105 / 107
7章
第98話「旅立ちの約束」
しおりを挟む
春の日差しがいよいよ強くなり、グランツ砦にも新しい季節の気配があふれていた。
塔の上から見渡す村や畑、森の緑は、どこまでも伸びやかで――すべてがこれからの未来を静かに祝福しているようだった。
その朝、カイラスのもとに一通の書状が届いた。
* * *
「団長、王都から急ぎの使いが来ています!」
レオナートが手渡した封書には、王都騎士団からの正式な印が押されている。
カイラスは静かに封を切り、中の文面をじっと見つめた。
「……やはり来たか」
ノクティアが隣に歩み寄る。「どうしたの?」
カイラスは少しだけ困ったように微笑んだ。
「王都の騎士団長が引退される。新たな任地を――“王都の守り”を任されるようだ」
その言葉に、砦のみんながどよめく。
「団長が王都へ……!」
「出世じゃないですか!」
「でも、また遠くに行っちゃうの?」
カイラスはみんなの声に目を細める。
「俺一人で行くつもりはない。……ノクティア、君はどうする?」
ノクティアは少し驚いた顔でカイラスを見つめ、すぐに静かに頷いた。
「どこへでも、あなたと一緒に行くよ。どんな未来でも――もう一人じゃないから」
カイラスは照れくさそうに、でも力強くノクティアの肩を抱き寄せた。
「ありがとう。君となら、どんな場所でも、また“新しい物語”を始められる気がする」
* * *
その日の午後、砦の食堂はまたしても賑やかな“送り出しパーティ”の準備で大忙しだった。
エイミーは泣き笑いで「ノクティアさん、絶対に手紙くださいね!」
レオナートは「王都の騎士団でも遠慮せず暴れてくださいね、団長!」
子どもたちは「ノクティア様とカイラス様がいなくなったら寂しいよ!」と、すっかり“家族の旅立ち”を見送る雰囲気になっていた。
「すぐに帰ってくるし、たまにはこっちにも遊びに帰ってくるから」
ノクティアが笑うと、子どもたちは小さな花束や手作りのお守りを手渡してくれる。
「また絶対に会いに来てね!」
「王都でも、ふたりで元気でいてください!」
エイミーもレオナートも、砦のみんなも、それぞれの想いを託してふたりを送り出した。
* * *
王都に旅立つ朝。
砦の門の前には、いつもの顔ぶれがずらりと並んでいた。
「エイミー、みんな、本当にありがとう。私たちは、どこに行っても、ここを“帰る場所”だと思ってる」
ノクティアはひとりひとりに深く頭を下げた。
カイラスも、少年たちの肩を叩きながら、
「みんながここを守り続けてくれると信じてる。……必ず、また会おう」
そのとき、馬車の横でリュゼルが待っていた。
淡い春色のコートを羽織り、変わらず凛々しいまなざしだ。
「カイラス、ノクティア。……王都で待っている」
ノクティアは少し戸惑いながら、リュゼルに微笑み返す。
「また王都で会いましょう。リュゼル――きっと、変わらない笑顔で」
リュゼルは一瞬、何か言いかけて口をつぐむ。そしてそっとノクティアの手を取り、
「お前がどんな道を選んでも、また会いに行くよ。……それは、ずっと変わらない」
カイラスが少しだけ照れくさそうに咳払いをする。
「リュゼル、お前も王都では“よきライバル”だ。……負けるつもりはないからな」
リュゼルは苦笑しつつも、「期待しているよ」と静かに頷く。
* * *
馬車が動き出す。
春風に吹かれながら、ノクティアとカイラスは手を取り合う。
「新しい世界で、どんな困難があっても一緒に歩こう」
「うん。私はあなたと一緒なら、何も怖くない」
窓の外に広がる草原と青空。
砦の仲間たちが小さくなるまで手を振り続けていた。
* * *
旅の途中、ノクティアはふと、カイラスの肩にもたれた。
「少しだけ寂しいけど……きっとまた“新しい家族”や“友達”ができる。そう思うと楽しみなんだ」
カイラスはそっと髪をなでる。
「どこに行っても、君と一緒に未来を作っていける。それが、俺にとっての一番の幸せだから」
馬車は春の陽差しを浴びて進む。
ふたりの未来もまた、明るい光に包まれている。
* * *
王都の門が見えてきたとき、
ノクティアは胸の奥で新しい誓いを立てていた。
(どんな未来も、どんな場所でも――私はもう、ひとりじゃない)
その手のぬくもりを確かめながら、
ふたりは「新しい人生の物語」へと、しっかりと一歩を踏み出していく。
* * *
そのころ、王都ではリュゼルが静かに春の空を見上げていた。
「さて――俺も、次の物語を始めるとしよう」
遠い空の下で、それぞれの“新しい未来”が、静かに、けれど確かに動き始めていた――。
塔の上から見渡す村や畑、森の緑は、どこまでも伸びやかで――すべてがこれからの未来を静かに祝福しているようだった。
その朝、カイラスのもとに一通の書状が届いた。
* * *
「団長、王都から急ぎの使いが来ています!」
レオナートが手渡した封書には、王都騎士団からの正式な印が押されている。
カイラスは静かに封を切り、中の文面をじっと見つめた。
「……やはり来たか」
ノクティアが隣に歩み寄る。「どうしたの?」
