【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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7章

第98話「旅立ちの約束」

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 春の日差しがいよいよ強くなり、グランツ砦にも新しい季節の気配があふれていた。
 塔の上から見渡す村や畑、森の緑は、どこまでも伸びやかで――すべてがこれからの未来を静かに祝福しているようだった。

 その朝、カイラスのもとに一通の書状が届いた。

    * * *

 「団長、王都から急ぎの使いが来ています!」

 レオナートが手渡した封書には、王都騎士団からの正式な印が押されている。
 カイラスは静かに封を切り、中の文面をじっと見つめた。

 「……やはり来たか」

 ノクティアが隣に歩み寄る。「どうしたの?」
 カイラスは少しだけ困ったように微笑んだ。

 「王都の騎士団長が引退される。新たな任地を――“王都の守り”を任されるようだ」

 その言葉に、砦のみんながどよめく。

 「団長が王都へ……!」
 「出世じゃないですか!」
 「でも、また遠くに行っちゃうの?」

 カイラスはみんなの声に目を細める。

 「俺一人で行くつもりはない。……ノクティア、君はどうする?」

 ノクティアは少し驚いた顔でカイラスを見つめ、すぐに静かに頷いた。

 「どこへでも、あなたと一緒に行くよ。どんな未来でも――もう一人じゃないから」

 カイラスは照れくさそうに、でも力強くノクティアの肩を抱き寄せた。

 「ありがとう。君となら、どんな場所でも、また“新しい物語”を始められる気がする」

    * * *

 その日の午後、砦の食堂はまたしても賑やかな“送り出しパーティ”の準備で大忙しだった。

 エイミーは泣き笑いで「ノクティアさん、絶対に手紙くださいね!」
 レオナートは「王都の騎士団でも遠慮せず暴れてくださいね、団長!」
 子どもたちは「ノクティア様とカイラス様がいなくなったら寂しいよ!」と、すっかり“家族の旅立ち”を見送る雰囲気になっていた。

 「すぐに帰ってくるし、たまにはこっちにも遊びに帰ってくるから」

 ノクティアが笑うと、子どもたちは小さな花束や手作りのお守りを手渡してくれる。

 「また絶対に会いに来てね!」
 「王都でも、ふたりで元気でいてください!」

 エイミーもレオナートも、砦のみんなも、それぞれの想いを託してふたりを送り出した。

    * * *

 王都に旅立つ朝。
 砦の門の前には、いつもの顔ぶれがずらりと並んでいた。

 「エイミー、みんな、本当にありがとう。私たちは、どこに行っても、ここを“帰る場所”だと思ってる」
 ノクティアはひとりひとりに深く頭を下げた。

 カイラスも、少年たちの肩を叩きながら、
 「みんながここを守り続けてくれると信じてる。……必ず、また会おう」

 そのとき、馬車の横でリュゼルが待っていた。
 淡い春色のコートを羽織り、変わらず凛々しいまなざしだ。

 「カイラス、ノクティア。……王都で待っている」

 ノクティアは少し戸惑いながら、リュゼルに微笑み返す。

 「また王都で会いましょう。リュゼル――きっと、変わらない笑顔で」

 リュゼルは一瞬、何か言いかけて口をつぐむ。そしてそっとノクティアの手を取り、
 「お前がどんな道を選んでも、また会いに行くよ。……それは、ずっと変わらない」

 カイラスが少しだけ照れくさそうに咳払いをする。

 「リュゼル、お前も王都では“よきライバル”だ。……負けるつもりはないからな」

 リュゼルは苦笑しつつも、「期待しているよ」と静かに頷く。

    * * *

 馬車が動き出す。
 春風に吹かれながら、ノクティアとカイラスは手を取り合う。

 「新しい世界で、どんな困難があっても一緒に歩こう」
 「うん。私はあなたと一緒なら、何も怖くない」

 窓の外に広がる草原と青空。
 砦の仲間たちが小さくなるまで手を振り続けていた。

    * * *

 旅の途中、ノクティアはふと、カイラスの肩にもたれた。

 「少しだけ寂しいけど……きっとまた“新しい家族”や“友達”ができる。そう思うと楽しみなんだ」

 カイラスはそっと髪をなでる。

 「どこに行っても、君と一緒に未来を作っていける。それが、俺にとっての一番の幸せだから」

 馬車は春の陽差しを浴びて進む。
 ふたりの未来もまた、明るい光に包まれている。

    * * *

 王都の門が見えてきたとき、
 ノクティアは胸の奥で新しい誓いを立てていた。

 (どんな未来も、どんな場所でも――私はもう、ひとりじゃない)

 その手のぬくもりを確かめながら、
 ふたりは「新しい人生の物語」へと、しっかりと一歩を踏み出していく。

    * * *

 そのころ、王都ではリュゼルが静かに春の空を見上げていた。

 「さて――俺も、次の物語を始めるとしよう」

 遠い空の下で、それぞれの“新しい未来”が、静かに、けれど確かに動き始めていた――。
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