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第3章 目的地は、敵地?!
規格外という名の恐怖?!***高尾視点***
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集まって来ている。
それも、予想を遥かに上回る数の仲間たちが。
お父さん(矢作様)は、最初からヘンテコな人だった。
我々が囚われた闇。そしてそれは永遠に解けぬ呪いのようなモノだったはずだ。
あの日までは。
『おーい、高尾。これも頼むよ。』
笑いながら近づいてきたお父さんの手には、相変わらずお菓子の山があった。
『子供はオヤツがあって大きくなるものだ!!』
何故か不思議な温かい言葉と共に差し出されるそれらは、いつも呪いの欠片を打ち砕く糧となる。
ただ、お父さんはその事を知らない。何故か理解して貰えないのだ。
『今日はな、俺のお得意料理ホットケーキだ!!』
言われた途端、頬が赤くなるのは許して欲しい。数百年を生きていた精霊の長である吾だが、この【ホットケーキ】の魅力にはお手上げだ。
以前、食べた【ドレン】も生涯忘れ難い美味しさだが、この【ホットケーキ】は更に上をゆく。
【甘い】のだ。
吾は精霊だ。
味覚など、人族とは異なる。それこそ何も口にしなくとも植物に宿る【精気】を少し分けて貰うだけで十分なのだ。
なのに何故。いや、今はそれ所ではない。
旅立ちの日が間近に迫っているのだから。
『なぁ、高尾。もしだ。もし俺がこの世界から…。いや、何でもない。
俺は家族を持ったんだ。そう、初めて。
お父さんなんだからな。』
『えっ?何…』
声が小さくて聞こえないな。
お父さんが顔を叩いて『闘魂注入!!!』と叩いている。アレをは初めて見た時は、びっくりしたが
気合い入れだと言われてただ頷いた。
やっぱり謎は深まる…な。
『先輩、もうすぐ出発ですよ。』
草薙が来た。城やらに行ってから少しマトモになった。
存在感が、あるのだ。
不安定な状態が解消した訳では無いが何かが変わった。
『そうか、じゃあ最後の仕上げだな。』
嫌な予感がする。あの笑顔のお父さんは、放置しちゃダメだ。
人間たちは見えないモノを見ようとはしない。自分達が、全て知ってるつもりになる。
精霊は本来見えないモノだ。
我らは知っている。
この世界は、揺らぎ続けていると。そしてそれは間もなく…。
***ジル視点***
ようやくだ。
怒涛の日々が終わりを告げる。
なぜなんだ。
乗り物にあそこまで拘る矢作と草薙にドン引きする事数回。
『先輩、キャンピングカーですか?!』
ようやく言葉を話せるようになったはずの草薙の難解な言葉。
その意味を思い知らされるのはその後だった。
『いや、ダメだ。ここも直そう。』
耳に幻聴が、聴こえる。
繰り返されるこの決めゼリフ。
それほど、改造は続いた。
今では、馬車という名の魔物になったと自信を持って言える。お戻りになった嚮導様すら空いた口が閉まらない程だったのだから。。
ショックアブソーバー
サスペンション
ブレーキ
そして。。【タイヤ】
呪文?!
怖いと思ってしまう程、ブツブツ呟く矢作さんの鬼気迫る様子は凄かった。草薙さんすら近寄れない程だったのだ。
そして完成した魔物の名前は
【クレソン】
何故か熱く語る名前に、草薙さんが何度も頷いていたが、結局覚えにくい名前は嚮導様に却下された。
【自由】
『好き放題やったのだ。それこそ【自由】にな。この世界の常識とか気にする気が一切ないのだからいっそ潔いな。
はぁ、まあこれで聖国へ行くのに不安は減ったがな。』
確かにこの【自由】ならば、どんな長旅にも耐えうると断言出来る。
しかし、その拘りの被害者こそ、コルバとグーナンだな。
あのクマ。
完成してから3日間寝続けたってのに、クマも窶れも凄い。ただ、本人たちの目の輝きだけは凄まじい。
それほどの自信作なのだな。
『矢作さん、完成披露ですか?』
びっくり顔の矢作さん。何故?