カイラスは少しだけ困ったように微笑んだ。
「王都の騎士団長が引退される。新たな任地を――“王都の守り”を任されるようだ」
その言葉に、砦のみんながどよめく。
「団長が王都へ……!」
「出世じゃないですか!」
「でも、また遠くに行っちゃうの?」
カイラスはみんなの声に目を細める。
「俺一人で行くつもりはない。……ノクティア、君はどうする?」
ノクティアは少し驚いた顔でカイラスを見つめ、すぐに静かに頷いた。
「どこへでも、あなたと一緒に行くよ。どんな未来でも――もう一人じゃないから」
カイラスは照れくさそうに、でも力強くノクティアの肩を抱き寄せた。
「ありがとう。君となら、どんな場所でも、また“新しい物語”を始められる気がする」
* * *
その日の午後、砦の食堂はまたしても賑やかな“送り出しパーティ”の準備で大忙しだった。
エイミーは泣き笑いで「ノクティアさん、絶対に手紙くださいね!」
レオナートは「王都の騎士団でも遠慮せず暴れてくださいね、団長!」
子どもたちは「ノクティア様とカイラス様がいなくなったら寂しいよ!」と、すっかり“家族の旅立ち”を見送る雰囲気になっていた。
「すぐに帰ってくるし、たまにはこっちにも遊びに帰ってくるから」
ノクティアが笑うと、子どもたちは小さな花束や手作りのお守りを手渡してくれる。
「また絶対に会いに来てね!」
「王都でも、ふたりで元気でいてください!」
エイミーもレオナートも、砦のみんなも、それぞれの想いを託してふたりを送り出した。
* * *
王都に旅立つ朝。
砦の門の前には、いつもの顔ぶれがずらりと並んでいた。
「エイミー、みんな、本当にありがとう。私たちは、どこに行っても、ここを“帰る場所”だと思ってる」
ノクティアはひとりひとりに深く頭を下げた。
カイラスも、少年たちの肩を叩きながら、
「みんながここを守り続けてくれると信じてる。……必ず、また会おう」
そのとき、馬車の横でリュゼルが待っていた。
淡い春色のコートを羽織り、変わらず凛々しいまなざしだ。
「カイラス、ノクティア。……王都で待っている」
ノクティアは少し戸惑いながら、リュゼルに微笑み返す。
「また王都で会いましょう。リュゼル――きっと、変わらない笑顔で」
リュゼルは一瞬、何か言いかけて口をつぐむ。そしてそっとノクティアの手を取り、
「お前がどんな道を選んでも、また会いに行くよ。……それは、ずっと変わらない」
カイラスが少しだけ照れくさそうに咳払いをする。
「リュゼル、お前も王都では“よきライバル”だ。……負けるつもりはないからな」
リュゼルは苦笑しつつも、「期待しているよ」と静かに頷く。
* * *
馬車が動き出す。
春風に吹かれながら、ノクティアとカイラスは手を取り合う。
「新しい世界で、どんな困難があっても一緒に歩こう」
「うん。私はあなたと一緒なら、何も怖くない」
窓の外に広がる草原と青空。
砦の仲間たちが小さくなるまで手を振り続けていた。
* * *
旅の途中、ノクティアはふと、カイラスの肩にもたれた。
「少しだけ寂しいけど……きっとまた“新しい家族”や“友達”ができる。そう思うと楽しみなんだ」
カイラスはそっと髪をなでる。
「どこに行っても、君と一緒に未来を作っていける。それが、俺にとっての一番の幸せだから」
馬車は春の陽差しを浴びて進む。
ふたりの未来もまた、明るい光に包まれている。
* * *
王都の門が見えてきたとき、
ノクティアは胸の奥で新しい誓いを立てていた。
(どんな未来も、どんな場所でも――私はもう、ひとりじゃない)
その手のぬくもりを確かめながら、
ふたりは「新しい人生の物語」へと、しっかりと一歩を踏み出していく。
* * *
そのころ、王都ではリュゼルが静かに春の空を見上げていた。
「さて――俺も、次の物語を始めるとしよう」
遠い空の下で、それぞれの“新しい未来”が、静かに、けれど確かに動き始めていた――。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」
婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。
罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。
それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。
しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。
「どんな場所でも、私は生きていける」
打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。
これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。
国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる