29 / 41
第29話 #消えたノート事件
しおりを挟む
翌朝の教室。
俺が席についた瞬間、悠真がいつもの調子で話しかけてきた。
「おい、真嶋。お前、昨日図書室でなんかやらかした?」
「は? やらかしてねぇよ」
「StarChatで“#二人きりの図書室”バズってんぞ」
「またかよ……」
「しかも、“消えたノート”とか書かれてる」
「ノート?」
嫌な予感がした。
ひよりの“誤解ノート”――つまり、昨日図書室で見ていた研究メモ。
あれが、まさか。
放課後、図書室に走った。
昨日と同じ席。
机の上には、ひよりの名前が書かれた付箋だけが残っていた。
肝心のノートは、影も形もない。
と同時に、スマホが震える。
───────────────────────
StarChat #消えたノート事件
【校内ウォッチ】
「ひよりの“恋愛研究ノート”が消失!?
真嶋くんが持ち帰った説浮上」
コメント:
・「#証拠は沈黙」
・「#恋の研究ノート」
・「#真嶋容疑者」
───────────────────────
「……いや、誰だよこの捏造記事書いてんの!」
「蒼汰くん」
声を聞いて振り向くと、ひよりが立っていた。
少し不安そうな顔。
「ノート、なくなっちゃいました」
「やっぱり」
「昨日、ここに置いたまま帰ったみたいで……」
「見つかるまで俺も探す」
「でも、誤解されちゃってますよね」
「誤解は日常だからもう慣れた」
「ふふ……でも、今度のはちょっと大事です」
彼女の言葉には笑いよりも重みがあった。
“誤解ノート”には、きっと彼女の本音も混ざっていたんだろう。
二人で校内を探す。
図書室、廊下、屋上前――そして、音楽室。
窓際のピアノの上に、ノートが一冊置かれていた。
「……あった」
ひよりが駆け寄る。
ノートの表紙には小さく「ひよりの誤解研究」と書かれている。
誰かが開いた形跡はあったが、中身は無事だった。
「よかった……」
彼女が胸に抱きしめる。
その姿に、少しホッとする。
「でも、誰がここに……」
「さあな。けど、これで“真嶋容疑者”は無罪だ」
「はい。冤罪解除です」
「事件解決早すぎだろ」
その夜、StarChatを開くと、先生がまたまとめていた。
───────────────────────
StarChat #消えたノート事件
【桜井先生@担任】
「“誤解”はノートにも、心にも書かれる。
だが、それを読み解くのは信頼である。」
コメント:
・「#先生名言更新」
・「#信頼で誤解を超える」
───────────────────────
「……先生、職業が哲学者になりつつあるな」
「素敵な言葉です」ひよりが笑う。
「でも、ほんとに誰が置いたんだろうな」
「多分、拾ってくれたんです。
“誤解の研究”って、みんな無意識でやってるのかもしれません」
「それ、名言っぽいけど怖いぞ」
帰り道。
校門を出るとき、ひよりが小さく言った。
「……蒼汰くん」
「ん?」
「ノート、もし誰かに読まれたとしても、大丈夫です」
「どうして?」
「最後のページには、“本当の好きは誤解しない”って書いてありますから」
その言葉が、今日一番心に刺さった。
誤解されても、
信じられる誰かがいれば、それで十分なんだと思った。
俺が席についた瞬間、悠真がいつもの調子で話しかけてきた。
「おい、真嶋。お前、昨日図書室でなんかやらかした?」
「は? やらかしてねぇよ」
「StarChatで“#二人きりの図書室”バズってんぞ」
「またかよ……」
「しかも、“消えたノート”とか書かれてる」
「ノート?」
嫌な予感がした。
ひよりの“誤解ノート”――つまり、昨日図書室で見ていた研究メモ。
あれが、まさか。
放課後、図書室に走った。
昨日と同じ席。
机の上には、ひよりの名前が書かれた付箋だけが残っていた。
肝心のノートは、影も形もない。
と同時に、スマホが震える。
───────────────────────
StarChat #消えたノート事件
【校内ウォッチ】
「ひよりの“恋愛研究ノート”が消失!?
真嶋くんが持ち帰った説浮上」
コメント:
・「#証拠は沈黙」
・「#恋の研究ノート」
・「#真嶋容疑者」
───────────────────────
「……いや、誰だよこの捏造記事書いてんの!」
「蒼汰くん」
声を聞いて振り向くと、ひよりが立っていた。
少し不安そうな顔。
「ノート、なくなっちゃいました」
「やっぱり」
「昨日、ここに置いたまま帰ったみたいで……」
「見つかるまで俺も探す」
「でも、誤解されちゃってますよね」
「誤解は日常だからもう慣れた」
「ふふ……でも、今度のはちょっと大事です」
彼女の言葉には笑いよりも重みがあった。
“誤解ノート”には、きっと彼女の本音も混ざっていたんだろう。
二人で校内を探す。
図書室、廊下、屋上前――そして、音楽室。
窓際のピアノの上に、ノートが一冊置かれていた。
「……あった」
ひよりが駆け寄る。
ノートの表紙には小さく「ひよりの誤解研究」と書かれている。
誰かが開いた形跡はあったが、中身は無事だった。
「よかった……」
彼女が胸に抱きしめる。
その姿に、少しホッとする。
「でも、誰がここに……」
「さあな。けど、これで“真嶋容疑者”は無罪だ」
「はい。冤罪解除です」
「事件解決早すぎだろ」
その夜、StarChatを開くと、先生がまたまとめていた。
───────────────────────
StarChat #消えたノート事件
【桜井先生@担任】
「“誤解”はノートにも、心にも書かれる。
だが、それを読み解くのは信頼である。」
コメント:
・「#先生名言更新」
・「#信頼で誤解を超える」
───────────────────────
「……先生、職業が哲学者になりつつあるな」
「素敵な言葉です」ひよりが笑う。
「でも、ほんとに誰が置いたんだろうな」
「多分、拾ってくれたんです。
“誤解の研究”って、みんな無意識でやってるのかもしれません」
「それ、名言っぽいけど怖いぞ」
帰り道。
校門を出るとき、ひよりが小さく言った。
「……蒼汰くん」
「ん?」
「ノート、もし誰かに読まれたとしても、大丈夫です」
「どうして?」
「最後のページには、“本当の好きは誤解しない”って書いてありますから」
その言葉が、今日一番心に刺さった。
誤解されても、
信じられる誰かがいれば、それで十分なんだと思った。
10
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2025.12.18)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる