【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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7章

第100話「君と歩く未来へ」

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 夜明け前の静けさは、不思議と心を落ち着かせてくれる。
 グランツ砦の丘の上、広大な花畑には夜露がきらめき、東の空に淡い光が差し始めていた。

 ノクティアは肩にショールを羽織り、小道をゆっくり歩く。
 ほんのり冷たい朝の空気。澄んだ香り。足元に咲く色とりどりの花々。
 「春の奇跡」と呼ばれたあの“奇跡の花”も、今年は畑の真ん中でひときわ鮮やかに揺れている。

 その花のそばで、カイラスが待っていた。

    * * *

 「早起きだな、ノクティア」

 優しい声。
 カイラスは、いつものように屈託のない笑顔を見せて手を差し伸べる。

 ノクティアは笑い返し、その手を握る。

 「眠れなかったの。今日が“特別な日”だって思ったら、どうしても……」

 ふたりは並んで花畑の奥へと歩いていく。
 朝露のなか、カイラスがそっと立ち止まる。

 「ノクティア――これからも、俺の隣で生きてくれるか?」

 彼の言葉は、真っ直ぐで飾り気がなくて、
 これまで一緒に乗り越えてきたすべての困難や、たくさんの涙や笑顔を思い出させてくれる。

 ノクティアは少しだけ涙ぐみながら頷いた。

 「もちろんよ。私は、あなたと――この場所と、みんなと一緒に歩いていきたい」

 「……ありがとう」

 カイラスがノクティアをそっと抱きしめる。
 朝日がふたりを淡く照らし、世界が少しずつ目覚めていく。

    * * *

 花畑の小道を戻ると、砦の仲間たちが集まっていた。

 エイミーがいの一番に駆け寄る。

 「ノクティアさん、カイラスさん……本当に、本当におめでとうございます!」

 レオナートは「団長、これからも僕たちの自慢でいてください」と真顔で言い、思わずカイラスが苦笑する。

 子どもたちが「ノクティア様、幸せになって!」と元気に花を差し出してくれる。

 村の人々も、王都から駆けつけた友人も、それぞれが二人に温かな言葉とハグを贈った。

 ノクティアは一人ひとりと抱き合い、
 「ありがとう」「これからもよろしくね」と何度も何度も感謝を伝える。

 エイミーは目に涙を浮かべ、
 「ノクティアさんが“幸せ”でいられるなら、私も毎日笑っていられます」
 と、声を震わせながら微笑んだ。

    * * *

 王都から来たリュゼルも、いつになく柔らかい表情で近づく。

 「ノクティア……幸せにな。お前と出会えて、俺は本当に良かった」

 「ありがとう、リュゼル。あなたのおかげで、私はたくさんの勇気をもらえたわ」

 リュゼルはノクティアの手をそっと握り、
 「これからは、自分の人生をまっすぐ生きてみせる」と、静かに約束した。

 カイラスもそのやり取りを温かく見守り、
 「これからも、仲間でいてくれ」と力強くリュゼルに手を差し出す。

 ふたりはがっしりと握手を交わし、新しい友情の絆が生まれた瞬間だった。

    * * *

 宴は日が昇るまで続いた。
 広場では歌や踊りが響き、みんなの笑顔が朝日よりも眩しく輝く。

 ふたりはたびたび「おめでとう!」と声をかけられ、
 子どもたちが手作りの花冠をかぶせてくれる。
 エイミーやレオナート、砦の仲間、王都の友人たち――

 「家族みたいだね」とノクティアがつぶやくと、
 カイラスは「そうさ。これからは、みんなが俺たちの家族だ」とそっと手を握った。

    * * *

 宴の終わり、ノクティアは花畑の丘に立ち、朝焼けの空を見上げる。

 これまでのすべての日々――
 孤独だった少女時代、屈辱の王都、辺境の砦、そして新しい仲間たちとの出会い。
 苦しかった別れも、喜びも、全てが今の自分をつくっている。

 「私は、もう“ひとりぼっち”じゃない」

 心からそう思えた。

 カイラスが隣に立ち、二人で朝日を浴びながら微笑み合う。

 「ノクティア、これからも一緒に“未来”を歩いていこう」

 「はい、カイラス――永遠に」

    * * *

 やがて、広場でみんなが手をつなぎ、
 ノクティアとカイラスを囲んで輪になった。

 「私たちの物語は、まだまだ続いていくんだよ」

 ノクティアの言葉に、みんながうなずき、笑顔がはじける。

 春の風が花畑をわたっていく。
 色とりどりの花が咲き誇り、
 笑顔と涙と歌声に包まれて――

 新しい物語の朝が、静かに、けれど力強く始まっていた。

 完
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