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7章
第99話「春風の祝祭」
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春の訪れは、王都にも砦にも例年になく鮮やかだった。
今年の春祭りは特別だった。
王都とグランツ砦を結ぶ新しい街道には、色とりどりの旗や花飾りが連なり、村人や子どもたちの笑い声が道いっぱいに響いていた。
王都の貴族たちも、砦の民も、旅人も、身分の垣根を超えて集い、町全体がまるで一つの大家族のような温もりに包まれていた。
* * *
王都広場の大舞台では、楽団が春の調べを奏でている。
ノクティアはカイラスと並び、控室の窓から賑やかな会場を見下ろしていた。
子どもたちが花かごを抱えて走り回り、砦の仲間も、王都の旧友も、みんなが今日という日を心から待ち望んでいるのが伝わる。
「これほど盛大な春祭りは初めてだな」
カイラスが笑う。
ノクティアは少し照れくさそうに彼を見上げ、頷いた。
「こんなにたくさんの人に祝福されるなんて……私、本当に幸せ者だね」
カイラスは力強くノクティアの手を取る。
「君がこれまでどれだけの人に勇気と希望を与えてきたか……その“答え”が、今日のこの光景だと思うよ」
* * *
やがて鐘の音が響き渡り、いよいよ“祝福の花道”が始まる。
ノクティアとカイラスは、白い花びらが敷き詰められた道の先に立った。
両側には砦の子どもたち、村の家族、王都の仲間たち――
すべての“出会い”が色とりどりの花束になって、ふたりを包み込む。
「ノクティア様、カイラス様、どうか前へ!」
レオナートが少し声を張る。
エイミーも「がんばって!」と涙まじりに声をかけた。
ノクティアは一歩、また一歩と、カイラスと手をつなぎながら歩き出す。
ふたりの足元に、子どもたちが次々と花びらをまき、
「おめでとう!」「しあわせになって!」と明るい歓声が響く。
* * *
道の途中、砦時代の仲間たちが次々とふたりを祝福した。
「ノクティア様、いつも私たちの希望でした。これからは、ご自分の幸せを大切にしてください」
と年配の婦人がそっと花冠を差し出す。
「団長! 王都でも砦でも、いつでも頼りにしてます!」
「ノクティア様、絶対幸せになってください!」
ノクティアは胸がいっぱいになり、言葉が詰まりそうになる。
ふと見ると、エイミーが列の前に進み出ていた。
「ノクティアさん……本当に、ここまで元気でいてくださって、ありがとうございます……」
エイミーの目には大粒の涙が浮かんでいた。
「私、ノクティアさんがいたから、ここまで来られました。――だから、これからは、ノクティアさんがいちばん幸せになってほしいです!」
ノクティアはエイミーを抱きしめ、しばらく二人で泣き笑いした。
「ありがとう、エイミー。あなたがいたから、私も何度も救われたのよ」
カイラスもそっと二人に微笑みを向ける。
* * *
その後ろでは、リュゼルがいつになく柔らかな表情でふたりを見守っていた。
「俺は、お前の幸せを――どこにいても願っている」
そのまなざしに、かつての恋心と、今の優しい祝福がこもっていた。
ノクティアは「ありがとう」と小さく囁き、
リュゼルも静かに微笑み返す。
「いつか、また別の春に――どんな形でも、お前の隣に並ぶ資格を手に入れてみせるよ」
ノクティアはただ「うん」と、優しく頷いた。
* * *
やがて、ふたりは舞台の中央へと進み、春の祝祭を見渡す。
カイラスがみんなに向かって一礼した。
「今日という日を、ふたりで迎えられたことを、心から感謝します。
みんなの幸せが、これからもずっと続きますように――」
ノクティアも深く頭を下げる。
「私は、ひとりじゃ何もできなかった。でも、みんなと出会えて、家族のように支えてもらえて……だから、これからも、ずっと“ここ”で生きていきます」
広場に大きな拍手が響き渡った。
* * *
春の風が、ふたりの髪をやさしく揺らす。
砦の仲間も、王都の友人も、村の子どもたちも、
みんなが手を取り合い、笑顔でふたりを祝福している。
春祭りはいつまでも続き、夜が訪れても、人々の歌と歓声は絶えなかった。
ノクティアとカイラスは、仲間たちの輪の中でそっと手を握り合う。
「これからも、ずっと一緒に――」
カイラスがそう言うと、ノクティアも幸せそうにうなずく。
その手の温もりは、これまでの“奇跡”のすべてと、
これからの“幸せ”のすべてを約束してくれているようだった。
* * *