『しませんよ。即出発です。』
やっぱり、矢作さんは規格外すぎる。
ヤト様は?もちろん王も重臣たちもそうだが、それ以上に街にいる多くの友人達は?
『ジルさん、俺もこの街に住む大勢の人達に別れをするべきだと分かっていますが、
別れとか、見送りとか苦手なんで。。』
予想外に普通の回答に裏を探ってしまい気持ちに駆られていたら、隣にいる草薙さんがあっさりとその裏側を話してくれた。
『この馬車は、本来ならこの世界に存在するべきじゃないかもしれない。先輩は異世界の知識を使うことに抵抗があるんですよ。だから目立たず旅立つつもりです。
それに本当は師匠にこっそり挨拶に』『草薙!!無駄口叩いてないで出発の準備をしろ!!』
図星らしい。
途中で割り込んできた矢作さんに草薙さんが『はい、はい。』といい加減な返事で馬車へと乗り込んでいく。
異世界の知識。その危険性は嚮導様から聞いたことがある。
使い方次第で世界を歪める1つになるかもしれない事、それでも世界を救う1つになる可能性も捨てられないものだと。
『ジルさん。俺も草薙も覚悟を決めたんですよ。でも、この世界を巻き込む覚悟まではまだ出来てない。
今はただ全ては聖国に答えがある、そう信じて進むだけです。
さあ、行きましょう。』
覚悟を決めた。
草薙さんを元の世界に帰すことを必死にしてきた矢作さんにとって、決断は重いものだ。
どう決意したのか…その真意を聞くには、まだ時期尚早だろう。
【自由】
改めて、名前の意味が胸に刺さる気がして眺めると違ってみえた。
乗り込みながら、心の中に誓う。
2人の決意を、どこまでも尊重しようと。
この世界に生きる人間の1人として、感謝と共に。
それも、予想を遥かに上回る数の仲間たちが。
お父さん(矢作様)は、最初からヘンテコな人だった。
我々が囚われた闇。そしてそれは永遠に解けぬ呪いのようなモノだったはずだ。
あの日までは。
『おーい、高尾。これも頼むよ。』
笑いながら近づいてきたお父さんの手には、相変わらずお菓子の山があった。
『子供はオヤツがあって大きくなるものだ!!』
何故か不思議な温かい言葉と共に差し出されるそれらは、いつも呪いの欠片を打ち砕く糧となる。
ただ、お父さんはその事を知らない。何故か理解して貰えないのだ。
『今日はな、俺のお得意料理ホットケーキだ!!』
言われた途端、頬が赤くなるのは許して欲しい。数百年を生きていた精霊の長である吾だが、この【ホットケーキ】の魅力にはお手上げだ。
以前、食べた【ドレン】も生涯忘れ難い美味しさだが、この【ホットケーキ】は更に上をゆく。
【甘い】のだ。
吾は精霊だ。
味覚など、人族とは異なる。それこそ何も口にしなくとも植物に宿る【精気】を少し分けて貰うだけで十分なのだ。
なのに何故。いや、今はそれ所ではない。
旅立ちの日が間近に迫っているのだから。
『なぁ、高尾。もしだ。もし俺がこの世界から…。いや、何でもない。
俺は家族を持ったんだ。そう、初めて。
お父さんなんだからな。』
『えっ?何…』
声が小さくて聞こえないな。
お父さんが顔を叩いて『闘魂注入!!!』と叩いている。アレをは初めて見た時は、びっくりしたが
気合い入れだと言われてただ頷いた。
やっぱり謎は深まる…な。
『先輩、もうすぐ出発ですよ。』
草薙が来た。城やらに行ってから少しマトモになった。
存在感が、あるのだ。
不安定な状態が解消した訳では無いが何かが変わった。
『そうか、じゃあ最後の仕上げだな。』
嫌な予感がする。あの笑顔のお父さんは、放置しちゃダメだ。
人間たちは見えないモノを見ようとはしない。自分達が、全て知ってるつもりになる。
精霊は本来見えないモノだ。
我らは知っている。
この世界は、揺らぎ続けていると。そしてそれは間もなく…。
***ジル視点***
ようやくだ。
怒涛の日々が終わりを告げる。
なぜなんだ。
乗り物にあそこまで拘る矢作と草薙にドン引きする事数回。
『先輩、キャンピングカーですか?!』
ようやく言葉を話せるようになったはずの草薙の難解な言葉。
その意味を思い知らされるのはその後だった。
『いや、ダメだ。ここも直そう。』
耳に幻聴が、聴こえる。
繰り返されるこの決めゼリフ。
それほど、改造は続いた。
今では、馬車という名の魔物になったと自信を持って言える。お戻りになった嚮導様すら空いた口が閉まらない程だったのだから。。
ショックアブソーバー
サスペンション
ブレーキ
そして。。【タイヤ】
呪文?!
