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第二十六話 信頼
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立花宗茂や小早川秀包たちは竹中半兵衛に面会を願い出た。
半兵衛自身も今後のことを話す機会が少ないことを理解しており、前向きに話し合いに応じた。
目の前にいるのは若く、一見未熟な者と思われる風貌。
しかし、修羅場を潜り抜けてきた猛将たちで、戦では鬼の形相で敵を蹴散らし、内政も熟す。
そして、さらに秀吉に実子のように可愛がられ重宝された者たちでもある。
しかし、そこに加藤清正、福島正則、石田三成らの姿はない。
ただ、三成に関して言えば、兄の正澄が頻繁に秀吉の様子を見に来ており状況は把握しており、薩摩から会津まで検地の様子を視察し、諸大名に助言しており多忙である。
それに彼の性格からして、豊臣家を裏切ることなど考えられない。
ーー誠に武士らしい男よ。
半兵衛は自身を三成に重ね合わせた。
目に見えるような忠義心など、全く役に立たない。
口よりも行動で表すタイプなのだ。
逆に福島正則や加藤清正はその場で有利な方に流されてしまうだろう。
今の平和な世になったとき、味方に引き入れたいのは政を熟す三成の方である。
そして、天下が割れるとすれば、徳川家康の動向次第だろう。
しかし、その心配もない。
ーーあの律儀者の家康殿が豊臣家に反旗を翻す? ありえぬ。
それ故に宗茂や秀包、正澄たちの予感は外れてしまうだろう。
しかし、彼らの思う気持ちも理解はできる。
ーーだからこそ、私が落ち着かせねばな
「皆の者、安心せよ。私や前田利家殿、内府殿は今だに健在。殿下が生きておられた頃と何も変わりはせぬ」
半兵衛は笑顔で落ち着かせた。
「しかし、秀次殿は生存されていますが、帝への不敬意外にも様々な事象が明るみになっておられる。秀秋殿は酒に溺れていると聞く……秀頼様はまだ元服されていない。後継に関してはどうするのですか?」
正澄らしい鋭い質問だ。
石田三成よりも豊臣家の近くいる存在。
しかも、一筋縄ではいかない畿内の民たちを掌握できるほどの能力もある。
ーー正澄らしいな。この者らは気休めの嘘が通じる連中ではない。だが、私は内府殿を信じている。
半兵衛は苦笑いしながら話し始めた。
「うむ、それに関しては近々前田利家殿、内府殿、毛利輝元殿と会い、決めようかと思うておる」
秀包の顔が一気に曇る。
彼の異変に宗茂は気づき、声をかける。
「どうかしたか?」
「いや、心配はご無用……」
宗茂は気づいている。
輝元は強かで、思慮深い。
裏で手を回して豊臣家の天下を掠め取ろうしているのだろう。
ーー半兵衛殿……正気か?
しかし、あの豊臣秀吉と親友に近い信頼関係を結べるほどの男が輝元の野心に気づいていないわけはない。
ーー何か策略があるのだろう。
宗茂は敢えて言葉に出さず、沈黙の中に身を委ねた。
すると、秀包が話し出す。
「輝元殿はご多忙故に私が代理として出席しても良いでしょうか? 毛利元就の血を継ぎ、京にいる私が適任ではないかと」
宗茂は頷く。
「そうであるな。半兵衛殿、どうでしょうか?」
秀包なら安心だ。
彼は秀吉を父同然に思い、秀頼を守ろうとしていることは明白。
上手くやれば、これを機に天下への野望を隠さない輝元を失脚させることができるかもしれない。
正澄や豊久、信繁……彼らに対しては最後まで納得できる答えを出すことはできなかった。
しかし、宗茂は違う。
ーーとりあえず、会談の結果を待つか。
もしかすれば、再度の戦乱を防ぐことができるかもしれない。
彼は期待を胸に抱いていた。
だが、数日後、彼らの期待を砕くことが起こる。
「内府殿が秀頼様の許可なく黒田、伊達と婚姻関係を結びました」
小姓の言葉に大坂城内が緊張感に包まれていく。
半兵衛自身も今後のことを話す機会が少ないことを理解しており、前向きに話し合いに応じた。
目の前にいるのは若く、一見未熟な者と思われる風貌。
しかし、修羅場を潜り抜けてきた猛将たちで、戦では鬼の形相で敵を蹴散らし、内政も熟す。
そして、さらに秀吉に実子のように可愛がられ重宝された者たちでもある。
しかし、そこに加藤清正、福島正則、石田三成らの姿はない。
ただ、三成に関して言えば、兄の正澄が頻繁に秀吉の様子を見に来ており状況は把握しており、薩摩から会津まで検地の様子を視察し、諸大名に助言しており多忙である。
それに彼の性格からして、豊臣家を裏切ることなど考えられない。
ーー誠に武士らしい男よ。
半兵衛は自身を三成に重ね合わせた。
目に見えるような忠義心など、全く役に立たない。
口よりも行動で表すタイプなのだ。
逆に福島正則や加藤清正はその場で有利な方に流されてしまうだろう。
今の平和な世になったとき、味方に引き入れたいのは政を熟す三成の方である。
そして、天下が割れるとすれば、徳川家康の動向次第だろう。
しかし、その心配もない。
ーーあの律儀者の家康殿が豊臣家に反旗を翻す? ありえぬ。
それ故に宗茂や秀包、正澄たちの予感は外れてしまうだろう。
しかし、彼らの思う気持ちも理解はできる。
ーーだからこそ、私が落ち着かせねばな
「皆の者、安心せよ。私や前田利家殿、内府殿は今だに健在。殿下が生きておられた頃と何も変わりはせぬ」
半兵衛は笑顔で落ち着かせた。
「しかし、秀次殿は生存されていますが、帝への不敬意外にも様々な事象が明るみになっておられる。秀秋殿は酒に溺れていると聞く……秀頼様はまだ元服されていない。後継に関してはどうするのですか?」
正澄らしい鋭い質問だ。
石田三成よりも豊臣家の近くいる存在。
しかも、一筋縄ではいかない畿内の民たちを掌握できるほどの能力もある。
ーー正澄らしいな。この者らは気休めの嘘が通じる連中ではない。だが、私は内府殿を信じている。
半兵衛は苦笑いしながら話し始めた。
「うむ、それに関しては近々前田利家殿、内府殿、毛利輝元殿と会い、決めようかと思うておる」
秀包の顔が一気に曇る。
彼の異変に宗茂は気づき、声をかける。
「どうかしたか?」
「いや、心配はご無用……」
宗茂は気づいている。
輝元は強かで、思慮深い。
裏で手を回して豊臣家の天下を掠め取ろうしているのだろう。
ーー半兵衛殿……正気か?
しかし、あの豊臣秀吉と親友に近い信頼関係を結べるほどの男が輝元の野心に気づいていないわけはない。
ーー何か策略があるのだろう。
宗茂は敢えて言葉に出さず、沈黙の中に身を委ねた。
すると、秀包が話し出す。
「輝元殿はご多忙故に私が代理として出席しても良いでしょうか? 毛利元就の血を継ぎ、京にいる私が適任ではないかと」
宗茂は頷く。
「そうであるな。半兵衛殿、どうでしょうか?」
秀包なら安心だ。
彼は秀吉を父同然に思い、秀頼を守ろうとしていることは明白。
上手くやれば、これを機に天下への野望を隠さない輝元を失脚させることができるかもしれない。
正澄や豊久、信繁……彼らに対しては最後まで納得できる答えを出すことはできなかった。
しかし、宗茂は違う。
ーーとりあえず、会談の結果を待つか。
もしかすれば、再度の戦乱を防ぐことができるかもしれない。
彼は期待を胸に抱いていた。
だが、数日後、彼らの期待を砕くことが起こる。
「内府殿が秀頼様の許可なく黒田、伊達と婚姻関係を結びました」
小姓の言葉に大坂城内が緊張感に包まれていく。
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