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2章
17話「裂け目の扉、始祖の誘い」
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朝、砦の空気は異様なほど張り詰めていた。
昨夜、アムネリスから投げかけられた「選択」の余韻が、私の心に重く残る。
だが、考え込んでいる暇はなかった。
王都とセレスタから、前代未聞の連絡が同時に届いたのだ。
「ノクティア殿、至急王都へ。各国代表を集めた“魔導緊急会議”が開かれます!」
「ノクティアさん、私たちセレスタも全権を託します。共に行動しましょう」
私はカイラスに砦の指揮を任せ、エイミー、レオナート、王都術士班と共に王都へ向かう決断を下した。
* * *
王都は異常な緊迫感に包まれていた。
普段は賑やかな街道にも、魔導士や兵士が目を光らせている。
会議場は、王国の高位貴族、セレスタの使節団、各地の魔導士長――
かつてない顔ぶれが揃っていた。
「ノクティア殿、ようこそ。あなたには“全権大使”の権限が与えられます。
会議の進行と全ての魔導災害への判断を一任します」
王都の重臣がそう告げると、ざわめきが広がった。
「かつて“無能”と蔑まれた私に、全権を?」
時代の変化を痛感しながら、私は深呼吸し、壇上に立つ。
「……まず、現状の魔力異常はもはや局地的な災害ではありません。
全域で結界の限界を超え、異世界の“干渉”が始まっています。根本的な対策が必要です」
各国の代表が深刻な表情を浮かべる。
「ノクティアさん、セレスタの観測班も都市上空で“空間のひずみ”を捉えました」
レオナートが補足する。
「王都でも市街地の空に一時的な“裂け目”が観測されています」
エイミーも続ける。
そのとき――
会議場の天井に、突如として黒紫の閃光が走った。
「魔力反応! 上空に異世界の“扉”が!」
術士の叫びと同時に、天井が裂け、異様な生き物――
セフィラ一族の伝承でのみ語られる“古代の従僕”が、現実の場に現れた。
「全員下がれ! 魔導結界を展開!」
私は即座に結界魔法を発動し、王都とセレスタの術士、兵士たちと共に応戦する。
レオナートが私の側に立ち、エイミーは負傷者の保護に回った。
「ノクティアさん、指示を!」
「攻撃魔法で牽制、結界の裂け目は私が閉じる!」
全員が連携し、“従僕”を押し返す。私は空間の歪みを見極めて詠唱した。
「《律動封緘・空門消滅》!」
金色の魔法陣が空を覆い、ようやく異世界の扉が閉じていく。
「まだ終わっていない――!」
ふいに会議場の空間が歪み、
私だけが異空間に引き込まれた。
* * *
そこは闇と光が複雑に絡み合う、“何もない場所”だった。
「……ようやく二人きりになれたな」
静かな、底知れぬ声。
闇の中からアムネリスが現れる。
始祖を名乗るその姿は、どこか哀しげで、しかし絶対の威厳を持っていた。
「ノクティア。私の“血”を継ぐ者よ。
世界は今まさに、再編の岐路にある。
私と共に、新しい“均衡”を築かないか?」
私は怯まず、彼女を見返す。
「あなたの均衡は、犠牲の上に成り立つものよ。私は、誰も見捨てない道を選ぶ」
「甘いな。血とは呪い、力とは因果。……だが、お前が本当にそれを変えられるというなら、
この“血の記憶”の真実を見せてやろう」
アムネリスが手をかざすと、
闇の中に幻影が広がる――
セフィラの始祖、アムネリスが一族を創った“はじまり”。
力の暴走、恐怖した世界、始祖が科した“均衡”と“犠牲”。
ノクティアは、今まで知らなかった一族の真実を目の当たりにする。
「私は孤独だった。誰にも理解されず、すべてを守るために、すべてを失った……。
お前なら、この痛みを超えられるのか?」
その問いに、私は答えを出せなかった。
苦しみ、迷い、ただ彼女の絶望に胸が痛む。
「それでも、私は――」
その時、闇が大きく揺らぐ。
「もう、ノクティアを“器”にはさせない!」
鋭い声と共に、レヴィアが現れる。
彼女はアムネリスと対峙し、私の前に立つ。
「私たちの血は、誰かの道具じゃない。……私は、私のために戦う」
アムネリスは冷たく笑った。
「ならば、私を超えてみせよ。血の儀式を――“運命の選択”を」
空間が激しく歪み、
ノクティアとレヴィアは現実世界へと引き戻される。
* * *
気がつくと、王都の会議場の控室だった。
レオナートとエイミーが私の傍らに駆け寄ってくる。
「ノクティアさん……!」
「大丈夫、ただの幻覚じゃない。“始祖”そのものに出会ったの」
カイラスの報告で、辺境でも異世界の干渉が一層激化していることが明らかになる。
「これからは、“選択”を迫られるのは私たち全員。
――アムネリスの呪縛を、私たち自身で終わらせるしかない」
皆の顔に、恐怖と覚悟がないまぜになる。
「誰も犠牲にしない未来を、必ず見つけてみせるわ」
私は強く、静かに宣言した。
だがそのとき、