怖いと思ってしまう程、ブツブツ呟く矢作さんの鬼気迫る様子は凄かった。草薙さんすら近寄れない程だったのだ。
そして完成した魔物の名前は
【クレソン】
何故か熱く語る名前に、草薙さんが何度も頷いていたが、結局覚えにくい名前は嚮導様に却下された。
【自由】
『好き放題やったのだ。それこそ【自由】にな。この世界の常識とか気にする気が一切ないのだからいっそ潔いな。
はぁ、まあこれで聖国へ行くのに不安は減ったがな。』
確かにこの【自由】ならば、どんな長旅にも耐えうると断言出来る。
しかし、その拘りの被害者こそ、コルバとグーナンだな。
あのクマ。
完成してから3日間寝続けたってのに、クマも窶れも凄い。ただ、本人たちの目の輝きだけは凄まじい。
それほどの自信作なのだな。
『矢作さん、完成披露ですか?』
びっくり顔の矢作さん。何故?
『しませんよ。即出発です。』
やっぱり、矢作さんは規格外すぎる。
ヤト様は?もちろん王も重臣たちもそうだが、それ以上に街にいる多くの友人達は?
『ジルさん、俺もこの街に住む大勢の人達に別れをするべきだと分かっていますが、
別れとか、見送りとか苦手なんで。。』
予想外に普通の回答に裏を探ってしまい気持ちに駆られていたら、隣にいる草薙さんがあっさりとその裏側を話してくれた。
『この馬車は、本来ならこの世界に存在するべきじゃないかもしれない。先輩は異世界の知識を使うことに抵抗があるんですよ。だから目立たず旅立つつもりです。
それに本当は師匠にこっそり挨拶に』『草薙!!無駄口叩いてないで出発の準備をしろ!!』
図星らしい。
途中で割り込んできた矢作さんに草薙さんが『はい、はい。』といい加減な返事で馬車へと乗り込んでいく。
異世界の知識。その危険性は嚮導様から聞いたことがある。
使い方次第で世界を歪める1つになるかもしれない事、それでも世界を救う1つになる可能性も捨てられないものだと。
『ジルさん。俺も草薙も覚悟を決めたんですよ。でも、この世界を巻き込む覚悟まではまだ出来てない。
今はただ全ては聖国に答えがある、そう信じて進むだけです。
さあ、行きましょう。』
覚悟を決めた。
草薙さんを元の世界に帰すことを必死にしてきた矢作さんにとって、決断は重いものだ。
どう決意したのか…その真意を聞くには、まだ時期尚早だろう。
【自由】
改めて、名前の意味が胸に刺さる気がして眺めると違ってみえた。
乗り込みながら、心の中に誓う。
2人の決意を、どこまでも尊重しようと。
この世界に生きる人間の1人として、感謝と共に。
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