさらに告げる。
「太閤殿下亡き後、殿下を統べることができるのは貴方様ただ一人」
家康は困惑する。
直政を含む家臣には権力欲などはない。
しかし、理解ができない。
家康は小牧長久手以来、秀吉を尊敬しており、秀頼への引き継ぎが上手くいけばいいとさえ思っていた。
「否、殿下は……」
「すでにお亡くなりになったのですね」
本多忠勝が現れて家康の言葉を遮った。
「忠勝!?」
「太閤殿下はおらぬのです。もはや、良いでしょう! 次の天下は貴方様のもの」
周囲から熱い賛同の声が聞こえてくる。
ーーこの者らの言うこと、間違っておらぬ……ワシが今立たねば天下は……
家康は今、理解した。
自分以外に秀吉の代わりが務まることができないことを。
彼は戻れない道を歩き始めたのであった。
一方で吉田郡山城では毛利輝元が書状を読み一人狂喜していた。
ーー天下が! 祖父上ですら得ることができなかった天下が目の前に!
そう思うのも仕方ない。
毛利輝元、秀包、吉川広家などを合わせれば天下に近い家康に対抗できる兵力を動員できる。
彼の中で天下までの道は開かれていく。
ーー秀頼を担ぎ上げ、前田、宇喜多、上杉、島津と五奉行をこちらに引き込めば政治崩壊することもないだろう。
「誰か誰かおらぬか!?」
輝元は野望を表情一面に見せた笑みを浮かべていた。
では、輝元の書状は誰からのものだろうか?
「淀様、これで良いのですね?」
遠藤直経の声が暗闇から聞こえ、そして、もう一人の声も蝋燭の火を介して聞こえる。
「はい。直経。苦労をかけました。ごゆるりとお休みください」
淀君の声である。
彼女は愛し合う秀吉の死が近いことを悟っていた。
秀長から伝えられた秘策をもとに五大老とある男に文書を送っていたのであった。
ある男……
藤堂高虎は淀君から文を見て震えていた。
彼は今、秀長が最後に見せた笑み……その意味を理解したのだ。
ーー全てわかっていたのか。
そう、あの笑みは本当の意味での決別。
高虎を見捨てたのである。
ーー良いでしょう……貴方様の大切にしていた豊臣家……滅ぼしてみせます。
高虎は決意を瞳に浮かべ、戦の準備を始めるのであった。
各地で見えない闘いが始まろうとしていた。
そして、小早川秀包、立花宗茂、石田正澄、真田幸村、島津豊久、長宗我部信親ら軍事を担当する者たちは国の中枢にいる竹中半兵衛と前田利家との会談を希望した。
秀吉亡き後、戦乱の世になる可能性は高い。
現地により今まで虐げられていた家臣たちが反乱を起こすかもしれない。
まずは真実を告げずに家中をまとめなければならない。
その上で戦の準備をする。
一方、大坂城にやってきた竹中半兵衛は楽観視していた。
律儀者であり、秀吉を兄弟のように慕っていた徳川家康が裏切るわけはない。
彼が大名たちをしっかりとまとめ上げ、徳川秀忠、石田三成、宇喜多秀家や直江兼続に繋ぐだろう。
そう思っていた。
しかし、家康が駿府城に帰り、各地の警備について話し合おうとする……しかし、家臣は冷ややかな態度で彼を迎えた。
「ど、どうした? お主ら? ワシの話が聞けぬのか?」
家康は困惑する。
意を決した井伊直政が家康に対して意見を言う。
「もう、良いではありませぬか? 殿下はすでにいないのでしょう?」
家康は驚く。
「なぜそれを?」
そして、実直な彼が家康にさらに告げる。
「太閤殿下亡き後、殿下を統べることができるのは貴方様ただ一人」
家康は困惑する。
直政を含む家臣には権力欲などはない。
しかし、理解ができない。
家康は小牧長久手以来、秀吉を尊敬しており、秀頼への引き継ぎが上手くいけばいいとさえ思っていた。
「否、殿下は……」
「すでにお亡くなりになったのですね」
本多忠勝が現れて家康の言葉を遮った。
「忠勝!?」
「太閤殿下はおらぬのです。もはや、良いでしょう! 次の天下は貴方様のもの」
周囲から熱い賛同の声が聞こえてくる。
ーーこの者らの言うこと、間違っておらぬ……ワシが今立たねば天下は……
家康は今、理解した。
自分以外に秀吉の代わりが務まることができないことを。
彼は戻れない道を歩き始めたのであった。
一方で吉田郡山城では毛利輝元が書状を読み一人狂喜していた。
ーー天下が! 祖父上ですら得ることができなかった天下が目の前に!
そう思うのも仕方ない。
毛利輝元、秀包、吉川広家などを合わせれば天下に近い家康に対抗できる兵力を動員できる。
彼の中で天下までの道は開かれていく。
ーー秀頼を担ぎ上げ、前田、宇喜多、上杉、島津と五奉行をこちらに引き込めば政治崩壊することもないだろう。
「誰か誰かおらぬか!?」
輝元は野望を表情一面に見せた笑みを浮かべていた。
では、輝元の書状は誰からのものだろうか?
「淀様、これで良いのですね?」
遠藤直経の声が暗闇から聞こえ、そして、もう一人の声も蝋燭の火を介して聞こえる。
「はい。直経。苦労をかけました。ごゆるりとお休みください」
淀君の声である。
彼女は愛し合う秀吉の死が近いことを悟っていた。
秀長から伝えられた秘策をもとに五大老とある男に文書を送っていたのであった。
ある男……
藤堂高虎は淀君から文を見て震えていた。
彼は今、秀長が最後に見せた笑み……その意味を理解したのだ。
ーー全てわかっていたのか。
そう、あの笑みは本当の意味での決別。
高虎を見捨てたのである。
ーー良いでしょう……貴方様の大切にしていた豊臣家……滅ぼしてみせます。
高虎は決意を瞳に浮かべ、戦の準備を始めるのであった。
各地で見えない闘いが始まろうとしていた。
そして、小早川秀包、立花宗茂、石田正澄、真田幸村、島津豊久、長宗我部信親ら軍事を担当する者たちは国の中枢にいる竹中半兵衛と前田利家との会談を希望した。
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