星がきらめく夜空の下で、
「おめでとう!」「ありがとう!」の声が、いつまでも響いていた――。
今年の春祭りは特別だった。
王都とグランツ砦を結ぶ新しい街道には、色とりどりの旗や花飾りが連なり、村人や子どもたちの笑い声が道いっぱいに響いていた。
王都の貴族たちも、砦の民も、旅人も、身分の垣根を超えて集い、町全体がまるで一つの大家族のような温もりに包まれていた。
* * *
王都広場の大舞台では、楽団が春の調べを奏でている。
ノクティアはカイラスと並び、控室の窓から賑やかな会場を見下ろしていた。
子どもたちが花かごを抱えて走り回り、砦の仲間も、王都の旧友も、みんなが今日という日を心から待ち望んでいるのが伝わる。
「これほど盛大な春祭りは初めてだな」
カイラスが笑う。
ノクティアは少し照れくさそうに彼を見上げ、頷いた。
「こんなにたくさんの人に祝福されるなんて……私、本当に幸せ者だね」
カイラスは力強くノクティアの手を取る。
「君がこれまでどれだけの人に勇気と希望を与えてきたか……その“答え”が、今日のこの光景だと思うよ」
* * *
やがて鐘の音が響き渡り、いよいよ“祝福の花道”が始まる。
ノクティアとカイラスは、白い花びらが敷き詰められた道の先に立った。
両側には砦の子どもたち、村の家族、王都の仲間たち――
すべての“出会い”が色とりどりの花束になって、ふたりを包み込む。
「ノクティア様、カイラス様、どうか前へ!」
レオナートが少し声を張る。
エイミーも「がんばって!」と涙まじりに声をかけた。
ノクティアは一歩、また一歩と、カイラスと手をつなぎながら歩き出す。
ふたりの足元に、子どもたちが次々と花びらをまき、
「おめでとう!」「しあわせになって!」と明るい歓声が響く。
* * *
道の途中、砦時代の仲間たちが次々とふたりを祝福した。
「ノクティア様、いつも私たちの希望でした。これからは、ご自分の幸せを大切にしてください」
と年配の婦人がそっと花冠を差し出す。
「団長! 王都でも砦でも、いつでも頼りにしてます!」
「ノクティア様、絶対幸せになってください!」
ノクティアは胸がいっぱいになり、言葉が詰まりそうになる。
ふと見ると、エイミーが列の前に進み出ていた。
「ノクティアさん……本当に、ここまで元気でいてくださって、ありがとうございます……」
エイミーの目には大粒の涙が浮かんでいた。
「私、ノクティアさんがいたから、ここまで来られました。――だから、これからは、ノクティアさんがいちばん幸せになってほしいです!」
ノクティアはエイミーを抱きしめ、しばらく二人で泣き笑いした。
「ありがとう、エイミー。あなたがいたから、私も何度も救われたのよ」
カイラスもそっと二人に微笑みを向ける。
* * *
その後ろでは、リュゼルがいつになく柔らかな表情でふたりを見守っていた。
「俺は、お前の幸せを――どこにいても願っている」
そのまなざしに、かつての恋心と、今の優しい祝福がこもっていた。
ノクティアは「ありがとう」と小さく囁き、
リュゼルも静かに微笑み返す。
「いつか、また別の春に――どんな形でも、お前の隣に並ぶ資格を手に入れてみせるよ」
ノクティアはただ「うん」と、優しく頷いた。
* * *
やがて、ふたりは舞台の中央へと進み、春の祝祭を見渡す。
カイラスがみんなに向かって一礼した。
「今日という日を、ふたりで迎えられたことを、心から感謝します。
みんなの幸せが、これからもずっと続きますように――」
ノクティアも深く頭を下げる。
「私は、ひとりじゃ何もできなかった。でも、みんなと出会えて、家族のように支えてもらえて……だから、これからも、ずっと“ここ”で生きていきます」
広場に大きな拍手が響き渡った。
* * *
春の風が、ふたりの髪をやさしく揺らす。
砦の仲間も、王都の友人も、村の子どもたちも、
みんなが手を取り合い、笑顔でふたりを祝福している。
春祭りはいつまでも続き、夜が訪れても、人々の歌と歓声は絶えなかった。
ノクティアとカイラスは、仲間たちの輪の中でそっと手を握り合う。
「これからも、ずっと一緒に――」
カイラスがそう言うと、ノクティアも幸せそうにうなずく。
その手の温もりは、これまでの“奇跡”のすべてと、
これからの“幸せ”のすべてを約束してくれているようだった。
* * *
星がきらめく夜空の下で、
「おめでとう!」「ありがとう!」の声が、いつまでも響いていた――。
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