王都の上空にまた“裂け目”が現れた、との悲鳴が響く。
新たな危機は、すぐそこに迫っていた。
昨夜、アムネリスから投げかけられた「選択」の余韻が、私の心に重く残る。
だが、考え込んでいる暇はなかった。
王都とセレスタから、前代未聞の連絡が同時に届いたのだ。
「ノクティア殿、至急王都へ。各国代表を集めた“魔導緊急会議”が開かれます!」
「ノクティアさん、私たちセレスタも全権を託します。共に行動しましょう」
私はカイラスに砦の指揮を任せ、エイミー、レオナート、王都術士班と共に王都へ向かう決断を下した。
* * *
王都は異常な緊迫感に包まれていた。
普段は賑やかな街道にも、魔導士や兵士が目を光らせている。
会議場は、王国の高位貴族、セレスタの使節団、各地の魔導士長――
かつてない顔ぶれが揃っていた。
「ノクティア殿、ようこそ。あなたには“全権大使”の権限が与えられます。
会議の進行と全ての魔導災害への判断を一任します」
王都の重臣がそう告げると、ざわめきが広がった。
「かつて“無能”と蔑まれた私に、全権を?」
時代の変化を痛感しながら、私は深呼吸し、壇上に立つ。
「……まず、現状の魔力異常はもはや局地的な災害ではありません。
全域で結界の限界を超え、異世界の“干渉”が始まっています。根本的な対策が必要です」
各国の代表が深刻な表情を浮かべる。
「ノクティアさん、セレスタの観測班も都市上空で“空間のひずみ”を捉えました」
レオナートが補足する。
「王都でも市街地の空に一時的な“裂け目”が観測されています」
エイミーも続ける。
そのとき――
会議場の天井に、突如として黒紫の閃光が走った。
「魔力反応! 上空に異世界の“扉”が!」
術士の叫びと同時に、天井が裂け、異様な生き物――
セフィラ一族の伝承でのみ語られる“古代の従僕”が、現実の場に現れた。
「全員下がれ! 魔導結界を展開!」
私は即座に結界魔法を発動し、王都とセレスタの術士、兵士たちと共に応戦する。
レオナートが私の側に立ち、エイミーは負傷者の保護に回った。
「ノクティアさん、指示を!」
「攻撃魔法で牽制、結界の裂け目は私が閉じる!」
全員が連携し、“従僕”を押し返す。私は空間の歪みを見極めて詠唱した。
「《律動封緘・空門消滅》!」
金色の魔法陣が空を覆い、ようやく異世界の扉が閉じていく。
「まだ終わっていない――!」
ふいに会議場の空間が歪み、
私だけが異空間に引き込まれた。
* * *
そこは闇と光が複雑に絡み合う、“何もない場所”だった。
「……ようやく二人きりになれたな」
静かな、底知れぬ声。
闇の中からアムネリスが現れる。
始祖を名乗るその姿は、どこか哀しげで、しかし絶対の威厳を持っていた。
「ノクティア。私の“血”を継ぐ者よ。
世界は今まさに、再編の岐路にある。
私と共に、新しい“均衡”を築かないか?」
私は怯まず、彼女を見返す。
「あなたの均衡は、犠牲の上に成り立つものよ。私は、誰も見捨てない道を選ぶ」
「甘いな。血とは呪い、力とは因果。……だが、お前が本当にそれを変えられるというなら、
この“血の記憶”の真実を見せてやろう」
アムネリスが手をかざすと、
闇の中に幻影が広がる――
セフィラの始祖、アムネリスが一族を創った“はじまり”。
力の暴走、恐怖した世界、始祖が科した“均衡”と“犠牲”。
ノクティアは、今まで知らなかった一族の真実を目の当たりにする。
「私は孤独だった。誰にも理解されず、すべてを守るために、すべてを失った……。
お前なら、この痛みを超えられるのか?」
その問いに、私は答えを出せなかった。
苦しみ、迷い、ただ彼女の絶望に胸が痛む。
「それでも、私は――」
その時、闇が大きく揺らぐ。
「もう、ノクティアを“器”にはさせない!」
鋭い声と共に、レヴィアが現れる。
彼女はアムネリスと対峙し、私の前に立つ。
「私たちの血は、誰かの道具じゃない。……私は、私のために戦う」
アムネリスは冷たく笑った。
「ならば、私を超えてみせよ。血の儀式を――“運命の選択”を」
空間が激しく歪み、
ノクティアとレヴィアは現実世界へと引き戻される。
* * *
気がつくと、王都の会議場の控室だった。
レオナートとエイミーが私の傍らに駆け寄ってくる。
「ノクティアさん……!」
「大丈夫、ただの幻覚じゃない。“始祖”そのものに出会ったの」
カイラスの報告で、辺境でも異世界の干渉が一層激化していることが明らかになる。
「これからは、“選択”を迫られるのは私たち全員。
――アムネリスの呪縛を、私たち自身で終わらせるしかない」
皆の顔に、恐怖と覚悟がないまぜになる。
「誰も犠牲にしない未来を、必ず見つけてみせるわ」
私は強く、静かに宣言した。
だがそのとき、
王都の上空にまた“裂け目”が現れた、との悲鳴が響く。
新たな危機は、すぐそこに迫っていた。
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