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6章
85話「運命の選択」
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戦いの傷跡が残るオルグレン侯爵邸。夜明け前の王都は、嵐の後の静けさに包まれていた。
「はぁ……」
ノクティアは、荒れた息を落ち着かせるように額の汗をぬぐった。
カイラスとリュゼル、二人が両脇に立ち、彼女の無事を確かめるように見つめている。
だが、勝利の余韻に浸る暇はなかった。
戦いの終盤、黒幕であるオルグレン侯爵は最期に“呪縛の魔法”を仕掛けていた。
ノクティアは敵の策略にはまり、魔導の封印とともに“王都から出なければ危険”という警告を受けてしまう。
「ノクティア、腕を見せてくれ」
カイラスが焦りを隠せず、彼女の手首をそっと掴む。
「……これは、魔力封じの紋……?しかも発動主はまだ生きている……」
リュゼルが険しい顔で紋章を調べる。
ノクティアは微かに唇を噛む。「私がここにいる限り、王都の人たちが巻き込まれる危険があるの。……このまま残れば、きっと大きな災いを招いてしまう」
沈黙の中、夜明けの鐘が遠くで鳴る。
ノクティアは、部屋の窓から淡い朝焼けを見つめた。
* * *
その後、魔導士会の会議室。
王都の幹部たちがノクティアの状況を把握し、慎重な対応を求める声があがる。
「“最強魔導士”のノクティア様が王都を離れるのは損失だ!」
「だが彼女がここに留まれば、敵の呪詛が広がる危険がある」
「一時的にでも、王都を離れるべきでは……」
会議室のざわめきの中、ノクティアは俯いているしかなかった。
(どうして……私がいることで誰かが苦しむのは、もう二度と嫌なのに)
* * *
そんな彼女のもとに、まずカイラスが静かに歩み寄る。
「ノクティア。お前が“どこにいても”、俺はお前を信じる。……だから、自分の心で選んでくれ。王都に残るのも、出ていくのも、お前の自由だ」
カイラスの瞳には、いさぎよい潔さと、切ない優しさが浮かんでいた。
「俺はどこまでだって、お前の味方だ」
ノクティアは思わず胸が熱くなった。
* * *
続いてリュゼルが、周囲の視線をものともせず、まっすぐノクティアの前に立った。
「ノクティア……」
彼の声は、普段の理知的な響きではなく、ほんの少し震えていた。
「俺は、お前に王都にいてほしい。この場所で、お前とこれからも並び立ちたい――それが本音だ」
リュゼルの真剣なまなざし、思いの強さがストレートに伝わってくる。
「……けれど、もしお前が出ていくというのなら、俺は……」
リュゼルの言葉は途中で途切れる。自分の気持ちと、“王都の第二皇子”としての立場が激しくぶつかり合っているのが、誰の目にも明らかだった。
* * *
ノクティアは二人の視線に挟まれ、深く息を吐いた。
(今までの私は、誰かの“期待”や“義務”に応えなきゃと、ずっと思っていた。……でも、本当に大切なのは、“自分の願い”じゃないの?)
“みんなのために”という気持ちも、“自分のために”という想いも、どちらも嘘じゃない。
それでも、最後に選ぶのは――“私の心”。
「私は……もう、誰かに決めてもらうんじゃなくて、自分で選びたい」
ノクティアは静かに言った。「私が本当に願っているもの、それをちゃんと見つけてから答えを出したいの」
その表情は、不安も迷いもあったが、どこまでも真っ直ぐだった。
* * *
その夜、王都の夜風がバルコニーに吹き込む。
ノクティアは高台から、王都の街を静かに見下ろしていた。
(王都で得たものも、砦での思い出も、すべてが今の私を作ってくれた。
リュゼルも、カイラスも、どちらも私の人生に欠かせない大切な人――
でも、“私の幸せ”は、私が見つけて、私が決めなきゃ)
月明かりの下、ノクティアの頬を一筋の涙が伝う。
けれどその涙は、もう過去の“孤独”や“屈辱”ではなかった。
自分自身を受け入れるための、希望の涙だった。
* * *
翌朝。
ノクティアは、王都の友や仲間たち――エイミーやレオナート、新しくできた少女の友人――一人ひとりと静かに言葉を交わす。
「ノクティアさん、どんな選択でも、私たちずっと応援してます!」
「……ノクティアさんがいたから、僕たちも強くなれたんです」
皆がそれぞれの言葉で、彼女の背中を押してくれる。
ノクティアは微笑む。(私はひとりじゃない――)
* * *
決断の朝、王都に新しい陽が昇る。
ノクティアは胸に手を当てる。「必ず“自分の答え”を見つけて戻ってくる」
心の中でそう誓い、静かに新しい一歩を踏み出すのだった――。
「はぁ……」
ノクティアは、荒れた息を落ち着かせるように額の汗をぬぐった。
カイラスとリュゼル、二人が両脇に立ち、彼女の無事を確かめるように見つめている。
だが、勝利の余韻に浸る暇はなかった。
戦いの終盤、黒幕であるオルグレン侯爵は最期に“呪縛の魔法”を仕掛けていた。
ノクティアは敵の策略にはまり、魔導の封印とともに“王都から出なければ危険”という警告を受けてしまう。
「ノクティア、腕を見せてくれ」
カイラスが焦りを隠せず、彼女の手首をそっと掴む。
「……これは、魔力封じの紋……?しかも発動主はまだ生きている……」
リュゼルが険しい顔で紋章を調べる。
ノクティアは微かに唇を噛む。「私がここにいる限り、王都の人たちが巻き込まれる危険があるの。……このまま残れば、きっと大きな災いを招いてしまう」
沈黙の中、夜明けの鐘が遠くで鳴る。
ノクティアは、部屋の窓から淡い朝焼けを見つめた。
* * *
その後、魔導士会の会議室。
王都の幹部たちがノクティアの状況を把握し、慎重な対応を求める声があがる。
「“最強魔導士”のノクティア様が王都を離れるのは損失だ!」
「だが彼女がここに留まれば、敵の呪詛が広がる危険がある」
「一時的にでも、王都を離れるべきでは……」
会議室のざわめきの中、ノクティアは俯いているしかなかった。
(どうして……私がいることで誰かが苦しむのは、もう二度と嫌なのに)
* * *
そんな彼女のもとに、まずカイラスが静かに歩み寄る。
「ノクティア。お前が“どこにいても”、俺はお前を信じる。……だから、自分の心で選んでくれ。王都に残るのも、出ていくのも、お前の自由だ」
カイラスの瞳には、いさぎよい潔さと、切ない優しさが浮かんでいた。
「俺はどこまでだって、お前の味方だ」
ノクティアは思わず胸が熱くなった。
* * *
続いてリュゼルが、周囲の視線をものともせず、まっすぐノクティアの前に立った。
「ノクティア……」
彼の声は、普段の理知的な響きではなく、ほんの少し震えていた。
「俺は、お前に王都にいてほしい。この場所で、お前とこれからも並び立ちたい――それが本音だ」
リュゼルの真剣なまなざし、思いの強さがストレートに伝わってくる。
「……けれど、もしお前が出ていくというのなら、俺は……」
リュゼルの言葉は途中で途切れる。自分の気持ちと、“王都の第二皇子”としての立場が激しくぶつかり合っているのが、誰の目にも明らかだった。
* * *
ノクティアは二人の視線に挟まれ、深く息を吐いた。
(今までの私は、誰かの“期待”や“義務”に応えなきゃと、ずっと思っていた。……でも、本当に大切なのは、“自分の願い”じゃないの?)
“みんなのために”という気持ちも、“自分のために”という想いも、どちらも嘘じゃない。
それでも、最後に選ぶのは――“私の心”。
「私は……もう、誰かに決めてもらうんじゃなくて、自分で選びたい」
ノクティアは静かに言った。「私が本当に願っているもの、それをちゃんと見つけてから答えを出したいの」
その表情は、不安も迷いもあったが、どこまでも真っ直ぐだった。
* * *
その夜、王都の夜風がバルコニーに吹き込む。
ノクティアは高台から、王都の街を静かに見下ろしていた。
(王都で得たものも、砦での思い出も、すべてが今の私を作ってくれた。
リュゼルも、カイラスも、どちらも私の人生に欠かせない大切な人――
でも、“私の幸せ”は、私が見つけて、私が決めなきゃ)
月明かりの下、ノクティアの頬を一筋の涙が伝う。
けれどその涙は、もう過去の“孤独”や“屈辱”ではなかった。
自分自身を受け入れるための、希望の涙だった。
* * *
翌朝。
ノクティアは、王都の友や仲間たち――エイミーやレオナート、新しくできた少女の友人――一人ひとりと静かに言葉を交わす。
「ノクティアさん、どんな選択でも、私たちずっと応援してます!」
「……ノクティアさんがいたから、僕たちも強くなれたんです」
皆がそれぞれの言葉で、彼女の背中を押してくれる。
ノクティアは微笑む。(私はひとりじゃない――)
* * *
決断の朝、王都に新しい陽が昇る。
ノクティアは胸に手を当てる。「必ず“自分の答え”を見つけて戻ってくる」
心の中でそう誓い、静かに新しい一歩を踏み出すのだった――。
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